Introduction of Department
ほとんどの患者さんにとっては麻酔科というのは縁遠い科だと思います。手術を受けることになって初めてその存在に気付かれる方もいらっしゃいます。手術は、痛みや出血など様々なストレスを伴い、患者さんの全身状態に悪影響を及ぼします。麻酔は、そのストレスから患者さんを守り、安全に手術が行えるようにする医療行為です。
当院では、麻酔管理を専門とする麻酔科医が患者さんの麻酔を担当しています。麻酔科医は、手術中に常に患者さんの側に付き添い、痛みを取るだけではなく患者さんの命を守るために絶えず全身状態の観察を行い最善の処置を施しています。
1966年(昭和41年)に初代の麻酔科医師が着任し、2023年(令和5年)で麻酔科開設57年になります。診療科の増設による手術症例数の増加と伴に1975年(昭和50年)に2名、1986年(昭和61年)に3名、1999年(平成11年)に4名、2021年(令和3年)に5名に増員されて現在に至っています。当院では、非常勤医師による麻酔は行っておらず、全症例常勤麻酔科医が担当しています。
日本麻酔科学会認定病院(認定番号 354)
日本心臓血管麻酔学会認定病院(認定番号 19)
古来中国の兵法書「孫子」の一節に「彼を知り己を知れば百戦殆うからず。」という名言があります。敵についても味方についても情勢をしっかり把握していれば、幾度戦っても敗れることはないという意味です。医療の場合、この敵とは患者さんが持っている色々な病気や背景に置き換えて考えることができます。麻酔を行う前に、患者さんの持病やアレルギー歴、これまでの治療経過、受けた事のある手術の詳しい経過、ご家族の手術の経過等を知ることは、安全に麻酔を行う上で非常に大切なことです。当院では麻酔科が担当する予定手術の患者さんに対して手術の前日までに術前診察を必ず行っております。麻酔科医は、患者さんのカルテや血液検査、レントゲン検査、心電図、呼吸機能検査、必要に応じて超音波検査等を事前に閲覧し、麻酔を行うにあたっての問題点を整理し患者さんに適した麻酔方法を提案ができるように準備して術前診察に望みます。麻酔を行うという観点から主治医とは異なる目線で患者さんの全身評価を行っています。最終的に、患者さんの診察を行って最良の麻酔方法をご提案し、納得いく形で手術に望んでもらうようにしています。術前診察時には、どのようなことでも遠慮せずご質問下さい。丁寧に回答させていただきます。この様なきめ細かい対応は麻酔科医が常勤している病院だからこそできることです。
麻酔は、直接患者さんの病気を治す医療ではありません。しかし、患者さんが手術を受けられるうえで無くてはならない医療です。だれもが、手術をするのなら安全に行って欲しいと願っていることでしょう。医療の戒めのひとつとして「Primum non nocere」という言葉があります。これはラテン語ですが、「まず第一に、害を与えないこと」と訳されています。近年は、能力以上の手術を行って患者さんが不幸な転機をとる悲しい医療事故が散見されています。どんなにすばらしい医療であっても患者さんに害が及ぶような医療は慎むべきだと考えています。我々麻酔科医は、常に手術を受けられる患者さんの安全を第一に考えて医療に当たるように心がけております。