Introduction of Department
木の芽ふくらみ、花のつぼみに春を感じる嬉しい季節となりました。
季節の変わり目ですので体調管理はしっかりと。
今回のテーマは 腸内細菌 についてです。
2024年3月
腸には、多くの腸内細菌が存在します。
その数500~1000兆個、種類は500~1000種類、重さにして1~1.5kgとも言われています。腸内に様々な菌が集合体を作って分布している状態をいろんな花が咲き乱れている様子に例えて、「腸内フローラ(花畑)」と呼びます。
多種多様な腸内細菌ですが、①善玉菌、②悪玉菌、③日和見菌の3種類に分類されます。
体を守る働きを持つと考えられている腸内細菌で、乳酸菌やビフィズス菌などがあります。糖分や食物繊維を発酵させて酢酸・乳酸などを作り、腸内を弱酸性に保ちます。悪玉菌はアルカリ性の環境を好むため、腸内が酸性になると悪玉菌の増殖を抑えられるようになります。
増えすぎると体に悪影響をもたらすことがある腸内細菌で、大腸菌(有毒株)やブドウ球菌、ウェルシュ菌などがあります。悪玉菌は、タンパク質・脂質メインの食事や、便秘、ストレスなどにより増加します。腸内の悪玉菌が増えると、毒性物質が作られて腹痛や下痢を引き起こし、様々な感染症を引き起こすことがあります。しかし一方で、肉類などのタンパク質を分解し、便として処理・排泄するという重要な働きもあるので、一概に不要な菌とはいえません。
善玉菌と悪玉菌のどちらか優勢な方に加勢します。通常時の腸内では無害もしくは善玉菌に加勢して有益に働きます。しかし、免疫力が低下したり腸内の悪玉菌が増加すると、悪玉菌に加勢して有害に働きます。善玉菌や悪玉菌に比べて知名度の低い日和見菌ですが、実は腸内細菌の7割はこの日和見菌で、腸内環境に大きな影響を与えています。
年齢と共に腸内環境は変化し、菌の種類や数もかわっていきます。中高年を過ぎると、善玉菌のビフィズス菌が減り、悪玉菌のウェルシュ菌が増えるという報告もあります。
腸内環境を整え、理想のバランス(善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7)を保つことが大切とされています。割合は分からなくても、お腹の調子が悪い時はバランスが崩れていると考えて、食生活や生活態度の見直しをしてみましょう!(それでも改善しなければ医師に相談を!)
ひとことコラム 腸管で幸せホルモンを分泌!
人の体の中で幸せホルモン(=セロトニン)が分泌されると、良好な精神状態、いわゆる「幸せ」を実感することができます。一方セロトニンが不足すると、イライラして怒りやすくなります。近年、セロトニンは腸管で作られていて、セロトニンの生成には腸内細菌が関与していることが明らかになりました。
幸せを実感するには、腸内細菌の働きが不可欠なんですね。
腸内細菌のバランスにより、健康を維持できたり、病気のリスクが高くなったりと、健康と腸内環境は密接に関係しています。
理想的な腸内環境をつくるために重要なのは、「菌の多様性」と「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)をつくる菌」と言われています。
脂肪酸は油の成分の一つですが、短鎖脂肪酸とはオリゴ糖や食物繊維などの難消化性炭水化物を腸内細菌が分解してできる脂肪酸で、酢酸、プロピオン酸、酪酸があります。短鎖脂肪酸には、腸管にエネルギーを与えて腸を動かすなど、様々な働きがあります。
腸内細菌の多様性が失われ、短鎖脂肪酸の産生が減ると、腸内環境が乱れた状態に陥ります。この状態がすすむと大腸の粘膜が薄くなり、体の中にいろいろな菌や物質が入ってきやすくなります。
※抗菌薬(抗生剤)については、感染症治療上必要と判断された場合に処方されますので、医師の指示なしに中止しないで下さい。下痢などが現れた場合は処方医にご相談ください。
私たちの心がけ次第で、腸内環境は改善できます。消化器病専門医で帝京平成大学教授の松井輝明さんが勧める「腸活10ヵ条」を読んで、ぜひ今日から実践してみましょう。
起床時にコップ1杯の水を飲んだり、朝食をとることで、「胃・結腸反射」が起こり、その刺激で腸が動き出します。1日の活動が始まるタイミングでの刺激は最も効果的です。
朝食後には必ずトイレに行き、出なくても便座に座る習慣をつけましょう。
腸と脳は連動しているので、ストレスを感じている時や睡眠不足の時は腸の動きが悪くなります。音楽や散歩など、自分なりのストレス対処法を見つけましょう。
毎日30分の有酸素運動で血行が良くなり、運動の刺激で腸が動きやすくなります。早足で歩くだけでもいいので、できるだけ毎日続けましょう。
腸内細菌のエサは食物繊維、お米は貴重な食物繊維源です。医師から食事制限を指導されていない限り、炭水化物抜きダイエットは避けましょう。
腸内のビフィズス菌は加齢とともに減少します。ビフィズス菌のエサとなる食物繊維、特に水溶性食物繊維を摂るように心がけましょう。海藻や大麦などの穀物に多く含まれます。
ヨーグルトや漬物、納豆などの発酵食品には、腸内細菌が好む成分が含まれています。またヨーグルトには様々な善玉菌が含まれており、腸内環境を酸性に保つのにも役立ちます。空腹時は胃酸の影響が強いので、少しでも何かお腹に入れてヨーグルトを食べた方が、腸活効果は高まります。
丼ものや麺類などの一品料理は食物繊維が不足しがちです。外食時は、食物繊維の摂れる小鉢のついた定食を選んでみましょう。
下剤はあくまで対症療法です。基本は運動や食生活で腸内環境を整えることが大切です。
がん検診も大腸ケアには欠かせません。症状が改善しない場合は医師に相談しましょう。
当院で処方される整腸剤を紹介します。
■ミヤBM錠・ミヤBM細粒
酪酸菌が配合されており、短鎖脂肪酸の「酪酸」を産生します。胃酸や抗菌薬に対して強く、抗菌薬との併用が可能です。酪酸菌は、宮入博士が発見したので宮入菌とも呼ばれています。
■ビオフェルミン錠剤
ビフィズス菌が配合されており、「乳酸」や短鎖脂肪酸の「酢酸」を産生します。加齢とともに腸内のビフィズス菌は減少し、60歳以上になると、若い頃の10分の1以下にまで減ると考えられています。
ひとことコラム 脳腸相関
緊張やストレスで、お腹が痛くなった経験はありませんか?
これは、脳が神経を介して腸にストレスの刺激を伝えるからです。このように、脳と腸がお互いに密接に影響を及ぼしあうことを「脳腸相関」と呼んでいます。
腸の神経細胞の数はおよそ1億ですが、この数は、体の中で脳に次いで2番目の多さとなっています。さらに、腸は脳と 約2000本の神経線維でつながっており、緊密に連携しています。これが、腸が「第二の脳」と呼ばれている所以です。
腸の不調は脳の不調かも?