新緑のきれいな季節になりました。気温もぐんぐんあがって夏の気配が感じられる今日このごろです。
今回のテーマは、バセドウ病についてです。
2009年05月
バセドウ病とは?
バセドウ病は、甲状腺に刺激を与える抗体が体の中でできてしまうことによって起こります。抗体とは本来細菌などの異物に対して作られて、体を守る役目を持っています。甲状腺は自分の体の一部ですから、甲状腺に対する抗体ができることは異常なことです。このように自分の体に対する抗体を自己抗体と呼び、バセドウ病も自己抗体によって起こる病気です。自己抗体で刺激された甲状腺は、必要以上の甲状腺ホルモンを作り、甲状腺機能亢進症の症状を生じます。
症状は
動悸・息切れ・指先のふるえ・暑がり・汗かき・疲れやすい・体重減少・微熱・イライラ・下痢・月経不順などの症状が起こります。また、自己抗体が眼窩の脂肪を刺激して脂肪が増えるため眼球が押し出され眼球が突出するなどの症状がでることがあります。
甲状腺ホルモン
甲状腺は、平たく小さい臓器で、のどぼとけより下にあり、気管の前面に付着しています。正面から見ると蝶の形に似ています。
甲状腺は食物などに含まれるヨード(ヨウ素)を主原料として、甲状腺ホルモンを合成し分泌しています。 食物として摂取された蛋白質、脂肪、炭水化物は代謝されて、身体の組織を作るのに利用されたり、エネルギーになったりしますが、甲状腺ホルモンには、こうした新陳代謝の過程を刺激したり促進したりする作用があり成長期には体の成長や骨格の発達、胎児や乳児では脳の発達にも関わります。そのためこのホルモンが足りないと身長の伸びが悪くなったり、知能発達が遅れたりします。また、自律神経、身体的・精神的活動の調節を行なうのもこのホルモンの重要な役割です。
甲状腺ホルモンの調節機構
甲状腺は脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって甲状腺ホルモン分泌の調節を受けています。甲状腺ホルモンの分泌が低下し、血液中の甲状腺ホルモン濃度が低下すると、脳下垂体はそれを感知して甲状腺刺激ホルモンをたくさん分泌します。
反対に血液中の甲状腺ホルモン濃度が上がりすぎると脳下垂体はそれを感知して甲状腺刺激ホルモンの分泌を減らします。これをネガティブフィードバックといいます。
これらお互いの刺激と抑制作用によりホルモン分泌の調整がなされ、私たちの血液中のホルモン濃度は一定に保たれています
甲状腺ホルモンについて
甲状腺ホルモンには、2つの種類があります。サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)です。大部分は、血清蛋白と結合していますが、実際に直接、体に働く甲状腺ホルモンは、血清蛋白と結合していない遊離型T4(FT4)と遊離型T3(FT3)です。
検査
甲状腺ホルモンに過不足がないかどうかは、血液検査で血液中のTSH、FT4とFT3濃度を測って調べます。 バセドウ病ではFT4とFT3のいずれか一方または両方高値、TSHが低値になります。その他、自己抗体の有無等で判断することがあります。
バセドウ病の治療
バセドウ病の治療には、1内服薬、2手術、3放射性ヨード(アイソトープ)の3つがあります。
どの方法を選ぶかは、その方の症状、年齢、社会的状況等によって変わってきます。
ここでは内服薬による治療について説明します。
バセドウ病の治療に使う薬にはいくつか種類がありますが、中心となる薬は抗甲状腺剤というものです。 当院で使用する抗甲状腺剤は2種類あります(メルカゾール錠およびチウラジール錠)。その他、動悸やふるえを抑えるのにβ遮断薬(インデラル錠)を使うこともあります。
抗甲状腺剤
- メルカゾール錠(成分名:チアマゾール)
- チウラジール錠(成分名:プロピルチオウラシル)
これらの薬は甲状腺ホルモンの合成を抑える作用があり、効果が現れるのに2〜4週間以上かかります。毎日指示された量をきちんと内服しましょう。定期的に血液検査をし、甲状腺ホルモン量を調べて薬の量を減らしたり増やしたりします。また、副作用のチェックも必要となります。
抗甲状腺剤の副作用
薬を安全に使うために副作用の正確な知識を持つことは重要です。以下の事があれば主治医に相談しましょう。
- 発疹・かゆみ:
最も頻度の多い副作用ですが、あまり心配な副作用ではありません。軽い症状であれば発疹、かゆみを抑える薬を内服して様子を見ますが、症状がひどいようなら薬を変えるか、違う治療を選択します - 肝機能異常:
頻度は少ない副作用ですが、起こるとすれば飲み始めて数ケ月以内に起こります。自覚症状がでることはほとんどないのですが、ごくまれに黄疸(皮膚や白目の部分が黄色くなる等)がでてくるものもあります - 白血球減少:
頻度は少ない副作用ですが、注意が必要な副作用です。 白血球は、バイ菌(細菌)を退治して体を守る役割を持っています。もし、この副作用がでると体を守る機能が落ちてしまい、発熱、喉の痛み、全身倦怠感が出てきます。このような症状が出たときには、すぐに薬を飲むのをやめて来院してください。この副作用はやはりお薬を飲み始めて数ケ月以内に起こることが多いのですが、稀にそれ以後に起こることもありますので、定期的なチェックが必要となります
以上のように、抗甲状腺剤にはいくつかの副作用がありますが、注意して使用すれば副作用が起きても適切な処置ができます。過度の心配はせず、規則的にお薬を内服し、何かあれば主治医に相談してください。