日に日に暑くなってきました。体調を崩さないようお気をつけください。
今回のテーマは、C型慢性肝炎についてです。
2009年07月
C型慢性肝炎とは
現在日本では、毎年3万人以上の方が肝がんで亡くなっています。肝がんの原因の約80%はC型慢性肝炎によるものです。
C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルスの感染により肝臓の働きが悪くなる病気です。C型肝炎ウイルスに感染すると、体はそれを排除しようとしてウイルスを攻撃します。そのときに肝細胞を一緒に破壊してしまうため肝臓に炎症がおこり、肝炎になります。初期にはほとんど症状はありませんが放置しておくと、長い経過のうちに肝硬変や肝がんに進行しやすいことが知られています。
病気の進行を食い止めるためにも、早期発見、早期治療が大切です。
感染経路
C型肝炎ウイルスは体液や血液を介して感染します。感染している人の血液が他の人の血液の中に入ることで感染しますが、空気感染や経口感染はありません。現在わが国の感染者の多くは、C型肝炎ウイルスが発見される前の輸血や血液製剤、あるいは注射針が使い捨てになる前の注射針の使い回しなどで感染したものと考えられています。現在ではこのような原因で新たに感染することはほとんどありません。問題になるのは、ピアスや入れ墨、覚せい剤などの回し打ち、あるいは不衛生な状態での鍼治療などです。また、性交渉による感染や母から子への感染(母子感染)はごくまれとされています。
C型慢性肝炎の検査と診断
C型肝炎ウイルス感染の有無は、まずC型肝炎ウイルス抗体※1(HCV抗体)を測定して調べます。抗体陽性は過去にC型肝炎ウイルスに感染したことを意味しますが、既にウイルスが排除されている場合もあります。そこでウイルス遺伝子(HCV RNA)定性検査を行い、感染が持続しているかどうかを確認します。HCV RNA定性検査が陽性でAST(GOT)とALT(GPT)※2に異常があれば、C型慢性肝炎と診断されて治療することになります。HCV RNAが陽性でも肝機能の異常がみられない場合は、経過をみるのが一般的です。
- ※1 HCV抗体
細菌やウイルスに感染した際に、身体にとって異物と認識する免疫反応により作られる蛋白質 - ※2 AST(GOT)とALT(GPT)
肝臓の細胞に含まれる酵素で、肝炎があると肝臓の細胞が壊れて血液中に流れ出し、血液中の値が高くなります。
AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ。GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)ともいう
ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ。GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)ともいう
ウイルスの種類
C型肝炎ウイルス(HCV)の種類はジェノタイプとセログループという2つの分類方法があります。ウイルスの種類によって治りにくい場合があります。
肝臓の働きや状態を調べる
主な血液検査
AST(GOT)・ALT(GPT)
肝臓に炎症があると上昇します。
AST(GOT)値に比べALT(GP)値が高いと肝硬変であること多く、慢性肝炎ではその逆であることが多い。
*肝硬変疑い:AST(GOT)/ALT(GPT)比 2.0以上(肝炎0.6前後)
血小板
血小板は血液成分の1つで、肝炎や肝硬変の進行とともに数が減少する。
*肝硬変疑い:血小板 10万/mm3以下
画像検査
エコー(腹部超音波)検査
超音波をおなかのうえから照射して、体の内部を画像としてみます。
CT(コンピューター断層)検査
X線を照射して、コンピューターで肝臓を輪切りにした画像が得られます。
MRI(磁気共鳴)検査
強い磁力をかけて、体の内部をコンピューターで画像化してみます。
C型慢性肝炎の治療
治療目標
- C型肝炎ウイルスを体内から完全に排除する(原因療法)
- 肝臓の炎症を抑えて病気の進行を遅くする(対症療法)
治療方法
原因療法
インターフェロン(注射)
インターフェロンは本来私たちの体の中でつくられるたんぱく質で、ウイルスの増殖を抑える働きをもっています。これを薬として体にたくさん入れることで治療するものです。週3回以上注射することで効果が期待できます。
当院薬 : アドバフェロン皮下注1200、1800 / イントロンA注射用1000、600 / スミフェロンDS300、600 / フェロン
