朝夕の寒気が身にしみる季節となりました。ご健康にはくれぐれもお気をつけください。
今回のテーマは、便秘についてです。
2008年11月
便秘とは?
排泄(はいせつ)の回数が少ないこと、また、排泄物がお腹の中に滞っていることです。しかし、毎日、便通があったとしても、苦痛、残便感があると便秘といえます。その逆に、毎日、便通がないとしても、苦痛と感じなければ便秘とはいえません。
便秘の種類
機能性便秘
消化器官(胃、小腸、大腸など)の機能が低下したために起こる便秘です。一般的に便秘と呼ばれるのは、 機能性便秘のことです。
機能性便秘はさらに、弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘に分けられます。
弛緩性便秘
大腸の筋肉がゆるんで、便を外に出そうとする腸の「ぜんどう運動」が弱くなったために起こる便秘です。
痙攣性便秘
心理的ストレス等により、自律神経が乱れ、腸のぜんどう運動が強くなりすぎて起こる便秘です。このタイプの人は、下痢と便秘を交互に繰り返して起こる場合があります。
直腸性便秘
本来持っている「便意を脳に伝える力」や「便を押し出す力」が弱くなって起こる便秘です。便意をがまんすることが習慣化して起こる場合があります。
器質性便秘
腸閉塞(ちょうへいそく)、腸捻転(ちょうねんてん)、大腸ガン、腹膜炎など腸の腫瘍、閉塞、炎症などにより腸の通りが悪くなるために起こる便秘と、腸の長さや大きさの異常によって起こる便秘があります。
自分でできる便秘解消法(食事編)
食物繊維が多い野菜、玄米や雑穀、海藻、まめ、いも、きのこ、果物などを積極的にとりましょう。また、ビフィズス菌は腸内環境を整えるのに有効です。
特に朝にとると休んでいた胃や腸を刺激して排便を促す効果があります。
たくさんとりたい食物繊維
便秘解消に効果的な食品の一番手が食物繊維。日常の食事を通してたくさんとるよう心がけたいものです。成人の場合、1日当たり20〜25gぐらいとるのが効果的といわれています。
「食べているのに便が出ない人」など
保水性に富んだ食物繊維(水溶性食物繊維)は腸内で水分を吸着するため、便を柔らかくして、排泄しやすくします。特に、海藻類(コンブ、ワカメ、ヒジキ)、コンニャク、果物類などに含まれる水溶性食物繊維には、便に水分を溜める作用があり、その結果、腸内の善玉菌を増やす働きがあるため、便秘改善には進んで取り入れたい食品です。
「小食の人やダイエットをしている人」など
穀類(そば、ライ麦)、マメ類(大豆、あずき)、野菜類(ゴボウ、切干ダイコン)、イモ類、キノコ類などに含まれる不溶性食物繊維を多く摂って便のかさを増やしましょう。ただし、不溶性食物繊維だけを摂りすぎると便が硬くなってしまいます。水溶性食物繊維と水分を組み合わせることで、排便をスムーズにすることができます。
食物繊維を多くとることも大切ですが、まず、どの食品もバランスよくとることが快便につながる道なのです。
自分でできる便秘解消法(生活編)
便秘の原因のひとつは、忙しさのあまり便意を感じてもトイレでゆっくり力む暇がないことです。これを繰り返していると、だんだん便意を感じにくくなり、せっかく出るものも出なくなってしまいます。
- 規則的な排便の習慣をつけることが大切
毎日時間を決めて一定時間トイレに入ることを心がけましょう - がまんは大敵!
便意をもよおしたときはがまんせずにトイレにいきましょう。便意がなくなると排便する機会を失います - ストレスも便秘の原因
スポーツをしたり趣味に没頭したりしてストレスを溜め込まないようにしましょう
自分でできる便秘解消法(運動編)
腹筋呼吸&こまめに身体を動かす習慣を!
