くすりの窓 2006.3

外はすっかり春の気配でいっぱいですね。

春は始まりの季節です。思い切って何か新しい事にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

今回のテーマは、アミノ酸です。

アミノ酸って?

「アミノ酸」とはたんぱく質を作っている最小単位の成分のことです。逆にいえば、たんぱく質はアミノ酸の分子がつながって構成されている物質なのです。
ヒトのカラダの約60%は水です。そして、次に多いのがたんぱく質で約20%を占めています。そして残りが脂質、無機質などで構成されています。このたんぱく質によって骨、脳、内臓、神経、血液、皮膚、毛髪などほぼ全身が作られています。つまり、私たちの体はすべてアミノ酸でできているというわけです。
人間だけではなく、動物、植物など地球上に存在するあらゆる生物は、すべてたんぱく質でできています。たんぱく質を構成しているアミノ酸は、あらゆる生物の中に存在しているということになるのです。つまり、アミノ酸は生命の根源ともいえる非常に重要な物質といえますね。
ちなみに、よく聞くペプチドというのも、アミノ酸が集まったものですが、その数がちがいます。
たんぱく質はアミノ酸が数十万から数百万集まってできていますが、ペプチドはアミノ酸が数個集まった状態のことをいいます。

アミノ酸はひとつじゃない!

ところで「『アミノ酸』という名前のひとつの酸がある」とイメージしている人はいないでしょうか?これは誤解で、自然界では約500種類のアミノ酸があるといわれています。人間の体はその中のわずか20種類のアミノ酸が複雑に組み合わされることで、なんと10万種類ものさまざまなたんぱく質をつくっているのです。
私たちが肉、魚、穀物などを食べると、そのたんぱく質は20種類のアミノ酸に分解され、私たちの体の中で、再びたんぱく質に組み換えられています。

アミノ酸の分解と合成

体内ではたんぱく質からアミノ酸へ、アミノ酸からたんぱく質へという分解と合成がくり返されています。
年齢、体重によって異なりますが、体重60kgの成人・1日当たりの場合、食事からたんぱく質を約80g摂り、ほぼ同量を体外へ排泄しています。また、アミノ酸とたんぱく質の分解と合成の量は、ともに約180gといわれています。
アミノ酸のたくわえ(アミノ酸プール)のバランスが悪いと、たんぱく質への再利用率も低下してしまいます。アミノ酸の過不足を生じさせないように、バランスのよい食事を摂ることが大切です。

必須アミノ酸と非必須アミノ酸

多くのアミノ酸は体内で酵素の作用によって合成されますが、人間の体のたんぱく質を作っている20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸については、体内で合成されないため、食事から摂る必要があります。この9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」といいます。また、必要な時に体内で合成できるその他の11種類のアミノ酸を「非必須アミノ酸」といいます。
必須アミノ酸は全部で9種類あります。頭文字を取って《メ・ス・バ・ト・フ・ロ・イ・リ・ヒ》と覚えてください。

食品に含まれる9種類のアミノ酸量はそれぞれ異なっています。
食物からアミノ酸を摂る場合、たんぱく質の再合成は、最も量の少ないアミノ酸に合わせて合成されてしまう仕組みがあります。

体をつくるたんぱく質を効率よく摂取するための目安になるのが、「アミノ酸スコア」です。それぞれの食品のアミノ酸の構成を比較して栄養価を判定した数値で、100に近いものほど良質な食品です。100に満たないアミノ酸は制限アミノ酸といいます。肉や魚、卵、乳製品などはアミノ酸スコアが高い食品です。
肉や魚、乳製品など動物性たんぱく質のアミノ酸スコアは100に近く、植物性たんぱく質よりも有益なたんぱく質を含みますが、概して脂肪も多く含まれているため、過食や偏食は避けたいものです。

下の「主な食品のアミノ酸スコア」に制限アミノ酸が書かれている場合は、それを補う食品を組み合わせることでアミノ酸パワーもアップします。必須アミノ酸はどれか1つが不足してしまうと、ほかのアミノ酸もそのレベルまでしか働かなくなってしまうため、バランスよく摂ることが大切です。


アミノ酸スコア(良質タンパクの目安:最高100)

( )内は第一制限アミノ酸(制限アミノ酸のうち、最も不足しているもの)

牛乳、卵

100

プロセスチーズ

(メチオニン)

91

精白米

(リジン)

65

アジ、イワシ、サケ

100

あさり

(トリプトファン)

81

小麦粉

(リジン)

38

牛肉、豚肉、鶏肉

100

トマト

(ロイシン)

48

じゃがいも

(ロイシン)

68

アスパラガスから発見されたアミノ酸

アミノ酸がはじめて見つかったのは、1806年、フランスの科学者ボグランとロビゲによってでした。2人はアスパラガスの芽からアミノ酸を取り出すことに成功し、アスパラガスにちなんで「アスパラギン」と名づけました。
その後、尿結石からシステイン、ゼラチンからグリシン、筋肉や羊毛からロイシンが見つかり、1935年までにたんぱく質を構成するすべてのアミノ酸が発見されました。
私たちになじみの深いグルタミン酸は1866年にドイツのリットハウゼンが小麦のたんぱく質グルテンから取り出し、グルタミン酸と名づけました。その後1908年、日本の池田菊苗博士がグルタミン酸は昆布のうま味成分であることを発見。アミノ酸がおいしさのヒミツを握る成分であることがわかり、日本でもアミノ酸のさまざまなチカラについての研究が盛んにすすめられるようになりました。

アミノ酸の効果

アミノ酸は体を形づくる細胞、すなわち骨や筋肉、内臓の材料になるだけでなく、体の機能を高めるさまざまな働きを担っています。おもな作用は次の通りです。

体の機能を正常に保つ……内臓や脳、中枢神経、酵素などの材料を補給し、体の変調や体力の衰え、疲労感などを改善します。

運動能力のアップ……筋肉の材料となり、筋力や瞬発力、やる気を高め、筋肉疲労を改善します。

ダイエット効果……アミノ酸を摂って運動をすると、筋肉量が増えることにより、基礎代謝量が上がり体脂肪の燃焼効果を高めます。アミノ酸はダイエットに有効ですが、運動と併用して初めて効果があることを覚えておいてください。

美肌効果……コラーゲンの原材料になるとともに新陳代謝を活発にして、肌の老化や肌荒れ、シワ、シミなどを防ぎます。

集中力アップ……脳への情報伝達をスムーズにし、長期記憶を促す。また、集中力を高め、能率をアップさせます。

免疫力アップ……免疫システムの機能を高め、丈夫な免疫細胞が体内を巡ることになり、感染症にかかりにくくなります。

肝機能を高める……臓器に十分な酵素と栄養を送り込み、肝臓内にある解毒システムの代謝をよくします。

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