くすりの窓 2003.3

花粉症の季節です。テレビでも連日、花粉飛散情報や花粉症対策など、様々な報道がされています。今回のくすりの窓では、花粉症を取り上げます。花粉症について、お薬について、さらに日常生活での注意点についてまとめてみたいと思います。花粉症でお悩みの方、そうでない方もぜひ読んでみて下さい。

花粉症とは?

花粉を抗原とするアレルギー疾患です。 
体に侵入してくる花粉を体が異物として感知し、外に追い出そうとして症状が起こります。一般にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみが花粉症の四大症状といわれています。

花粉症の種類

日本で最も多いのはスギの花粉症です。国民の15〜20%がスギ花粉症といわれています。その他には、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギなどもポピュラーで、花粉の飛ぶ時期がずれています。なかにはいくつもの花粉にアレルギーがあり、1年中症状の出ているという人もいます。スギ花粉はだいたい平均して2〜4月に飛散するのに対し、ヒノキ科花粉は3〜5月と1ヵ月遅れです。

花粉症が起きるメカニズム

スギ花粉などの抗原が主に鼻や目の粘膜に付くことから始まります。体内ではこの抗原が異物として認識され、抗体が作られます。この時にできる抗体は、肥満細胞というアレルギーを引き起こす細胞に付き戦闘態勢を整えます。そして、再び抗原が入り込むと抗体がその情報をキャッチして肥満細胞に伝え、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンのような化学伝達物質が分泌されます。
ヒスタミンは神経を刺激して、くしゃみ、鼻水を、ロイコトリエンやトロンボキサンA2などが鼻粘膜血管を刺激して、鼻づまりを引き起こすといわれています。

治療薬

花粉症の治療薬といってもさまざまで、症状によって使われるお薬はかわってきます。

同じような症状に対する薬でも、1日1回の内服でよい薬、眠気の起こりにくい薬など、それぞれ特徴があります。

また、飲み薬だけでなく、局所的に使う外用薬も使われます。正しく使用しなければ、薬効が十分に期待できなかったり、全身性の副作用があらわれる可能性もあるので、医師の指示どおり使用しましょう。点鼻薬では、使用方法が薬袋などに書いてあるので、よく読んでください。

当院で出されている代表的治療薬

内服薬

第2世代抗ヒスタミン薬アレジオンアレロックセルテクトなど多数あり)

初期に開発された第1世代の薬と比べて、眠気・口渇などの副作用が弱いとされています。しかし第2世代のお薬にも多かれ少なかれ眠気は起こるので、車の運転や危険な作業には注意をする必要があります。

抗ロイコトリエン薬オノン

抗ヒスタミン薬での効果が弱い、鼻づまりに対して効果が高いという特徴があります。

ステロイド薬セレスタミン:抗ヒスタミン成分も含まれています) 

抗炎症作用が強く、様々な疾患に使われるのがステロイドです。花粉症に対しては、内服薬は他の薬では抑えられない重症の場合使われます。ステロイドは、短い期間で量を少なく使うのであれば、安全な薬ですが、使う量や期間によって副作用が心配になります。副作用は、胃腸障害、顔などのむくみ、高血圧・糖尿病などの生活習慣病の悪化、など様々です。 医師の指示をきちんと守り内服してください。

外用薬

局所ステロイド点鼻薬フルナーゼ点鼻薬

体の中に吸収されにくく、されたとしてもすぐに分解されるため、ステロイドといっても全身的な副作用は、ほとんどありません。

抗ヒスタミン点鼻薬ザジテン点鼻薬 

血管収縮性点鼻薬トーク点鼻薬

粘膜が張れて起こる、鼻づまりに有効です。鼻づまりの症状が強い時に使用します。過量・頻回に使用すると薬が効かなくなり、かえって腫れが激しくなってしまうことがあります。これを薬物性鼻炎といいます。医師の指示どうり使用してください。

抗アレルギー点眼薬インタール点眼薬リボスチン点眼薬

目薬は比較的身近なお薬だと思いますが、正しく点眼できていますか?
「清潔な手で、下まぶたをひいて、目やまつげに触れないように、1滴点眼する」
2種類以上の目薬を使用する場合、5分以上時間をあけるようにしてください。

日常生活での花粉対策

1)花粉情報に注意する。
2)飛散の多い時の外出は控える。
3)花粉の多いときは、窓、戸を閉めておく。
4)外出時に、マスク、メガネを使う。
5)表面がけばけばした毛織物などのコートの使用は避ける。
6)帰宅時、衣服をよく払い入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。
7)掃除を励行する。

花粉症Q&A

Q 花粉症は、遺伝するの?
A 花粉症発症の要因の一つはアレルギー体質の遺伝です。しかし、生活習慣や住環境など、ほかにも様々な要素があり、家族に花粉症の人がいても発症しないケースは珍しくありません。

Q 花粉症になる人とならない人、なにが違うの?
A 遺伝的にアレルギー体質を持っているか否かが、大きな分かれめになります。それに加え、食生活をはじめとする日常生活の要素が深くかかわっているほか、花粉が多く飛んでくるところに住んでいる人は、花粉症になりやすいといえます。

Q ある年突然、花粉症になるのはどうして?
A 花粉症が起きるメカニズムで述べたように、アレルギー体質の人は、花粉という抗原を体内に取り込むと、抗体をつくります。でも、この抗体の量が一定の水準に達するまでは、症状は現れません。子供のころから毎年、花粉を吸って、抗体をつくり続け、やがてその水準に……。そこでさらに花粉を吸い込んだとき、くしゃみや鼻水などの症状が出るのです。

Q お年寄りに花粉症が少ないのはどうして?
A 戦後10余年が経った1960年代になるまで、国内で花粉症はみつかっていませんでした。現在のお年寄りに花粉症の人が少ないのは、スギ花粉の飛ぶ量が少なかっただけでなく、当時の日本人の食生活や住環境がアレルギー体質になりにくくしていたからです。
また、年をとると免疫の力が低下するため、花粉に対しても敏感に反応しなくなり、若いころほどひどくなくなる場合もあるのです。

Q タバコを吸うと、花粉症になりやすいって本当?
A 本当です。タバコの煙が鼻粘膜の障害になるので、花粉のアレルギー成分が鼻粘膜に侵入しやすくなるからです。

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