1日20分くらい歩いてみる、エレベーターは使わないようにする、ストレッチングや屈伸運動をするなど、日常生活の中でこまめに身体を動かすように意識しましょう。
また、1日に何回か、お腹で呼吸する腹式呼吸をするのも効果的です。最初は仰向けに寝て、お腹に息を送り込むように意識してみましょう。慣れてきたら、仕事や家事の合間などに3〜5分くらい行い、1日何回でも良いです。
おなかをのばしてマッサージ
寝る前、起きがけにできるお腹の簡単なストレッチング
- 腰の下に枕かクッションをあてて仰向けに寝て、お腹の腹筋を伸ばす感じにリラックス
- さらに、手のひらでお腹の周りを時計回りに軽くマッサージすると、大腸のぜんどう運動にも刺激を与えることができる。3〜5分程度で良いです
初心者向き腹筋運動
A.足上げ運動
- 両足をのばして座り、手を少し後ろにつく
- 両足をまっすぐそろえてのばしたまま、床から30cmくらいゆっくり持ち上げる
- そのまま10数えてから足をゆっくりおろす(最初は10より少なくてもかまわない)
これを最初は1セット2〜3回繰り返し、慣れたら回数を増やす。1日に2〜3セットくらい行う。
B.腰を痛めない腹筋運動
- 仰向けに寝て、足を肩幅くらいに開いて両ひざを立てる
- お腹に手をあてながらゆっくり肩と頭を上げて行く。視線はおへそのあたりに
- お腹の筋肉に力が入ったのを感じたらストップ
- そのままの姿勢で10〜15秒自然に呼吸する
これを7〜10回、朝晩に行う。
C.お腹を伸ばしたりひねったりする運動
- 仰向けに寝て、両ひざを立てる
- 両手を真横に広げ、息を吐きながら腰を上げて行く。そのままの姿勢で約15秒間自然呼吸。これを7〜10回繰り返す
- 1.の姿勢から、真横に両ひざを倒し、そのままの姿勢で約15秒間自然呼吸。次に反対側にひざを倒して同じようにする。交互に7〜10回くらい行う
こんな便秘は病院に受診しましょう
「便秘解消のために生活習慣を変えてみたけれども、ちっとも効果がない」「便秘以外にも嘔吐感、発熱など心配な症状がある」「思い当たることがないのに急に便秘になった」「便に血液が混じっている」「便が白っぽい」などの場合、他の病気が原因の便秘ということも考えらます。そういった人は、病気の治療が先決。病院で検査を受けてみてください。
便秘になってしまう病気の例
腸閉塞、腸捻転など
腸がつまったりねじれたりする病気。放っておくと腸が腐ってしまいます。急な便秘と激しい腹痛があります。
大腸がん・ポリープ
大腸の内壁にコブのような腫瘍ができ、便の通りを悪くします。便に粘液や血液がついていたり、異常に細い便が出ることが多いです。
潰瘍性大腸炎など
大腸の粘膜に炎症を繰り返す病気です。この病気でできた炎症の跡がコブのようになり腸を細くして、便の通りを悪くすることがあります。
結腸過長症
体質的に腸全体が異常に長い人などがいます。この場合も便秘を起こしやすいです。
その他
その他にも、大腸の一部が炎症をおこしたり、お腹の中の臓器に腫瘍ができて大腸を圧迫して便秘を起こすこともあります。また、腫瘍以外でも、妊娠して子宮が大きくなることによって便秘を起こすこともあります。
便秘薬
生活習慣を改善しても便秘が続く場合は薬を用いるのも一つの方法です。
主な便秘薬の種類
種類 |
作用 |
当院での薬剤 |
浣腸 |
おしりの肛門部に、液体を入れて、腸の壁の面をすべりやすくし、また、腸を刺激し、腸の動きを活発にして、便を出します |
・ケンエーG浣腸 |
刺激性下剤 |
腸粘膜を刺激し、腸のぜんどう運動を促進します |
・ テレミンソフト坐薬 |
塩類下剤 |
腸の中の水分の再吸収を防ぎ、腸の内容物をやわらかくし、増大させることでぜんどう運動を促進します |
・ 酸化マグネシウム |
漢方 |
患者様個々の体質・体格や慢性、急性等、様々な状態に応じて処方されます。 |
・ 防風通聖散 |