めっきり日脚が短くなり、冬がすぐそこまで来ているような、きょうこのごろです。風邪などひかないよう気をつけましょう。
今回のテーマは、高尿酸血症・痛風です。
2007年11月
高尿酸血症ってどんな病気?
血液中の尿酸が正常の範囲を超えて多い状態を高尿酸血症といいます。高尿酸血症そのものは、なんの症状もありませんが、放っておくと尿酸が関節や腎臓などで結晶のかたまりとなって痛風や腎障害を引き起こします。
尿酸とは?
尿酸はからだの細胞の新陳代謝やエネルギーの消費によってできる老廃物です。 尿酸のもとはプリン体という物質で、細胞や食品中などに含まれています。わたしたちの体内では毎日プリン体から尿酸がつくられ、腎臓から尿に溶けて排泄されています。
尿酸はからだの中で結晶化します
尿酸は体内でたいへん溶けにくい性質をもっています。そのため、増えすぎてしまった尿酸は溶けきれずに結晶化していきます。この尿酸の結晶がからだのいろいろな部分に沈着して害を及ぼします。
高尿酸血症の成因は?
高尿酸血症の成因は、大きく以下の2つに分けられます。
- もともとの体質から尿酸値が上昇しやすく、それだけでも高尿酸血症となる原発性のものがあり、さらに、食べ過ぎ・飲み過ぎ・肥満・運動不足・ストレスなどがこれを悪化させている場合
- 原因となる他の病気(腎臓病、血液の病気、腫瘍など)や薬(利尿剤など)の副作用で起こる二次性のもの
痛風とは?
痛風は、尿酸の結晶が関節に沈着して起こる病気です。痛風の発作は、関節が赤くはれあがり激しい痛みを伴うのが特徴です。ある日突然起こり、放っておくと1〜2週間くらいでおさまります。しかし、そのままにしていると数年のうちに必ず再発し、だんだん慢性化していきます。
痛風は腎障害の警鐘です
発作がおさまっている間はなんの症状もありませんが、放っておくと尿酸の結晶が関節だけでなく腎臓にも沈着し、腎障害を引き起こします。また、痛風結節といわれる尿酸のかたまりが耳や足の親指、肘の関節などにできたりします。痛風は腎障害の警鐘の役割をしているともいえるでしょう。
高尿酸血症と痛風の関係は?
高尿酸血症が長く続くと結晶化した尿酸が、からだの中でいろいろな悪さをして関節炎を起こします。これが痛風です。したがって、痛風の人は必ず高尿酸血症といえます。逆に高尿酸血症だからといって、必ずしも痛風とは限りません。現在では、健康診断などで成人男性全体の10%程度の人が尿酸値が高いといわれています。
無症候性に気をつけて!
痛風患者さんは激しい痛みを起こしますが、中には「無症候性高尿酸血症」といい、尿酸値が異常に高くてもほとんど自覚症状を感じない人もいるのです。こういう人は治療を怠りがちで、腎不全などの重度の合併症に倒れてやっと気づきます。健診などで早期発見したら、進んで治療を受けましょう。
怖い合併症
高尿酸血症を治療しないで放っておくと、尿路結石や腎障害を引き起こします。そのほかにも高尿酸血症の患者さんは高血圧症、高脂血症などの生活習慣病を合併することが多く、動脈硬化が起こりやすくなるといわれています。また、動脈硬化から心筋梗塞、脳血管障害など重大な病気を起こすこともあります。このように、本当に恐いのはこれら合併症なのです。
尿酸値を下げる薬
尿酸値を下げる薬には2種類あります。 ( )内は当院採用薬
- 尿酸の排泄を促進する薬(ユリノーム)
- 尿酸の合成を阻害する薬(ザイロリック)
どちらの薬が適しているかは、尿検査・血液検査の結果や、基礎疾患、腎臓の排泄機能、アレルギー歴などから医師が判断します。1と2の薬を併用することもあります。
尿酸値を下げる薬を飲んでいると、薬の効果で尿酸値は正常範囲に戻ります。しかし症状がないからといって薬を飲むことを止めたり、勝手に薬の量を減らしたりすると尿酸値はすぐに高くなってしまいます。高尿酸血症の治療は主治医の指示に従って根気よく続けることが必要です。なお、肝障害、血球減少、皮膚炎などの副作用が出ることもありますので、定期的な診療と血液検査は必ず受けて下さい。薬を服用中に、何か異常があったらすぐに医師に相談しましょう。
尿をアルカリ性にする薬
尿酸は、中性〜アルカリ性の尿には溶けやすい性質を持っています。尿が酸性に傾いていると尿酸は溶けにくく、尿路結石の原因になってしまいます。高尿酸血症の患者さんの尿は酸性に傾いている場合が多いので、尿をアルカリ性にする薬(ウラリット)を内服することもあります。
日常生活の注意点
尿酸値を下げる薬には2種類あります。 ( )内は当院採用薬
- 食べ過ぎは要注意。1日の適正カロリーを守る
- 各栄養素のバランスの良い食事を摂る
- 水分を多く摂る(腎臓病や心臓病などで水分制限されている人は、水分制限の摂取量を守りましょう)
- お酒はひかえめに
- 軽い運動をする(激しい運動〔無酸素運動〕は逆に尿酸値を上昇させるので避けましょう)
- 医師の指示通りに薬の服用を続ける
- 定期的に検査を受ける。尿酸値や他の病気の合併、お薬との相性などをチェックしましょう)
上記は一般的な注意となります。基礎疾患により、飲酒、運動、適正カロリー、水分量など異なります。 詳しくは医師に確認しましょう。