ペグインターフェロン(注射)
インターフェロンに‘ペグ’を結合させることによりインターフェロンを血液中に長く留まらせ、週3回の投与が必要だったインターフェロンを週1回の投与で済むように改良されたものがペグインターフェロンです。
当院薬 : ペガシス皮下注90μg、180μg / ペグイントロン皮下注50μg/0.5ml、100μg/0.5ml
リバビリン(内服)
リバビリンはウイルスを攻撃する薬です。リバビリンのみでは効果はみられませんが、インターフェロンやペグインターフェロンと同時に使用することにより、さらに強くウイルスを攻撃する作用が期待できます。治療期間中毎日1日2回、朝食後と夕食後にのむ薬です。体重に応じて1日服用量は異なります。
飲み忘れた場合は次の服用分から再開します。飲み忘れた分を合わせて一度に服用してはいけません(一度に2回分を服用してはいけません)。
当院薬 : コペガス錠200mg / レベトールカプセル(200)
インターフェロン治療を受ける場合は、ウイルス量やウイルス遺伝子のタイプ(ジェノタイプ)によって治療方法が異なります。
初めてインターフェロン治療を受ける場合
過去にインターフェロン治療を受けたことがある場合
初めてインターフェロン治療を受けたときの効かなかった原因をよく調べたうえで、完全な治癒を目 的とする治療を行うのか、肝硬変や肝がんに進行するのを抑えるためにALT値とAFP値の正常化や安定化をはかる治療を行うのか、治療法が検討されます。
ペグインターフェロン・リバビリン併用療法のよくみられる副作用
- 注射部位の腫れやかゆみ
- インフルエンザのような症状(熱がでる、頭が痛い、体がだるい、関節が痛い)
- 消火器症状(おなかが痛い、食欲がない、吐き気がする)
- 皮膚症状(発疹、かゆみ)
- 脱毛
これらの副作用のほとんどは一時的です。
ペグインターフェロン・リバビリン併用療法の特に注意が必要な副作用
- うつ状態などの精神神経症状(不眠が続く、イライラする)
- 間質性肺炎(息切れしやすい、乾咳が続く、微熱がある)
- 甲状腺機能異常(動悸がする、汗をかきやすい、むくみがある)
- 心臓の症状の悪化(胸が痛む、ドキドキする)
- 糖尿病の悪化(口が渇く、尿量が増える、体重が減る)
- 網膜症(ものが見えにくい、目がチカチカする目が痛い)
症状があればできるだけ早く医師に連絡してください。
その他、症状のでない副作用
貧血(ヘモグロビン減少)、血小板減少、好中球減少など血液検査で異常値がでることがあります。自分ではわからない場合が多いので早く見つけるために定期的に検査を受けることが重要です。
対症療法(肝庇護療法)
インターフェロンの少量・長期投与
インターフェロンには、肝臓の炎症を抑えて病気の進行を遅くする働きもあります。
グリチルリチン配合剤(注射)
肝臓の細胞膜を強くすることによって肝細胞の破壊を防ぐ働きがあります。
当院薬 : 強力ネオミノファーゲンシーP20ml
ウルソデオキシコール酸(内服)
肝臓の血液の流れをよくする、あるいは肝臓にエネルギーを蓄積することによって肝機能を改善する作用があります。
当院薬 : ウルソ錠100mg
瀉血
C型肝炎になると、肝臓に鉄分がたまるようになります。この鉄が増えると炎症が悪化するため、血液を取って捨てることを繰り返し、鉄を減らします。
治療中に注意すること
- 自分の判断で薬の量を減らしたり中止してはいけません
- 妊娠する可能性のある女性の患者さん、パートナーが妊娠する可能性のある男性の患者さんは、治療中1年間および治療終了後6ヵ月間の1年半の間必ず避妊してください
- 男性患者さんのパートナーが妊娠または妊娠している可能性のある場合は、必ずコンドームを使用してください
- 万一妊娠した疑いのあるときはすぐに主治医に相談してください
- 多くの副作用は一時的なものですが、症状によっては薬の量を変更しなくてはならない場合があります
- 特に注意が必要な副作用の症状に気づいたら、できるだけ早く主治医に連絡してください
- 自覚症状のない副作用が現れることがありますので、主治医の指示どおり定期的に検査を受けるようにしてください
- 体力保持のために適度な運動やバランスのよい食事を心がけましょう。献血やカミソリ、ハブラシの共用など他の人への感染防止にも注意してください
治療後に注意すること
- 治療終了後6ヶ月目の血液検査で治療の効果を判定します。治療終了後も主治医の指示どおり定期的な検査を受けてください