くすりの窓 2004.9

今年の夏の異常な暑さに体調を崩してしまった人も多いのではないでしょうか?過ごしやすくなってきたところで、早めに体調を整えておきましょう。夏にゴロゴロしていた人も、スポーツなどで汗を流して運動不足を解消しましょうね。
今回のテーマは頭痛です。

頭痛の種類

日本人の4人に1人が「頭痛もち」といわれています。単に「頭痛」といっても、二日酔いが原因のものから、命の危険のあるものまでさまざまです。

頭痛の種類は、下記のごとく大きく3つに分類することができます。

普段起こる頭痛

風邪、二日酔いなどが原因の頭痛です。これは本人も頭痛の原因がわかりやすく、原因が無くなれば症状が治まる頭痛です。「病気」というほどではない頭痛です。

脳の病気による頭痛

脳腫瘍やくも膜下出血など、脳の病気が原因の頭痛です。このような「脳の疾患による頭痛」はMRI(磁気共鳴画像)やCTスキャン(コンピューター断層撮影法)といった検査で診断ができます。

慢性頭痛

繰り返し起こる強い頭痛に悩まされるが、はっきりした原因、異常が見つからない頭痛です。いわゆる「頭痛持ち」を自認している方々で、非常に多くの人が慢性頭痛に悩まされています。これまでは、慢性頭痛は痛みの原因などの究明が進んでおらず、適切な治療法も行われてきませんでした。慢性頭痛は、「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の3つに分けられます。これら3タイプの頭痛は、それぞれ立派に「1つの疾患(病気)」としての症状を持ち、普段の生活に支障をきたすことがあります。

それぞれの頭痛に関してとりあげてみましょう。

片頭痛

片頭痛の特徴をひとことでいうと月数回、発作的に起こる、ズキンズキンと脈をうつような頭痛で、しばしば吐き気を伴います。女性に多い頭痛です(男性の4倍)。頻度は月に1〜2回、繰り返し起こります。片頭痛の「片」はその名のとおり頭の片方が痛むことからつけられましたが、約4割の人は頭の両側が痛むようです。

片頭痛には前ぶれがあります。前兆のうち最も多いのが、「閃輝暗点(せんきあんてん)」といわれるものです。たとえば新聞を見ていますと、視界にチカチカした光(「閃輝(せんき)」といいます)が現れ、これが拡大していくにつれ、元のところは見えにくくなります(「暗点(あんてん)」といいます)。前兆のときには頭痛がありませんが、前兆が終わると激しい頭痛に襲われます。

緊張性頭痛

片頭痛とならんで日常頭痛の双璧です。片頭痛がズキンズキンと脈動感があるのに対して、重苦しく締め付けられる感じがする頭痛です。よくいわれる「頭重」は緊張型頭痛のことを指しています。

頭痛の頻度は月に数回程度から毎日とさまざまです。いつとはなしに始まり、だらだらと持続します(片頭痛は発作的です)。 頭痛の部位は後頭部から首筋にかけてで、頭全体、はちまき様のこともあります。肩コリや顎関節症を伴うことが多いです。
ストレスがあると、頭のまわりの筋肉が緊張します。筋が緊張しすぎると、筋肉の血の流れが悪くなり、老廃物がたまります。老廃物がたまると、コリの状態となり、痛みがおこるようになります。これが緊張型頭痛なのです。頭が痛いとますます筋肉の血の流れが悪くなります。頭痛があること自体がさらにストレスの原因となります。こうなるといつまでも頭痛が続く「悪循環」ができ上がります。この緊張型頭痛の悪循環ができると、頭痛はだらだらと、いつまでも続きます。

群発頭痛

群発頭痛は、頭の片方が痛むところが片頭痛と似ていますが、「似て非なる」頭痛です。片頭痛は平均月2回の頭痛です。群発頭痛は、頭痛がある期間、毎日のように、片目のあたりに起こるのです。症状は片方の眼、眼の上、こめかみのあたりの「えぐられるような」激しい頭痛です。頭をかかえてころげまわるほどの強さです。片頭痛と違って吐き気や嘔吐はあまりありません。

