くすりの窓 2003.9

9月に入り、暑い日が続いています。今になって夏(?)バテ気味という方も居られるのではないでしょうか。冷夏で心配されていたお米などの出来も、このところの高温 でもちなおし、例年どおり味覚の秋を迎える事ができそうです。
しかし、食べすぎは禁物。適度にスポーツや趣味を楽しみながら、おいしいものをバランスよく取りたいものです。

今回は、糖尿病の特集です。                    

糖尿病とは?

 生命を維持するためには、いろいろな栄養素が必要です。特に糖質・たんぱく質・脂肪は、三大栄養素と言われます。
 これらの栄養素が消化・吸収されると、肝臓でブドウ糖が合成され、体温維持し、筋肉を動かし、脳細胞が働くために利用されます。
 このブドウ糖を利用する際に、必要なのが、インスリンというホルモンで、膵臓のランゲルハンス島でつくられます。食事などで、血糖が高くなるとインスリンが大量につくられます。血液中のインスリンがふえると、筋肉でのブドウ糖の消費が促進され、肝臓や脂肪細胞では血糖をグリコーゲンや脂肪の形で蓄えます。そして、血糖値が正常に保たれます。 
 インスリンが少なかったり、細胞がインスリンの刺激にあまり反応しなくなると、血糖を消費したり蓄えたりする仕組みがうまく機能しなくなります。その結果血液中にいつまでも血糖がたまっている状態が続き、糖尿病につながるのです。
 尿に糖が出ると、糖尿病と考えがちですが、通常、血糖値が180mg/dl以上にならないと、尿に糖はでません。また、血糖が正常な人でも、腎臓の状態などで、尿に糖がでることがあり、糖尿病の診断は、血液検査でおこないます。

正常型

空腹時血糖値
75gブドウ糖負荷試験2時間値

110mg/dl未満 かつ
140mg/dl未満

糖尿病型

空腹時血糖値
75gブドウ糖負荷試験2時間値

126mg/dl以上 または
200mg/dl以上

正常型と糖尿病型の間を、境界型といいます。また、過去1〜2ヶ月の血糖値の平均値を示す指標として、HbA1Cという検査値もあります。正常値は4.3〜5.8%です。

糖尿病の合併症

糖尿病の初期には自覚症状がありません。気づかずそのまま放置していると、全身の血管や神経の病気を引き起こします。特に下の表にあるのは、糖尿病の三大合併症と言われ、小さい血管に障害を引き起こします。また、大きい血管にも合併症(大血管症)が起こります。糖尿病以外の原因で起こることがありますが、糖尿病では、著しく促進されます。   
三大合併症糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症
糖尿病によって引き起こされる大血管症脳梗塞・心筋梗塞・下肢閉塞性動脈硬化症など

糖尿病になったからといって、必ず合併症になるわけではありませんが、合併症を引き起こさないためには、空腹時血糖110mg/dl、食後2時間値140mg/dlを目標にできるだけ正常値に近づけることが大切です。

糖尿病の治療

糖尿病は、血液中のブドウ糖が増えすぎて発症し、1型と2型糖尿病に大別されます。

1型糖尿病・・・原因は不明ですが、インスリンをつくる膵臓の細胞が破壊されることにより、若い人やこどもに急激に発症します。インスリンの注射が必須となります。
2型糖尿病・・・インスリンが十分に出なくなったり、インスリンの働きが悪くなります。肥満・食べすぎ・運動不足・ストレスはその要因となります。徐々に発症するため年齢は高くなります。

 

日本の糖尿病の多くは2型糖尿病で、運動療法・食事療法が大切です。まずは、医師、栄養士とよく相談のうえ、自分に適したやり方で行いましょう。十分に血糖が下がらない場合には、飲み薬やインスリン注射による薬物治療が必要になります。薬を飲んでいると血糖値が下がるので、安心して食べ過ぎてしまいがちになります。これではインスリンの分泌が過剰になり、肥満が助長され、しだいに薬の効果がうすれてしまいます。食事療法や運動療法もきちんと行われていれば、最小限の薬で最大限の効果が期待できます。


