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9月とはいえ残暑厳しいこの頃ですが、空高くかかる白雲にも秋の風情が感じられるようになってまいりました。
今回のテーマは 腸内環境と健康 についてです。
2022年9月
腸内環境を整えることはお通じがよくなる以外にも多くの健康に有用な効果があります。例えば、感染源となるウイルスや細菌は口や鼻から体内へ侵入することが多いため、免疫細胞の約70%は腸に集まっています。つまり、腸内環境がよくなれば免疫機能が高まり、病気になりにくくなります。
今回は、腸内の善玉菌を増やすのに役立つ考え方についてお伝えします。
ヒトの腸には約1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌(腸内細菌叢や腸内フローラとも呼ばれる)が生息しています。
大きく分けて腸内細菌は、善玉菌と悪玉菌、どちらでもない日和見菌がいます。腸内細菌は互いに影響しあって一定のバランスを保っています。
腸内環境を整えるには、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の割合を多くし、悪玉菌が増加しにくい環境を作ることが重要です。
腸内環境を整えるには善玉菌を摂取するのがよいと言われています。また、善玉菌のエサになるものを一緒に食べると効果的であることが知られています。
といいます。
①発酵食品
乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が含まれた食品です。微生物の多くは40℃以上の加熱で死滅するためなるべく生の状態で食べると効果的です。
製品によっては、含まれる菌数の記載があるものもあるためパッケージを参考にするのもよいかもしれません。
また、発酵食品には塩分を多く含むものもあるため、摂取しすぎには注意しましょう。塩分の取り過ぎは高血圧や腎機能を低下させる原因になることもあります。
例:ヨーグルト、納豆、キムチ、ぬか漬け、味噌、チーズなど
②整腸剤
善玉菌を含むお薬には、市販のものや病院で処方されるものがあります。決められた用法用量を守って服用するようにしましょう。
当院採用の整腸剤については後ほど、詳しくご紹介します。
食物繊維やオリゴ糖は、善玉菌のエサになりやすく腸内で菌を増やす材料となります。食物繊維には水に溶けやすい「水溶性」と溶けにくい「不溶性」があり、便を軟らかくしたい場合は「水溶性」、便の量を多くしたい場合は「不溶性」を選ぶとよいかもしれません。
善玉菌としてビフィズス菌や乳酸菌が有名ですが、科学的に効果が証明されたビフィズス菌や乳酸菌は特定の菌株に限られるため、お腹の調子を整える食品を選ぶ際は、特定保健用食品(トクホ)かどうかを一つの目安として選ぶとよいかもしれません。
では、善玉菌が増えるとどのように体にいいのでしょうか?そのはたらきについてご紹介します。善玉菌の腸内での代表的な効果に以下のようなものがあります。
ビフィズス菌などの善玉菌は、プレバイオティクス(オリゴ糖や食物繊維)をエサに、乳酸や酢酸などの「短鎖脂肪酸」を作ります。それにより腸内は酸性になり、悪玉菌の増殖を抑えられます。その結果、免疫は活発になり、食中毒菌や病原菌による感染や、発がん性をもつ腐敗産物の産生を抑制を予防できます。
また、腸の運動を活発にし、排便を促す効果もあります。
腸内細菌は、8種のビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビオチン、葉酸、ビタミンB12)とビタミンKを産生しています。ビタミン類は免疫機能を高めたり、健康な皮膚を作ったりと健康な体作りにかかわっています。
そのほか、善玉菌に含まれる成分が免疫機能を高めることもあり、体の健康を保つ様々な効果があるといわれています。
一方、悪玉菌は、たんぱく質や脂質の多い食事・不規則な生活・ストレス・便秘などが原因で腸内に増えてきます。悪玉菌の割合が優勢になれば、肥満、糖尿病、大腸がん、動脈硬化症、炎症性腸疾患などの疾患のリスクが高くなる可能性があります。
医療用にもプロバイオティクスとして善玉菌を含む整腸剤があります。
当院採用の整腸剤についてご紹介します。
ビオフェルミン(ビフィズス菌末12mg含有)
ビオフェルミンはビフィズス菌を含む製剤です。ビフィズス菌は小腸下部~大腸で生育する菌で、乳酸や酪酸を産生することで腸の産生を保ち、悪玉菌の発育を抑制します。
内服したビフィズス菌が腸内に定着することで、腸内菌叢の正常化をはかり、下痢や便秘等諸症状の改善効果があります。
ミヤBM(錠:宮入菌末20mg、散剤:宮入菌末40mg含有)
有効成分に、酪酸菌の1種である「宮入菌」を含む製剤です。宮入菌は芽胞と呼ばれる安定な状態を形成するため、胃酸の影響を受けにくい特徴があります。また、多くの抗菌薬にも耐性があるため、抗菌薬との併用が可能です。
善玉菌を増やして腸内環境を整えることで、健康によい効果が得られることがわかっていただけたでしょうか。
ただし、多く摂取すればするほど良いわけでもなく、かえっておなかを壊したり、体調を崩す可能性もあるため、決められた用法用量を守って使用するようにしましょう。
不安なことがあれば、医師や薬剤師など医療スタッフにご相談ください。
また整腸剤を使用して体調が悪くなることがあれば、ひどくなる前に医療機関を受診するようにしましょう。