頻度は片頭痛の1/100以下です。片頭痛と同じように、「血管が拡張して痛む頭痛」と考えられています。

脳の病気による頭痛

頭痛が現れる脳の病気には、くも膜下出血や脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、髄膜炎などがあります。頭痛が長く続くと、脳の病気ではないかと心配になりますが、それは逆です。脳の病気の頭痛は、1ヵ月以内にどんどんひどくなってきます。何年も続く頭痛で、脳の病気というのはまれです。

以下に危険な頭痛の特徴についてあげておきます。

いままでに経験したことがない頭痛
突然におこる頭痛
強烈な頭痛
直近1ヵ月以内の間にだんだんにひどくなる頭痛
りきんだり、頭をふるとひどくなる頭痛
高熱を伴う頭痛
神経や精神の異常を伴う頭痛
視力が弱ったり、見えない部位がある
意識がおかされたり、言うことが変
人柄がかわってしまった(例: だらしなくなった、物事に無関心になったなど)
ボケを伴う
手足が不自由になった、麻痺やしびれを伴う
言葉がしゃべりにくい
めまい、ふらつきがある
けいれんを伴う


混合型頭痛

自分の頭痛は片頭痛のようでもあるし、緊張型頭痛のようでもあるし、いったいどちらなんだろうという方もいるかもしれません。実は両者が合併する頭痛に悩む方は多いのです。ふだん頭が重くて、時々ズキズキするといったタイプの頭痛です。

このタイプの頭痛に悩む患者は、苦しい片頭痛から免れるためについつい薬を飲みすぎてしまい、頭痛をこじらせてしまいます。頭痛がするからといって毎日のように鎮痛薬を飲むと、痛みに対して体が敏感になり、かえって頭痛を慢性化してしまうことがあります。

頭痛の治療薬

頭痛の治療は人それぞれに違います。日ごろからストレスや睡眠不足があったり、食生活や生活リズムが乱れているといった問題があれば、頭痛を誘発させる可能性がありますので、まずそこから見直しが必要です。軽い頭痛であれば様子を見たり、市販薬で対応してもよい場合がありますが、ひどい頭痛や慢性化している場合は一度医師にかかり、適切な治療を行いましょう。

当院で実際に使われている薬について説明します。

●頭痛薬として適応のあるもの

アスピリン…少量で抗血小板作用(血をさらさらにする)を有する。
ピリナジン…中枢作用性の解熱鎮痛薬。感冒に伴う疼痛や頭痛、歯痛、筋肉痛、背痛、関節痛、月経痛に有効。市販薬との相互作用が少なく、小児、妊婦への使用が可能。
デパス…抗不安薬、睡眠薬としても使われる。
グランダキシン…自律神経に作用する。
ポンタール…抗炎症よりも鎮痛作用に優れる。
PL顆粒…風邪による頭痛へ効果あり。複数の薬が配合されている。(大人用を小児へ使わないこと)

●頭痛薬の適応はないが、痛み止めとして使用されるもの

ボルタレン・ナボールSR…抗炎症、鎮痛・解熱作用とも強い。
ロキソニン…炎症・鎮痛・解熱作用を平均して有する。
ソランタール…炎症・鎮痛作用は緩和であり、副作用も少ない。

※使用上の注意
効果および副作用の発現や度合いは人によって異なります。
この種類の薬剤を2剤併用することは原則として行いません。
長期連用により消化性潰瘍を誘発することがあります。

●片頭痛薬

イミグラン…片頭痛・群発頭痛専用の薬で、頭痛発作時に服用します。発作時は脳の血管の一部が拡張し、それにより頭痛がおきると考えられています。この薬は血管を収縮させ、頭痛を和らげる働きを持っています。

※使用上の注意
追加で服用するときは2時間以上あけるようにしましょう。また、予防的に使用することはできません。高血圧のコントロールがきちんとできていなかったり、心疾患をお持ちの方は、病気が進行することがあります。医師、薬剤師にご相談ください。

以上、さまざまな頭痛について説明してきましたが、頭痛はこれだけではありません。事故によるけが、血圧の変動、感染症、気圧の変化、目の疲れ、顎関節症、うつ病などの精神疾患など、頭痛の原因となるものはたくさんあります。痛むからといってむやみに鎮痛剤を飲むよりも、原因をつきとめ、対処していくことが大切です。自分の頭痛がどういうものか分からないといった不安をお持ちの方は、一度医師へ相談することをおすすめします。

(当院では毎週火曜日午後に脳神経外科の外来を行っております。詳しくは外来受付にお問い合わせください)

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