土谷総合病院

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心臓血管外科記事

心臓弁膜症に対する人工弁を使用しない弁形成手術 ― 自分の弁を残して、抗血栓剤(抗血小板剤・抗凝固剤)を飲まなくて済む! ―

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土谷総合病院では心臓弁膜症に対して人工弁を使用しない弁形成手術を行っています。

心臓弁膜症とは?

心臓内には弁は4つあり、大動脈から全身へ血液を循環させるポンプの役割を担っている左心室の入り口には僧帽弁が、出口には大動脈弁があります。この弁が何らかの原因で閉じなくなり、血液が逆流する状態を閉鎖不全症といわれています。

外科的治療として、人工弁に交換する手術が行われています。人工弁には機械弁と生体弁があります。2種類の特徴について下の図で説明します。

人工弁に交換する手術機械弁と生体弁それぞれの特徴

■大動脈弁置換術における生体弁の適応

Class I
  1. 出血性疾患などワルファリン投与が困難な患者
  2. 65歳以上の患者
Class IIa
  1. ワルファリン内服コンプライアンスに問題のある患者
  2. 妊娠希望の若年女性
  3. 活動期感染性心内膜炎患者への同種弁
Class IIb
  1. 機械弁置換術後に血栓弁を起こした患者
  2. 成長が期待される患者への自己肺動脈弁

鄭忠和、尾辻豊. ACC/AHA Pocket Guideline 日本語版. June 2006: 4-5.

なぜ弁形成術?

人工弁に交換すると、生涯にわたって抗凝固薬を内服しなければならなかったり、途中で機能しなくなって新たな人工弁に再交換しなければならなかったりする危険にさらされ、生涯にかけて患者の負担を増やす結果になります。

自分の弁を温存して弁を修復する弁形成術は、上記のような危険にさらされることから回避できる反面、残った自己の弁が将来的に変形し逆流が再発する危険を含んでいます。再発を減らすには逆流を完全にゼロにする高度な弁形成術の技術が要求されると言われていますが、その背景には技術以外に術前・術中の弁の評価が重要となります。

土谷総合病院では閉じなくなった自己弁に対して人工弁に交換するのではなく、まだ機能している弁を残しながら閉じなくなった部分の弁のみ修復する手術を積極的に行っています。

循環器内科と個々の症例に対して十分に検討を行い、患者さんに最善の方法をご提示しています。従いまして弁形成術をご希望されても検討の結果、弁置換術の方が良いと判断した場合は弁置換術を勧めさせていただく場合があります。最良な弁形成術が完遂できるよう内科・外科・麻酔科など共同してチーム医療で治療をさせていただいています。

具体的な弁形成術の方法
1. 僧房弁形成術

漏れている弁を修繕し、弁周囲にリングをあてて補強する手術です。

僧房弁形成術
2. 大動脈弁形成術

破壊された弁や余剰な弁を修繕し、大動脈弁の形を正常化する方法です。

僧房弁形成術
3. 自己心膜による大動脈弁再建術

破壊が高度であったり、弁組織が固くなったりした弁では、修繕は不可能であるため、自分の心膜を使って、新しい弁に作りかえる手術(再建)方法です。

僧房弁形成術