寒さも緩み一雨毎に春めいて参りました。
今回のテーマは 痛風・高尿酸血症 です。
2010年03月
痛風とは
「風が吹いても痛い」とよく言われる痛風は、男性の患者さんが多い病気です。かつては50歳代であった痛風発作年齢の若年化も認められ、近年では20〜30歳代の若年発症の増加がみられます。ある日突然、足の親指のつけ根(この部位に症状が出る人が最も多い)に痛みがあるのが初期症状です。
しかし、この痛みは7〜10日で軽快し次の発作までは全く無症状であるため、患者さんの中には「治った」と勘違いして治療を受けずに放置してしまうケースもあるようです。治療をはじめないと、また痛みの発作が起こり、その後は発作のサイクルがどんどん短くなっていくのが特徴です。
しかも、痛風は、体内の異常事態を知らせるシグナルでもあり、放置すると腎障害や肝臓病、糖尿病などを併発しかねない病気でもあります。
尿酸と痛風
食生活と深い関わりのある痛風は、血液中に「尿酸」という物質が増えてしまうことによって起こります。尿酸は、健康なときには液体に溶けた形で存在していますが、これが過剰に増えてしまうと針状の結晶になって体のいろいろな場所に沈着します。とくに関節などに沈着した場合に激しい痛風発作を起こします。
「痛風」では多くの場合足の親指のつけ根が痛くなります。それ以外にはひじやひざ、かかと、足の親指以外の関節、くるぶしなどで発作が起こり、最初の発作では足の指の関節周辺で起こることが多いと言われています。
尿酸って何
尿酸は体内で「プリン体」と呼ばれる物質が分解されてできるものです。
プリン体は食事からとりこまれるだけではなく、新陳代謝によっても産生されます。そして、肝臓で代謝されて尿酸となります。尿酸は腎臓で老廃物となり、排泄されてしまいます。つまり、人の細胞が生命活動をする中で、その老廃物として尿酸が作られています。
尿酸が増えてしまう原因のひとつは体内で尿酸がつくられ過ぎることです。これは、体内の尿酸合成が多すぎたり、プリン体を含む食べ物を摂り過ぎてしまうからです。
もうひとつは尿酸の排泄がうまくいかず、たまってしまうことです。
健康な人の場合は常に約1,200mgの尿酸が蓄積されています。そのうち半分以上の尿酸が毎日入れ替わっています。排泄される尿酸のうち、4分の3は尿として、残りは汗や便として排泄されます。しかし、この排泄がうまくいかなくなるとバランスが崩れてしまい、尿酸が体内にたまってしまうのです。
プリン体って何に多いの?
食品100g当たりプリン体200mg以上含むものを高プリン食といい、動物の内臓、魚の干物、乾物など以下の表のようなものがあげられます。プリン体の多いものを食べ過ぎないように気をつけましょう。
また、ビールはプリン体を多く含みます。ビールの飲みすぎにも気をつけましょう。
極めて多い
鶏レバー、マイワシ干物、イサキ白子、アンコウ肝酒蒸し、カツオブシ、ニボシ、干ししいたけ
多い
豚レバー、牛レバー、カツオ、大正エビ、マアジ干物、サンマ干物
生活を改善しましょう
- 肥満を解消しましょう
- 食事の改善をしましょう・・・摂取エネルギーの適正化 / プリン体の摂取制限
- アルコールの摂取を控えましょう・・・日本酒1合、ビール500ml、ウイスキーダブル1杯 / 禁酒日2日/週以上
- 適度な運動をしましょう・・・特に有酸素運動が効果的です
- ストレスを解消しましょう
高尿酸血症
尿酸値の平均値は年齢や性別によって多少変動がありますが、性別・年齢を問わず、7.0mg/dl以上になると「高尿酸血症」と呼ばれます。尿酸値は6.0mg/dl以下にするのが望ましいです。
しかし、高尿酸血症だからといってすぐに痛風の発作が出るわけではなく、長年放置しておくと尿酸の結晶が関節などに蓄積して激痛をもたらす痛風になってしまいます。
ちなみに、痛風発作が起きても治療をせずに放っておくと、関節だけではなく関節の周囲や軟骨、皮下組織などにも尿酸の結晶がたまり、「痛風結節」といわれるこぶができます。触っても痛みはないため、気がつかないうちに大きくなってしまうこともあります。
また、尿酸は腎臓から尿として排出されるので、尿酸が増えれば腎臓にも負担がかかります。処理しきれなかった尿酸が結晶化して腎臓の中にたまってしまい、腎障害を起こしてしまう可能性もあります。
検査で尿酸値が高めだと診断されたら、主治医に相談しましょう。
高尿酸血症の成因は?
高尿酸血症の成因は、大きく以下の2つに分けられます。
- もともとの体質から尿酸値が上昇しやすく、それだけでも高尿酸血症となる原発性のものがあり、さらに、食べすぎ・飲みすぎ・肥満・運動不足・ストレスなどがこれを悪化させている場合
- 原因となる他の病気(腎臓病・血液の病気・腫瘍等)などで起こる二次性の場合
合併症
高尿酸血症を治療しないで放っておくと、尿路結石や腎障害を引き起こします。そのほかにも、高血圧や高脂血症、虚血性心疾患などの生活習慣病を合併することが多く、動脈硬化が起こりやすくなるといわれています。
痛風発作の前兆期に飲む薬
痛風発作前兆症状があったり、発作の予感がした時に直ちに頓服し発作を予防できるお薬です。多量に服用すると、腹痛や下痢を起こす場合もありますので、主治医の指示通り服用するようにしてください。
- コルヒチン錠0.5mg
尿酸値を下げる薬
当院には尿酸の排泄を促進する薬と尿酸の合成を阻害する薬の2種類があります。どちらの薬が適しているかは、尿検査・血液検査の結果や、基礎疾患、腎臓の排泄機能、アレルギー歴などから医師が判断します。療法の薬を併用して服用することもあります。
- 尿酸の排泄を促進する薬:ユリノーム錠50mg
- 尿酸の生成を抑制する薬:ザイロリック錠100mg
尿酸値を下げる薬を飲んでいると、薬の効果で尿酸値は下がってきます。しかし症状がないからといって薬を飲むことをやめたり、勝手に薬の量を減らしたりすると尿酸値はすぐに高くなってしまいます。高尿酸血症の治療は主治医の指示に従って続けることが必要です。薬を服用中に、なにか異常があればすぐに医師に相談しましょう。また、発作の前後で尿酸値を変動させてしまうと、発作を誘発したり、増悪する可能性があるので、主治医の指示通り服用しましょう。
尿をアルカリ性にする薬
尿酸は、中性〜アルカリ性の尿には溶けやすい性質を持っています。尿が酸性に傾いていると尿酸は溶けにくく、尿路結石の原因になってしまいます。高尿酸血症の患者さんの尿は酸性に傾いている場合が多いので、尿をアルカリ性にする薬を服用することもあります。
- ウラリット錠
その他
この他に、痛風関節炎に非ステロイド性鎮痛薬やステロイド薬を用いる場合もあります。