土谷総合病院

文字の大きさ
  • 大きくする
  • 元に戻す

診療科・各部門

Introduction of Department

病気についての説明

甲状腺腫瘍

甲状腺にはしばしば、"しこり"(結節)ができます。特に女性に多く、ほとんどは良性です。しかし、時として悪性(癌)のことがあります。皆様が一番心配され、また一番誤解されているのも甲状腺癌についてです。これらについて、簡単に説明します。

1.甲状腺癌

甲状腺癌の特徴のひとつは若年者にも発生する点です。通常の癌の発生は40代をすぎてからですが、甲状腺においては20代での発症も珍しくありません。小学生の癌も稀にはみられます。幸いなことに、ほとんどの甲状腺癌は高分化型乳頭癌といわれる発育速度のゆっくりしたものです。早期に発見して適切な治療が行われば問題ありません。たとえ、リンパ節転移を起こしている場合でも他の部位にできる癌と異なり、10年生存率は90%以上あり経過は極めて良好です。

しかし、経過が良いからといって甲状腺の"しこり"を放置して良いわけではありません。"しこり"があれば、直ちに専門病院を受診して精密検査を受けてください。甲状腺乳頭癌も進行すれば、気管、食道、発声をコントロールする重要な神経(反回神経)に浸潤し、呼吸困難、食べ物の通過障害、声のしわがれなどを起こします。通常の大きさの甲状腺癌であれば簡単な超音波検査と細胞検査でほとんどの場合は診断できます。検査後に良性と診断されても、一度の検査だけでは不十分のこともあり、定期的フォローアップは重要です。甲状腺癌の手術を受けられた方は定期的検査を最低でも10年間は継続する必要があります。10年以後も再発する可能性もあり、術後長期的フォローアップを続けてください。

『備えあれば憂いなし』です。

2.甲状腺良性腫瘍

甲状腺の"しこり"のほとんどは良性です。健常な人でも甲状腺に"水"が溜まったようになる嚢胞(のうほう)は良くみられます。頸部超音波検査を健康な人に行うと10人中、2-3人に小さな嚢胞が見られます。

似たような病態で腺腫様甲状腺腫があります。真の腫瘍ではなく甲状腺の細胞がさまざまな変性を起こしたようになり、"しこり"や嚢胞のような変化を起こします。この状態から癌に変化することはありませんが、たまに腺腫様甲状腺腫のしこりの中に癌が混じることがあります。腺腫様甲状腺腫は原則として経過観察または甲状腺刺激ホルモン抑制療法を行うことにしていますが、腫瘍が大きくなる場合は手術も考慮する必要があります。

最も区別がつきにくいのが濾胞腺腫と濾胞癌です。濾胞腺腫は良性腫瘍ですが、悪性の濾胞癌と良く似ておりCT(コンピューター断層撮影)、超音波検査、細胞検査でも区別がつきにくく、手術で摘出した標本ですら、なかなか判断しにくいことがあります。また、バセドー病や橋本病(慢性甲状腺炎)などの自己免疫疾患でも甲状腺が腫大し、"しこり"の様に触れることがあります。

このような良性の腫瘤に対して、20年以上前では悪性の可能性があるとの理由で多くの手術が行われていました。しかし、細胞診断を主とする検査技術の進歩により最近では手術の適応を厳密に行い、無用の手術を極力避ける様に心がけています。われわれの施設では甲状腺手術の75%は悪性腫瘍であり、良性腫瘍は25%でしかありません。

良性腫瘍でも手術をお勧めするのは以下の場合です。

1.腫瘍が大きい場合

  1. 3cmを超える場合はそろそろ手術を考える時期です。
    このような場合、甲状腺ホルモン剤の内服で甲状腺を刺激するホルモン(甲状腺刺激ホルモン:TSH)を抑える治療(TSH抑制療法)も選択肢の一つですが、全例に効くわけではありません。
    TSH抑制療法を行っても増大する腫瘍は手術を考慮する必要があります
  2. 5cmを超えれば、手術をお勧めします
  3. 縦隔(胸部)への伸展を認める場合は手術適応です

2.悪性が疑われる場合

  1. 濾胞癌が疑われる腫瘍
  2. 経過観察中に徐々に大きくなる濾胞腺腫の場合は悪性の危険性を考え、手術をお勧めします

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症=バセドー病と考えられがちですが、バセドー病以外でも甲状腺ホルモンが増加します。慢性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、甲状腺腫瘍の一部には甲状腺ホルモンが増加する珍しい病態があります。ここでは最もポピュラーなバセドー病について述べます。

パセドー病

免疫異常により甲状腺ホルモンが過剰に産生される病態です。治療の基本は抗甲状腺剤(メルカゾール、チウラジールなど)の内服治療です。バセドー病は自然に軽快することもあり、しばらく薬物治療で経過をみるのが良いでしょう。薬の副作用(白血球減少、肝機能障害、湿疹など)で継続不能な時、コントロール困難な場合は放射線治療または外科治療の適応です。

米国ではバセドー病の90%以上にラジオアイソトープによる放射線治療が行われています。小児、妊娠中の女性には適応外ですが、最近では日本でも多く行われるようになりました。アイソトープの含まれるカプセルの内服のみですむためリスクの少ない治療です。

薬物療法の継続が困難な場合やアイソトープ治療を希望されない場合には外科手術の適応となります。手術治療を選択される場合は、外来で手術方法、合併症・問題点などについて説明を行った上で手術を行っています。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下をきたす疾患には様々なものがありますが、代表的疾患は慢性甲状腺炎(橋本病)です。自己免疫疾患の一つですが、機能低下とともに甲状腺のび慢性腫大をきたします。甲状腺剤内服で小さくなることもあります。この疾患の経過中に悪性リンパ腫を稀に合併するため、急速に甲状腺が腫大する場合は検査が必要です。

甲状腺の炎症など

甲状腺の炎症には慢性甲状腺炎の他に、亜急性甲状腺炎、急性化膿性甲状腺炎があります。亜急性甲状腺炎は感冒様症状で発症します。発熱、のどの痛みと甲状腺の腫大が特徴的です。急性化膿性甲状腺炎は小児、若年者に見られ、咽頭と甲状腺周囲の間に先天的につながり(瘻孔)が存在する場合に発症します。

  • 地域医療連携室
  • 心臓血管センター
  • 小児科
  • お産をされる方へ
  • 甲状腺外科
  • 不整脈センター
  • 採用案内