明るく澄んだ冬晴れの日々が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
今回のテーマは、脂質異常症(高脂血症)についてです。
2009年01月
コレステロールについて
コレステロールはいわゆる「脂(あぶら)」ですが、人間の身体を形成している細胞膜の構成成分としての役割があり、とても重要なものです。
また、コレステロールは肝臓で作られる胆汁酸や副腎で作られるステロイドホルモンなど、生理的に必要なもとになっています。
コレステロールには「善玉」と「悪玉」があります
「善玉」、「悪玉」のコレステロールにはそれぞれ役割があります。
「悪玉」と呼ばれる「LDLコレステロール」には、肝臓で作ったコレステロールを体の各部へ運ぶ役割があります。また、「善玉」と呼ばれる「HDLコレステロール」には体の各部で余ったコレステロールを肝臓へもどす役割があります。
ところが、LDL(悪玉)コレステロールが増えすぎると、血管の壁に必要以上にコレステロールがたまってしまい、血管の動脈硬化を進行させてしまうことになります。
これが、LDLコレステロールが「悪玉」と呼ばれるゆえんです。
LDL(悪玉)コレステロールは、血液中に増えすぎると、血管壁に入り込み、そこで酸化され、「酸化LDL」となります。この「酸化LDL」はマクロファージという細胞に取り込まれて、血管の壁にプラークと呼ばれるこぶをつくります。このこぶがどんどん大きくなると血管壁が厚くなって血管が狭くなり、血液が流れにくくなります、これが動脈硬化です。
LDLコレステロール値が高いのに、自覚症状がないからといって放置しておくと、知らぬまに血管では動脈硬化が進行してしまい、とても危険です!!
脂質異常症とは?
血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が過剰な状態またはHDL(善玉)コレステロールが少ない状態を脂質異常症(高脂血症)といいます。
この脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、その危険性に気づかないことが多く、気づいたときにはもう手遅れの場合もあるのです。 脂質異常症の状態が続くと動脈硬化は進展していきます。そして動脈硬化によって、血液の流れが滞ったり、血管がダメージを受けたり、最後には狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを発症することになってしまうのです。脂質異常を放っておくと、突然、命にかかわる重大な事態になることもありえるのです。
あなたのコレステロール値はどれくらい?
脂質異常症と診断される基準値はガイドラインで次のように決められています。
脂質異常症の診断基準値
LDL(悪玉)コレステロール ≧ 140mg/dl
HDL(善玉)コレステロール < 40mg/dl
トリグリセライド(中性脂肪) ≧ 150mg/dl
あなたの危険因子と脂質管理目標値をセルフチェック!
※ コレステロール値は生活習慣などで、すぐに変化します。一度下がったからといって、もう大丈夫というわけではありません。
危険因子が増えるとリスクもアップ!
動脈硬化が原因で起こる心筋梗塞、狭心症や脳梗塞はLDLコレステロールのほかにも様々な危険因子があります。加齢、高血圧、糖尿病、喫煙などに加えて、家族が心筋梗塞、狭心症にかかったことがある人も注意が必要です。LDLコレステロールが高く、さらにこれらの危険因子を重なって持っているほど、心筋梗塞・狭心症や脳梗塞などを引き起こすリスクが高くなります。リスクが高い人は、より厳格にLDLコレステロールの管理をすることが必要です。
脂質異常症の治療
脂質異常症の治療は、長年の生活習慣を改善すべく、まずは禁煙、食事療法と運動療法、適正体重を維持することを生活に取り入れることからはじまります。食事療法、運動療法などで脂質管理目標値とならない場合は次の段階である薬物療法へと進みます。
※動脈硬化性疾患の発症リスクの高い人(すでに心筋梗塞、狭心症などにかかったことのある人など)は、食事療法・運動療法と同時に薬物療法が考慮されます。主治医の指示にしたがって、治療に取り組みましょう
食事療法
- 過食や糖分の摂取を控え、摂取カロリーを減らしましょう
- コレステロールを多く含む食事を控えましょう
- 動物性脂肪の割合を減らし、植物性脂肪を多くとるようにしましょう
- 繊維分を多く含む野菜などをたくさん食べるようにしましょう
- アルコールを制限しましょう
- 肉類よりも魚類をたくさん食べるようにしましょう
※バランスのとれた食事を心がけましょう
運動療法
毎日行える無理のない有酸素運動(1日30分以上の早足歩行など)が良いとされています。
※冠動脈疾患患者、呼吸器疾患患者、間欠性跛行患者、心血管系疾患のリスクが高い者や高齢者は注意が必要です
薬物療法(当院での薬)
高脂血症治療薬には、その作用機序などからいくつかのグループに分けられ、医師が高脂血症のタイプと患者さんの状態によりどの薬を投与するかを決めています。
※医師の指示に従って継続して服用してください!