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土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

大寒を迎え、いよいよ冬将軍が到来する時期となりました。

今回のくすりの窓では、糖尿病についてです。

 

糖尿病の患者様は年々増加しており、現在890万人の方が糖尿病であるといわれていますが、糖尿病予備軍の方も含めると、2000万人を超えています。これは日本人の約6人に1人が糖尿病に罹患しているか糖尿病予備軍であることになります。

また、11月14日は「世界糖尿病デー」に指定されており、東京タワーや鎌倉大仏、通天閣などを「世界糖尿病デー」のシンボルカラーである青にライトアップし、糖尿病の予防、治療、療養を喚起する啓発活動が展開されています。広島でも、アーバンビューグランドタワーや福山城がライトアップされました。

 

2010年01月

糖尿病について

血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高い状態、つまり「高血糖」が慢性的に続く病気を糖尿病といいます。血糖値が高いと尿に糖が排泄されます。糖尿病という病名は、この現象から名づけられたものです。高血糖の原因は、エネルギー源であるブドウ糖を細胞に取り込むときに必要な「インスリン」というホルモンの作用が低下して、ブドウ糖が血液中にあふれるためです。インスリンの作用が低下する原因として、遺伝的な要因や加齢、生活習慣の欧米化などがあげられます。高血糖状態を放置して治療せずにいると血管障害が起きて、合併症を引き起こします。

糖尿病の分類

糖尿病は発病の原因による分類で大きく分けて「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があります。

1型糖尿病

自己免疫疾患(免疫機能が自分のからだに対して働いてしまう病気)などで、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されて発病するタイプの糖尿病です。生活習慣とは関係なく発病し、日本人では、成人よりも小児・若年期に発病することが多いのが特徴です。

2型糖尿病

遺伝的な要素に肥満、過食や運動不足、ストレスなどが加わり発病するタイプの糖尿病です。

血糖コントロールの指標と評価

血糖コントロールは合併症の発症、進行しやすさと密接に関係していて、より良い血糖コントロールを長く続けるほど、合併症の発病・進行を抑える事ができます。血糖コントロールの指標として用いられるHbA1Cは検査の時点から過去1〜2カ月間の血糖状態を反映します。

血糖コントロールの指標と評価

運動療法

糖尿病を引きおこす誘因や悪化の主な原因は肥満、過食と運動不足です。運動はインスリンの感受性を改善して、血糖コントロールを良好にします。しかし、患者さん個々に合わせて行なう必要があるため、必ず主治医の先生と相談し、無理のないように行ないましょう。運動療法には以下のような効果があります。

  1. ブドウ糖の消費が増え血糖値を下げる
  2. インスリンを効率よく利用できる
  3. 脂質代謝を改善し動脈硬化を抑える
  4. 血液の循環を良くする
  5. ストレスの解消と規則正しい生活のよりどころになる
  6. 基礎代謝を上げ太りにくい身体をつくる

食事療法

先程も述べたように、糖尿病を引きおこす誘因や悪化の主な原因は過食と運動不足です。バランスよく栄養を摂取し、血糖をコントロールすることが大切です。一日に必要なエネルギー量は患者さん一人一人異なります。したがって食事療法は自己流ではなく、栄養士さんの指導を受けてから行なってください。

糖尿病の四大合併症

高血糖状態が続くと、合併症を引き起こします。以前は「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」の3つで『三大合併症』といっていましたが、近年『三大合併症』に「動脈硬化性疾患」を加えた4つの合併症を『四大合併症』と呼んでいます。

糖尿病神経障害

神経障害の主な症状として…

  • 足の先がしびれたような不快な感じ
  • 足の裏に何かが張り付いたような感じ
  • 砂利やゴムマリの上を歩く感じ
  • 睡眠中によく足がつる(こむらがえり)
  • 足先がピリピリと痛む
  • 下痢や便秘を繰り返す
糖尿病網膜症

網膜症の初期症状は、網膜に栄養を送っている細小血管が障害され、網膜に小さな出血、毛細血管瘤や白いしみ(白斑)がみられます。自覚症状が無いからといって放置しておくと、血管が詰まって血液が流れなくなります。そして、新しい血管が作られますが、この血管は大変もろく、ちょっとした衝撃があったり、血圧が上がるとすぐに破れ出血を起こして、視力の低下や失明につながる場合もあります。網膜症は早いうちであれば大きな視力障害もなく治療できるので、自覚症状がなくても眼科での定期健診を欠かさず受けるようにしましょう。

