くすりの窓 2003.1

2003年、新しい年が始まりました。今年はどんな年になるのでしょうか。これからしばらく気温の低い日が続きますが、寒さに負けず冬を乗り切りましょう。

今回は漢方薬について特集します。

医療用の漢方製剤が登場したことにより、病院でも漢方薬が処方されることが多くなりました。そこで、服用上の注意点などを、また風邪の季節ということで、風邪に用いられる漢方薬についてもまとめてみます。

漢方薬とは?

「漢方薬」は、薬として効くことが知られていた生薬(自然の植物や、動物、鉱物など)をいくつも組み合わせた薬です。
また西洋薬と違い、患者さんの「証」により使われる薬が決められます。つまり、自分に効果があった薬が、同じような症状のある他の人に効果があるとは限らないのです。

  証(しょう)・・・・・・ 体質、体力、抵抗力、症状の現れ方等の個人差を表す漢方用語です。漢方薬は下図のどの部分にかたよっているかを見て、過ぎたところを中央へ戻す処方が選ばれます。
実証
抵抗力が強い
陰証
寒さにより支配
陽証
熱により支配
虚証
抵抗力が弱い

●冷えや寒さなどを感じているのか、ほてりがあってあつがっているのか。
●体力があり病気に対する抵抗力がある状態なのか、体力が低下していて病気に対する抵抗力が弱い状態なのか。

体が病気とどんな戦い方をしているかによって処方される漢方薬が決まります。

 

漢方薬の正しい服用法は?

@一般に漢方薬は、食前又は食間の空腹時に服用します。それは、漢方薬の成分の多くが腸内細菌によって吸収されやすい形にかえられるため、空腹時に飲むほうが速やかに腸内細菌のいる場所に到着するからです。さらに、食べ物などの影響、食べ合わせを防ぐ意味もあります。
味や香り等が苦手で、空腹時に飲むと気分が悪くなったり、食欲が低下したりする場合など、その他症状によって食後に服用する場合もあります。

A医療用の漢方薬は、生薬を煎じてできた液を濃縮し、乾燥させたものです。コップ1杯程度の白湯に溶かして飲むと、本来の形に近くなり吸収されやすくなります。ただし、胃がむかむかする、吐きそうだという場合は、味や香りを抑えるため冷水の方が飲みやすくなります。

B2種類の漢方薬が処方された場合は、30分以上の間隔をあけて飲むようにしましょう。(2ヶ所以上の病院や薬局でもらった薬を自己判断で併用することは避けてください。効果が期待通りに現れなかったり、薬の作用が増強する場合があります。

風邪に用いられる漢方薬は?

@急性期

ひきはじめから4日前後までの急性期には、悪寒、のどの痛み、鼻水、首筋がこわばるなどの症状が現れます。この時期には、体を温める薬である葛根湯、麻黄湯がよく用いられます。

A亜急性期

熱は下がりますが、せきが出たり、口が苦い・ねばる、吐き気や食欲不振などの症状がみられ、この時期には免疫力を高めるための小柴胡湯、柴胡桂枝湯などが用いられます。

B慢性期

さらにこじれて慢性期に入ると、熱は下がっても全身がだるく、しばしば下痢や腹痛など消化器に異常な症状があったり、せきや痰が続いたりします。この時期には、疲れた体の養生のための補中益気湯がよく用いられます。


※これらの漢方薬は一般的なものですが、他のおくすりと併用すると、治療中の病気に影響が出たり、重篤な副作用を引き起こすことがあります。普段から病院でおくすりをもらって飲んでいる方はこれらの漢方薬を服用する前に必ずかかりつけの医師、薬剤師にご相談下さい。

この中から、風邪で最もよく用いられる葛根湯について説明します。

 

葛根湯はどんな薬?

<構成成分とその作用>

甘草(カンゾウ)・・・緩和
桂皮(ケイヒ)・・・発汗、鎮咳、平喘、温筋、健胃
生姜(ショウキョウ)・・・健胃、止瀉、鎮吐、鎮咳、興奮
大棗(タイソウ)・・・強壮、鎮静、緩和
芍薬(シャクヤク)・・・鎮痛、鎮静、鎮痙、強壮、緩和
葛根(カッコン)・・・発汗、止渇、鎮痛
麻黄(マオウ)・・・平喘、鎮咳、発汗、利尿

以上の7種類もの生薬の組み合わせが、風邪のひきはじめに効果を発揮します。

ちなみに葛根湯の効能は・・・

比較的強壮で胃腸が丈夫な人の風邪症状、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛みとなります。

 

最初の方で説明したように、漢方はその人の証にあわせて処方されます。葛根湯も虚弱な人、体力の衰えている人などは十分な効果を発揮できません。
漢方薬も、薬である限り薬の効果があるのと同時に副作用もあります。特に体質や症状に合わない漢方薬を使っている場合に副作用が出やすいので、医師、薬剤師の指示に従って服用しましょう。

風邪を予防するには

暖かくして、とにかく睡眠を十分に取ること。とくに首筋、肩甲間部の冷えや、咽喉の乾燥を避けましょう。しっかり食べて、栄養をとることも必要です。
寒い夜などは昔からある生姜湯を飲んで、ゆっくり休むと、効果が期待できます。

生姜湯の作り方

材料は・・・生姜親指大、はちみつ適量、片栗粉スプーン1杯半

すりおろした生姜、少量の水で溶かした片栗粉、はちみつをカップに入れ、スプーンでかき混ぜながら沸騰したお湯をそそぎます。
はちみつのかわりに黒砂糖を使うなどほかにもいろいろ作り方があるようですが、生姜の入れすぎには注意して下さい。

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