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寒の入りも過ぎ、寒さもいよいよ本番を迎えました
今回のテーマは RSウイルス です。
2025年1月
RSウイルス(Respiratory syncytial virus:呼吸器合胞体ウイルス)は年代問わず風邪症状を引き起こす一般的なウイルスです。RSウイルスに感染すると、4~5日の潜伏期間を経て、発熱、咳、鼻水などの上気道炎の症状がみられます。
上気道炎の症状が数日続いた後に快方に向かう場合が多いですが、ウイルスが気管や気管支に入り込むと、強い咳やゼーゼーヒューヒューといった喘鳴、呼吸困難などの下気道炎の症状がみられる場合があります。(下のグラフ)
小さなお子さんについては、2歳までにほぼ100%の児が感染するとされており、何度も感染を繰り返します。RSウイルスの初回感染時には、より重症化しやすいといわれており、特に生後6ヶ月以内に感染した場合は、細気管支炎や肺炎など重症化する場合があります。
接触感染と飛沫感染で感染が広がります。RSウイルスは、麻疹ウイルスや水痘ウイルスのように空気感染はしないと考えられています。
■接触感染
感染者との直接の接触や感染者が触れたことにより、ウイルスがついた手指や物品を触ることで感染
■飛沫感染
感染者が咳やくしゃみ、会話などをした際に口から飛び散るしぶきを浴びて吸い込むことにより感染
約70%の乳幼児では、上気道炎の症状が数日続いた後、快方に向かいます。一方、残り30%の乳幼児ではその後、細気管支炎や肺炎などの下気道炎を引き起こして重症化してしまいます。特に、早産児、肺や心臓に基礎疾患などがある乳幼児は重症化しやすいことが知られています。そのため、重症化のリスク因子のある乳幼児に対しては、RSウイルス感染による重症化を抑える薬(ウイルス抑制薬)を使用できるようになっています。
鼻の穴に綿棒のようなものを入れ、粘膜をぬぐいとって迅速検査を行います。
※迅速検査は、入院中の患者、1歳未満の乳児(外来)、RS感染症の重症化を抑える薬の適応となる患者(外来)にのみ保険適用されます
RSウイルス感染症と喘息の発症率には関連があると言われています。海外での報告となりますが、RSウイルスにより入院した経験がある小児では健康な小児と比較して、3歳、7歳、13歳における喘息の発症率が一貫して高かったことが報告されています。
通常は、咳や鼻水などの上気道炎の症状が数日続いた後に快方に向かう場合が多いですが、その後に感染が気管支等に及ぶことで喘鳴などの下気道炎による症状がみられる場合もあります。
特に高齢者や、慢性の呼吸器疾患、糖尿病などの免疫が低下する基礎疾患がある場合は重症化する可能性が高くなります。高齢者施設などでは、RSウイルス感染症の集団発生に注意が必要です。
特徴的な症状がないため、症状からRSウイルス感染症と診断することは困難です。また、新生児・乳幼児に使用される検査キットでは、成人におけるRSウイルスの検出が難しいため、高齢者のRSウイルス感染症の診断は難しいとされています。
確立された治療法はなく対症療法が中心となります。RSウイルス感染症による下気道炎等を予防するワクチンがあります。
ひとことコラム マスク着用の効果について
マスクの着用が個人の判断となって久しいですね。マスク着用の効果について東京大学医科学研究所が2020年に新型コロナウイルスで調査した内容を見てみましょう。
明確な数値はありませんでしたが、両者ともマスクを着用した場合は相乗的に効果が高まることが示されています(80~90%程度?)。
RSウイルスも飛沫感染しますので、体調がよくないな...と思ったらまず休養、そしてマスク着用をご検討くださいね!
RSウイルス感染症に用いる薬には、成人に使用する薬と、新生児・乳幼児に使用する薬があります。
RSウイルス感染症は1年を通じて感染がみられます。流行のピークの時期はありますが、年によって様々です。(2018年-2019年は8-9月、2021年-2022年は6-7月にかけて流行のピークがありました。)
日頃から手洗い・うがいの感染対策を心掛け、感染症から身を守りましょう!