糖尿病腎症

腎臓は血液中の老廃物をろ過し尿として排泄する臓器です。高血糖により腎臓の血管が傷つけられると、ろ過機能が徐々に低下し、不要なものが血液中に溜まったり、逆に必要なものが排泄されてしまいます。腎症が進行すると、最終的には透析療法が必要になります。現在、国内で毎年1万数千人が糖尿病腎症により新たに透析を始めていて、これは透析療法が必要になる原因の第1位です。

動脈硬化性疾患

動脈の血管壁にコレステロールがたまったり、石灰が沈着することで血管壁が硬く厚くなり、血管が狭くなることを動脈硬化と言います。心筋梗塞や脳梗塞原因にもなり、また、壊疽から下肢切断にいたることもあります。

それぞれの合併症の発病時期は人それぞれ異なりますが、血糖コントロールが悪い状態が続くと、0〜5年で神経障害、7〜8年で網膜症、10〜13年で腎症が発病するといわれています。

薬物療法

食事療法、運動療法を行なっても血糖コントロールが不十分な場合、薬物療法となります。薬により血糖値をコントロールすることで合併症を防ぐことができます。

糖尿病の薬には血糖を下げる飲み薬とインスリン注射があります。患者さんの病状や糖尿病型によって用いる薬が異なります。

内服薬
スルホニル尿素剤

膵臓に働きかけインスリンの分泌を増やすことで血糖値を下げる薬です。

  • アマリール1mg錠
  • アマリール3mg錠
  • ダオニール錠1.25mg
  • ダオニール錠2.5mg
  • グリミクロン錠40mg
  • ラスチノン錠0.5g
速効型インスリン分泌促進剤

食事のすぐ前に飲むことで、膵臓からのインスリンの分泌を増やし、食後の高血糖を改善する薬です。

  • ファスティック錠30mg
  • ファスティック錠90mg
  • グルファスト錠10mg
α―グルコシダーゼ阻害剤

糖質の消化・吸収を遅くすることにより食後の急激な血糖の上昇を抑える薬です。

  • ベイスンOD錠0.2mg
  • セイブル錠50mg
インスリン抵抗性改善薬

インスリンの効きをよくすることによって血糖を下げる薬です。

  • アクトス錠15mg
ビグアナイド剤

筋肉、脂肪組織、肝臓に働いて血糖を下げる薬です。

  • メデット錠250mg
インスリン注射

不足しているインスリンを注射によって体の外から補給して血糖値を下げる治療法です。以前はインスリン療法は最終手段、末期の糖尿病であるというイメージがあったため、現在でもインスリン療法が始まると、症状が悪化してきたのだと誤解されやすいのですが、重症度と直接は関係ありません。膵臓の負担を軽減させるために、早期に導入することが多いのが現状です。インスリンは作用時間によりいくつかのタイプに分かれています。ペン型、バイアル型などインスリン製剤にもいくつかあります。

当院採用のペン型タイプのインスリンには以下のようなものがあります。

  • 超速効型
    ノボラピッド注フレックスペン、ヒューマログミリオペン
  • 速効型
    ノボリンRフレックスペンなど
  • 中間型
    ノボリンNフレックスペンなど
  • 混合型
    ノボリン30Rフレックスペン、ヒューマログミックス25ミリオペンなど
  • 速効型
    ランタス、レベミル

低血糖

低血糖とは血液中のブドウ糖が少なくなりすぎた状態をいいます。低血糖は危険な状態です。低血糖については、患者さん自身が低血糖の症状とその対策をよく理解する必要があります。

低血糖になると、空腹感・冷や汗・ふるえなどが起こります。ただ、症状の発現は個人差がありますので、早く自分の低血糖の症状の特徴を知っておくことが大切です。

低血糖になったときはすぐに糖を摂取しましょう。ただしベイスンやセイブルを飲んでいる場合はブドウ糖を10〜20g摂取しましょう。(砂糖などブドウ糖が含まれていないものでは効果が不十分です)。また、意識がなくなってしまうなど本人には対処しようがない状態がおきることもあります。

家族や周りの方も一緒に注意し、症状やその対策について認識することが大切です。