Introduction of Department
新しい年となりました。
どうぞ災害への備えは万全に。
皆さんにとって良い一年になりますように...
今回のテーマは 鎮咳薬(咳止め) についてです。
2024年1月
咳は、のどをきれいにするための体の反応であり、正常な現象です。
咳がたまに出る程度なら問題ありませんが、長引く場合は体に何らかの問題が起こっている可能性があります。咳の持続が3週間未満であれば「急性の咳」、3週間以上であれば「遷延性の咳」、8週間以上続く場合は「慢性の咳」とされています。
急性の咳は主に肺炎などの感染症、慢性の咳は主に喘息などのアレルギー疾患が原因となることが多いです。肺気腫など、肺の機能が落ちている方は慢性的な咳が続くことがあります。また心不全の悪化から咳や痰(たん)が増える場合もあります。
咳でお悩みの方は、まず禁煙することが重要です。タバコを吸わなくても咳が長引くなら、主治医やかかりつけ医に相談してみましょう。
喘息や基礎疾患の悪化などがなければ、対処療法として鎮咳薬を使ってみてもいいかもしれません。
右の図を見てください。
咳は、のどのセンサーが異物をとらえたとき、脳が反応してでるものだということが分かります。この脳の反応は「咳反射」と呼ばれています。
咳は痰を外に出す役割もあります。気道の粘膜で異物やウイルスをからめとり、細かい毛(絨毛)で気道の入り口まで運び、咳によって外に排出します。
咳に「のどのセンサー」や「脳の反射」が関わっているため、鎮咳薬はその部分に作用する必要があります。鎮咳薬には大きく分けて、麻薬性中枢性鎮咳薬、非麻薬性中枢性鎮咳薬、末梢性鎮咳薬の3つがあります。
■麻薬性中枢性鎮咳薬の主な成分
コデイン、ジヒドロコデイン
■非麻薬性中枢性鎮咳薬の主な成分
チペピジン、デキストロメトルファン、ノスカピンなど
■末梢性鎮咳薬
気管支拡張薬、去痰薬、吸入薬、漢方薬など
コデインやジヒドロコデインについては、麻薬であるモルヒネと化学構造が類似しているため、過量に摂取し続けると依存を引き起こすことがあります。また、デキストロメトルファンは「非麻薬性鎮咳薬」に分類されるものの、依存の可能性がある薬剤とされています。チペピジンは、依存性に関する事象は今のところ報告されていません。上記成分を含む鎮咳剤の中にはドラッグストアなどで市販薬として購入できるものもありますが、最近これらの薬を大量に飲む「オーバードーズ」が社会問題となっています(後述)。
ひとことコラム 咳の消費カロリー
咳1回で約2kcal消費されるとされ、1分間に2回咳をすると1時間で240kcalとなり、ご飯1杯分ほどのカロリーが消費されることになります。咳のし過ぎは、胸やお腹の痛みを伴う上、肺炎などで体力が低下している方にとっては回復の妨げにもなりかねません。適切な治療が必要ですね。
脳の延髄にある咳中枢に作用することで、咳を抑える薬です。痰の絡まない乾いた 「コンコン」咳 におすすめです。
■麻薬性
鎮咳作用は最も強力ですが、注意点も多数あります。
■非麻薬性
麻薬性中枢性鎮咳薬よりも副作用が少ない傾向にありますが、注意が必要です。子供に使用できる成分があります。
咳中枢ではなく、気管や気管支、肺などの末梢に作用して、咳を抑える薬です。
痰の絡んだ湿った 「ゴホンゴホン」咳 におすすめです。以下の表に、主な末梢性鎮咳薬の各成分をまとめています。市販薬を購入する際に、参考にしてみてください。
※病院の常用薬がある場合は、市販薬との飲み合わせについて薬剤師に相談しましょう!
ひとことコラム 息苦しい時の対処
咳の原因はさまざまですが、のどの冷え・乾燥や体勢が要因になる事があります。睡眠中はのどを冷やさず、咳で寝られない時は 、うがいや水を飲むなどの対応を。
あおむけに寝るときは膝の裏にタオルやクッションを入れて足を曲げたり、横向きに寝ると呼吸がしやすくなります。
椅子に座っている時は、前かがみになってひじや腕で体を支えると横隔膜が下がって肺が膨らみやすくなります。
試してみて下さいね。
オーバードーズは、陶酔感などを求めて市販の風邪薬などを大量・頻回に服用することで、未成年者を中心に社会問題となっています。内臓などに強い負担をかけるだけでなく、オーバードーズを続けることで依存状態となり、やめたくてもやめられないといった深刻な状態におちいってしまうことがあります。
以下の表に、濫用の対象となっている市販薬と、それらに含まれる濫用の恐れのある成分名をまとめています。
デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、カフェインなどについては現在厚生労働省の濫用薬物の対象ではありませんが、同様に中毒や依存などが問題となっており、救急搬送の急増や死亡の原因のひとつと言われています。
国が進めている「セルフメディケーション」は「自分の健康は自分で管理しよう」という考え方に基づいていますが、これにより以前は処方箋なしでは手に入らなかった薬がドラッグストアやネットで簡単に買えるようになったため、オーバードーズの一因になっているのではないかと言われています。
<相談窓口>オーバードーズがやめられない、家族の薬物乱用に悩んでいるなど...
LINE相談(チャット形式)での相談もできます。
→一人で悩まず、SNSや電話で相談してみませんか?(広島県)
しんどさやつらさを改善してくれる薬も、使い方を間違うと健康を害してしまうことがあります。薬は自己判断に頼らず、正しく服用することが重要ですね。お薬について不安なこと、分からないことがあれば、ぜひ薬剤師にご相談ください!