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土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

朝夕の寒気が身にしみる頃となりました。

今回のくすりの窓では、新型インフルエンザについてとりあげます。

 

2009年春に発生した新型インフルエンザは、全世界に蔓延し、日本でも感染者数が増大しています。感染の防止には、日常からの衛生習慣が大切です。厚生労働省の新型インフルエンザ対策ガイドラインでも具体的な感染対策の一つとして手洗いを挙げています。

 

2009年11月

新型インフルエンザについて

インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる呼吸器感染症の総称です。インフルエンザはその構造上の特性から、A型、B型、C型と大きく3つの型に分けることができます。

新型インフルエンザはウイルスの遺伝子組み換えなどによる突然変異によって発生します。これは本来動物にしか感染しないインフルエンザウイルスがヒトに感染し、人の世界で流行するようになったものです。

主な症状は、39度以上の急激な発熱や咳、のどの痛み、関節痛などで、季節性のインフルエンザと同じです。新型インフルエンザはほとんどの人が免疫を持っていないため、たくさんの人に急激に感染が広がってしまう可能性があります。

現在、日本国内で流行している新型インフルエンザは、慢性呼吸器疾患などの持病がある人は重症化するリスクが高いことが分かっています。また、妊娠中の女性や、乳児、高齢者なども重症化することがあると報告されています。

季節性インフルエンザとの比較

季節性インフルエンザとの比較

予防策について

インフルエンザは、感染している人のくしゃみや咳、つばなどの飛沫と一緒に放出されるウイルスを、のどや鼻から吸い込むことによって感染します。また、飛沫が付着したものを触ることによって、手を介して口や目、鼻の粘膜から感染するケースもあります。

新型インフルエンザは、感染しても軽症の人が多いといわれていますが、軽症だからといって、仕事や学校に行ったり、人ごみの中に入ったりすると、多くの人に感染が広がってしまいます。また、自分は軽症で済んでも、直接的・間接的に、重症化する危険のある人に感染させてしまうことにもつながります。

重症化する危険のある人が、人ごみを避けたり、手洗いやうがいをしたりするなど、自ら予防することはもちろん重要ですが、それ以外の人たちもなるべく感染しないようにすること、感染しても他の人に移さないように配慮することが必要です。

感染を広げないために、一人一人が「感染しない」「感染を拡げない」ことを意識して、予防策を実施しましょう。

手洗いの目的

‘本人および周囲への感染の予防’が手洗いの目的です。流水と石鹸による手洗いは付着したウイルスを除去し、感染リスクを下げます。また、60〜80%の濃度のアルコール製剤に触れることによってウイルスは死滅します。目に見える汚れは流水と石鹸で洗い、目に見える汚れがない場合は手指消毒剤を用い消毒を行ないます。

手洗いのタイミング

  1. 帰宅時
  2. トイレの後
  3. 食品を取り扱うとき
  4. 食事の前
  5. 咳やくしゃみを手で押さえた後
  6. ケアの前後

手の洗い方

  1. まず手指を流水で濡らします
  2. 石鹸を適量手の平にとりだします
  3. 手の平をこすり合わせよく泡立てます
  4. 手の甲をもみ洗います
  5. 指を組んで両手の指の間をもみ洗います
  6. 親指を包みもみ洗います
  7. 指先を反対の手の平でもみ洗います
  8. 両手首まで、丁寧にもみ洗います
  9. 流水でよくすすぎふき取ります

手指消毒の仕方

  1. 手指消毒剤を適量手の平にとります
  2. 手の平をこすり合わせます
  3. 指先、指の背を反対の手の平でこすります
  4. 手の甲をこすります
  5. 指を組んで両手の指の間をこすります
  6. 親指を包み、ねじりこすります
  7. 両手首まで丁寧にこすります
  8. 乾くまですりこみます

新型インフルエンザに使われる薬

ウイルスが増えるのを防ぐ経口剤と吸入剤があります。どちらの薬も、ウイルスが増えてしまった後ではあまり効果が見られないといわれており、症状が発現してから48時間以内に開始する必要があります。

  • タミフル(経口剤)
  • リレンザ(吸入剤)

抗インフルエンザ薬で気をつけること

タミフル

タミフルは重大な副作用として、異常行動や意識障害があげられます。

■異常行動

普段と違うとっぴな行動をとる、うわごとを行ったり興奮したりする、意識がぼんやりする、意識が無くなる、幻覚が見える、妄想、痙攣等です

しかし、インフルエンザウイルスによるインフルエンザ脳症などでも同様の症状があわられることがあります。インフルエンザウイルス感染症と診断され治療を開始した後は、タミフル服用の有無に関わらず、異常な行動に十分注意して下さい。

また、異常行動の発現のおそれがありますので、少なくとも2日間、保護者の方は、お子様がひとりにならないようにご配慮をお願いします。

リレンザ

リレンザは吸入剤であり、気道感染部に直接作用し、全身への影響が少ないとされています。

タミフル同様、A型、B型両方のインフルエンザに効きます。

吸湿性があるため、吸入直前に開口し、吸入器具を平行に保ちましょう。1度で吸入し切れなかった場合は、もう一度吸入してください。 不明な点があれば薬剤師に相談して下さい。

また、インフルエンザ脳炎、脳症の解熱にはアスピリン、ジクロフェナク、メフェナム酸といった市販で売られている解熱剤を服用することが禁忌とされています。インフルエンザが疑われるような症状が出た場合は自己判断で市販の薬を汎用しないように気をつけてください。