糖尿病の薬
  以下は当院で使用されている糖尿病の薬です。

スルフォニル尿素系・・・ダオニール、グリミクロン、ラスチノン、アマリール、ファスティック
膵臓のβ(ベータ)細胞を刺激して、インスリンの分泌を促進させます。血糖値が下がりすぎる低血糖症に注意が必要です。ファスティックは、早く薬の効果があらわれるため、食事の直前に内服します。 

         

ビグアナイド系・・・メデット
肥満タイプの糖尿病に向いています。糖の吸収や生成を抑えたり、糖の代謝を促進することで血糖をさげます。まれですが、「乳酸アシドーシス」という副作用に注意が必要です。

  

グリコシターゼ阻害薬(食後過血糖改善薬)・・・グルコバイ、ベイスン
糖分の消化吸収を遅らせることで、食後の高血糖を改善します。食事の直前に飲まなければ効果が期待できません。食事中に気がついた場合は、すぐに飲みましょう。この種類の薬を服用中に低血糖が起こった場合は、普通のアメ等ではなく、ブドウ糖を口にするようにしましょう。

 

インスリン抵抗性改善薬・・・アクトス
肝臓、筋肉、脂肪組織などのインスリン感受性を高める作用があります。結果として、肝臓での糖の産生が抑えられ、血液中の糖分は筋肉などに取り込まれ、血糖値が下がります。

 

インスリン注射液

体に不足するインスリンを注射で補います。1型糖尿病では不可欠です。2型糖尿病でも、病状に応じて選択します。不足分のインスリンを補い、血糖の変化を健康な人に近づける事ができます。最近は、2型糖尿病でも、早い段階で使用する例が増えています。

たとえば、飲み薬で膵臓のインスリン分泌を刺激していると、次第に膵臓が疲れてくることがあります。インスリン療法を行う事で膵臓を休めてあげると、飲み薬の効きが良くなり、インスリン注射を止められる場合もあります。インスリン注射の種類、投与方法は、主治医とよく相談し、自分にあったより効果の高いものを選択しましょう。

 

その他 (糖尿病の合併症などに使用される薬)
キネダック・・・手足のしびれ、知覚麻痺、神経痛に使用されます。
メチコバール・・・ビタミンB12で、神経の働きをたすけ、神経痛等をやわらげます。
メキシチール・・・不整脈の薬ですが、糖尿病の神経痛・しびれにも効果があります。
プロレナール、プロサイリン等・・・血流を改善します。間接的に、末梢神経障害を改善します。

          

低血糖症状とは?

血液中の糖分が少なくなりすぎた状態で、ひどい場合は、痙攣を起したり意識を失うこともあり、注意が必要です。インスリンの注射をしている人、糖尿病の薬を飲んでいる人で起こることがあります。 

 

低血糖がおこったら

@がまんしないようにしましょう。低血糖による症状は、糖分を補給しなければ、改善しません。

Aグルコバイ・ベイスン等、食後過血糖改善薬を飲んでいる場合は、ブドウ糖の粉末10g〜20gを口にしてください。(砂糖や飴では血糖値があがりにくいため、ブドウ糖を携行するようにしましょう)

B食後過血糖改善薬を飲んでいないときはペットシュガーや、ジュース(甘いもの)100cc程度を口にしてください。

C症状が治まらない時は、すぐにかかりつけのお医者さんに連絡しましょう。

薬を飲む時の注意点

指示された量を規則正しく飲みましょう。(自分の判断で増減しないように)

薬を飲み忘れたときは、指示された時間の1時間以内なら飲んでも大丈夫です。それ以上時間があくと、低血糖がおこるおそれがあります。食後過血糖改善薬は食事の直前に内服しますが、食事中に思い出したときはすぐに飲みましょう。

食事をしなかった場合は、薬は飲まないようにしましょう。

病気の日(シック・デイ)・・・下痢のとき、嘔吐しているとき、体調が悪く食事が十分とれないとき等の対処法は、お医者さんに相談するようにしましょう。

最も大事なのは治療を中断しないことです。定期的に根気よく通院しましょう。

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