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土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

若葉の色が美しい季節となりました。

今回のテーマは 水虫 です。

2010年05月

水虫とは

水虫はカビのひとつである白癬菌が皮膚の角質や爪に感染しておこる病気です。足だけでなく、爪、頭、手のひら、太ももの内側などにも現れます。とくに足の指の間など、温かく湿った場所を好みます。かゆみ、赤み、皮膚が白くふやける、皮がむけるなどの症状が出現するかどうかや、その程度は人によって違います。他の人に感染することもあるため、しっかりと治療する必要があります。

また、水虫患者は高齢者になるほど増えます。その理由は年をとるほど、皮膚が硬く厚くなり、水虫の原因である白癬菌が住みやすくなることや、長年水虫を放置し慢性化させてしまうことなどがあげられます。しかし、最近では若い女性の水虫患者が増えています。これは、ハイヒールやストッキングなど風通しの悪いものを長時間身につける女性が増えていることや、裸足で利用する公共の場が増え、水虫に接する機会が増えていることが原因です。

皮膚と白癬菌

人の皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」という三層構造になっています。その表皮の中で最も深部にある基底層では絶えず細胞分裂を繰り返していて、古くなった細胞は上へ押し上げられ、垢となって剥がれ落ちます。これは表皮のターンオーバー(新陳代謝)と呼ばれる仕組みで、ひとつの細胞が垢となって剥がれ落ちるまでには約1ヵ月間かかります。しかし、白癬菌はこのサイクルと同じ速さ、またはそれ以上の速さで増殖する力があります。

足の裏など、皮膚がちょっと硬くなっている箇所だと、ワンサイクルで約3ヵ月かかることもあるといわれています。このため、一度水虫になると、皮膚を新しいものに入れ替わるまでには最低でも半年、長ければ1年ほどかかると考えられます。この表皮にある垢となって剥がれ落ちる前の角質層は「ケラチン」と呼ばれています。ケラチンは、異物が体内に入ってくるのを防いだり、暑さや寒さなどから内臓を守る役目があるのですが、白癬菌はケラチンが大好きなので、ケラチンがあって高温多湿な場所ならどこにでも寄生します。

水虫ができる場所

頭部白癬

白癬菌は頭に寄生し、白い雲がかかったようになることから「しらくも」とも呼ばれます。思春期以前の髪の短い男子に発生しやすいが、最近では髪を短くする子が減ったことや衛生環境が整っていることなどから、激減しています。

爪白癬

水虫は爪にもできます。爪白癬にかかると爪の先端や両側から白くなったり、爪の中に白い筋が現れたりします。初期段階ではかゆみなどの自覚症状がないため、爪白癬だと気づかずに放置し、爪がボロボロになってしまうこともあります。爪水虫にかかっただけでは自覚症状は殆どありませんが、症状が進んで爪がもろくなってくると、靴を履くときなど痛みを感じる場合があります。

体部白癬

体にできる水虫は、初めはぽつんと湿疹状の隆起がかゆくなり、徐々に10円玉くらいの大きさに広がっていき、健康な部分との境界がはっきりした斑状になります。症状が進むと中心部は自然に炎症が治まるのが特徴です。また、股にできるものは、非常にかゆくなって寝ている間に無意識に掻いてしまい症状が悪化することがあります。

足白癬

土ふまずや足の縁にできるものを「小水疱型」、足の裏全体やかかとにできるものを「角質増殖型」、足の指の間にできるものを「趾間(しかん)型」といいます。

小水疱型

足の裏や側面、趾の腹などに細かな水膨れ(小水疱)ができて周囲が赤くなります。小水疱は日が経つと乾いてカサブタになります。また、小水疱が目立たず、赤くなって皮がむけるだけのこともあります。小水疱ができた時には強い痒みが生じます。夏場に発症する場合がほとんどです。

角質増殖型

足の裏全体がカサカサして厚く硬くなり、ボロボロと皮がむけたり、踵がひび割れてアカギレを起こし痛みを伴うこともあります。冬場に多いのが特徴です。

趾間型

足の指の間(趾間)が赤くなって皮がむけたり、ただれてジュクジュクしたり、皮が白くふやけたりします。白癬菌が高温・多湿を好むことから、夏場に症状が出るのが普通です。かゆみが強いのが特徴ですが、ひどくなると痛みを伴う事があります。

水虫の予防のポイント

@毎日足を石鹸で丁寧に洗おう

白癬菌が皮膚の角質層に住みつくまでには1日くらいかかるといわれているので、仮に白癬菌が皮膚についても足の裏から指の間まできれいに洗い流せば問題ないと考えられます。予防で大切なのは清潔さを保つことです。足、指は毎日石鹸で洗って汚れを落としましょう。特に足の間はしっかりと洗って汚れが残らないように気をつけましょう。

A同じ靴を続けてはかない

できれば数足をローテーションで履くようにしましょう。そして、通気性の良い靴や靴下を選び、脱いだ靴はよく乾燥させましょう。

B足拭きマットやスリッパは別々にしましょう

暖かくて湿気の多い足拭きマットやスリッパは白癬菌の格好の住処です。特に家族に水虫患者がいる場合、供用は禁物です

C家族に水虫患者が複数いる場合は全員治療をしましょう

ひとりが治っても、他に患者がいれば家中に白癬菌をバラ撒かれ続けますので、再感染の危険性があります。

D床掃除はこまめにしましょう

足が清潔でも床や畳、カーペットが汚くては意味がありません。最大の感染源は剥がれ落ちた皮膚ですので床掃除をしましょう。

水虫の治療

まずは医療機関に受診して水虫かどうか確かめてもらうことが重要です。水虫とよく似た症状を示す皮膚病があります。自己判断で水虫の薬を使用して逆に症状が悪化してしまうことがありますので、必ず医師に相談してください。

また、水虫は完治させるまでに時間のかかる病気です。効果的に治療をしていくために以下の点に注意しましょう。

  • 治った、と思っても油断は禁物です。症状が治まったあとも先生の指示がある間は治療を続けましょう
  • 塗り薬は入浴後に塗りましょう。入浴後は皮膚が柔らかくなって薬の浸透性がよく効果的です
  • 薬を塗った手には菌がついているのでよく洗いましょう

「かゆみがなくなった」「見た目では治っているから」と自己判断せず、医師の指示を守り、服薬・通院することが大切です。

水虫の治療薬

当院にある水虫の治療薬

@内服薬

塗り薬による治療の効果、症状の悪化が想定されるような場合には飲み薬が処方されることがあります。

  • イトリゾールカプセル50mg
  • ラミテクト錠125mg
  • クラシエ十味敗毒湯

A外用剤

水虫治療の中心となるのが塗り薬です。薬を直接患部に塗ることで、白癬菌を殺したり、その発育を抑える目的で用います。塗り薬を用いる場合は、まず患部を良く洗い、皮膚表面の汚れを落とすことが大切です。

水虫治療の塗り薬