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朝夕の寒さが身にしみる季節となりました。
今回のテーマは 便秘 についてです。
2022年11月
便秘とは、3日以上排便がない状態、また毎日排便があっても便が硬かったり、量が少なかったり、まだ残っているような感じ(残便感)がある状態のことを言います。便秘は、排便が困難になるだけでなく、腹痛やお腹の張り、食欲不振など人それぞれ多様な症状が現れます。
ただし、3日に1回でも不快に感じていなければ便秘とは言えません。
便秘の原因は、人によって異なります。機能性便秘3種類と器質性便秘の計4種類に分けられます。
■弛緩性便秘
運動不足や筋力低下が原因となって、大腸の運動が低下することで、腸に便が長くとどまり、そのうち水分が吸収されてしまうことで、便が硬くなってしまうタイプです。
■けいれん性便秘
腸の働きには、自律神経も関わっています。そのため、ストレスなどが原因で自律神経が乱れると、腸が緊張状態になり、けいれんするように動いてしまいます。その結果、便をうまく肛門まで運べず、便秘になってしまうタイプです。
■直腸性便秘
便が肛門付近の直腸まできているにも関わらず、排便反射、便意が起こらず、直腸に便が停滞してしまい排便に至らないタイプです。お年寄りの方や普段排便を我慢する習慣がある方に多いといわれています。
イレウスや大腸がんなど器質的な異常が原因で、便が消化管をうまく移動できずに便秘になるタイプです。血便や激しい腹痛がある場合は、特に要注意です。病院を受診するようにしましょう。また、このタイプの便秘は、腸管穿孔といい、腸管に穴があく恐れがあるため下剤は使用しません。
医療や介護の現場で、客観的に便の状態を評価する指標として用いられるのがブリストルスケールです。
スケールの1と2が便秘の便、3~5が正常の便、6と7が下痢の便に分類されます。特にスケール4の状態は、適度な柔らかさで表面がなめらかなので、苦労せずスルッと排便でき理想的と言われています。
ご自身がどの状態に該当するか気になる方は、一度この指標に当てはめて客観的に評価してみても良いかもしれませんね。
下剤を服用し排便をコントロールしているという方は、スケール3~5を調節の目安にしてみて下さい。
下剤は主に刺激性下剤と機械性下剤に分類されます。刺激性下剤は、作用する部位によってさらに小腸刺激性下剤と大腸刺激性下剤に分けることができます。機械性下剤は、はたらき方によって浸透圧性下剤、膨張性下剤、浸潤性下剤に分類されます。また、どちらにも分類されない新しい機序の下剤もあります。
刺激性下剤は効き目を実感しやすく、即効性が高いため使用頻度も高くなっています。ただし、腹痛が起こる、使い続けると習慣化することがある等の特徴があるため注意が必要です。
機械性下剤は、下剤としての作用は弱く、効き目が実感できるまでに半日以上、最大効果が現れるまで2~3日を要します。しかし、長期使用による習慣化等の心配は少ないとされています。
センナという植物の葉や実などの抽出物を製剤化したものです。 大腸の腸内細菌によって活性化して大腸を刺激します。
■特徴・注意点
胃や小腸では作用せず、大腸の腸内細菌によって活性体に変換されて効果を示します。
■特徴・注意点
結腸や直腸の副交感神経を直接刺激して腸の運動を高めます。 胃でも作用してしまう成分のため、腸だけで作用するよう坐剤となっています。
■特徴・注意点
腸内の浸透圧を高めて、水分を引き寄せることで水分量を増やし、膨張・軟化した便が腸管を刺激します。胃酸を中和する作用があるので胃酸過多を抑える制酸剤としても働きます。
■特徴・注意点
ポリエチレングリコールの浸透圧により水分を保持し、大腸まで運んで排便を促します。水分保持効果を得るために水(60mL)で溶かす必要があります。
■特徴・注意点
小腸で分解・吸収されることなく大腸に達し、ラクツロース未変化体の浸透圧作用によって腸内への水の移動を促進します。ラクツロース未変化体は腸内細菌によって分解され、乳酸などの有機酸を産生し浸透圧を高めるとともに、腸管の蠕動運動を促進し、浸透圧性下剤としての作用を示します。
■特徴・注意点
消化管内で吸水し、膨張・ゲル化することで便の容積や便量を増やし、排便しやすくします。
■特徴・注意点
小腸で作用し腸管内への水分の分泌を増やすことで、便を柔らかくして自然な排便を促します。
■特徴・注意点
グアニル酸シクラーゼC受容体を刺激することで腸管内の水分を増やしたり、腸管の動きを活性化させたりすることで便秘を改善させます。
■特徴・注意点
胆汁酸トランスポーターを阻害することで、大腸の水分量を増やし、さらに蠕動運動を促します。
■特徴・注意点
慢性便秘症の患者さんはその大半が高齢者であり、男女ともに加齢により増加しています。
慢性便秘の治療には、トイレにきちんと行くことや食物繊維を十分に摂取することなどの生活習慣の改善が薬物療法とともに重要となっています。便秘はさまざまな疾患と関連があることが分かってきていますので、病態をきちんと把握し、適切な治療を行うことが大切です。