本格的な夏がやって来ました。
今回のテーマは 気管支喘息 です。
2010年07月
気管支喘息とは
気管支喘息とは、呼吸時に「ゼイゼイ」または「ヒューヒュー」という音(喘鳴)がなったり、発作性の呼吸困難、胸苦しさ、咳などが繰り返し起こる疾患です。最近では成人で約3%、小児で約6%が喘息と推定されています。小児喘息は男子に多く(男:女=1〜1.5:1)、そのほとんどはダニやハウスダストアレルギーが原因(アトピー型ぜんそく)です。大人の喘息は、男女比ほぼ1対1で、その60〜80%が大人になってはじめて喘息になった人たちです。一方、大人の喘息では原因が明確に特定できないことも多いです(非アトピー型ぜんそく)。
発作性の呼吸困難、喘鳴などの喘息症状は、空気の通り道である気道が狭くなるために起こります。喘息患者さんの気道は、外因性(アレルゲン、冷気、煙、化学物質、気象の変化など)および内因性(運動、心理的ストレスなど)の様々な刺激に反応して容易に共作し気流制限が起こります。
気象と喘息
気象の変化は喘息の増悪因子であり、特に急激な気温の変化(前日と比較して気温低下が3℃以上など)があると発作が起こりやすいとされています。季節的には気候が安定した真夏や真冬よりも、春や秋の季節の変わり目、すなわち梅雨時や秋雨のころに多く、移動性高気圧や台風の接近時、寒冷前線が通過するときなどにも発作は多発します。気象の変化の影響を避けることは困難ですが、予防的薬物療法や日常生活に十分な注意を払うことで症状を悪化させないようにすることが重要となります。
喘息の危険因子
喘息の危険因子には「個体因子」と「環境因子」があり、これらが複雑に絡み合って喘息がおこります。
- 個体因子
- アレルギー素因(アトピー)
- 気道過敏性
- 性差:小児では女児より男児に喘息が多くみられますが、思春期になると差がなくなります
- 遺伝子素因:両親に喘息が存在するときの発病リスクは3〜5倍高くなるといわれています
- 環境因子
〈喘息になりやすい人の発病に影響を与える因子〉- アレルゲン:花粉、動物の毛、ラテックス、穀物の粉、木材粉塵、室内塵ダニなど
- ウイルス性呼吸器感染症
〈すでに発病した人に対して増悪させる因子〉
アレルゲンや大気汚染、喫煙など上記の因子だけでなく、気象、激しい感情表現とストレス、疲労、アルコール、肥満、妊娠などがあげられます。
まずは日常生活から
日常生活の中で喘息を引き起こす原因を除去していきましょう。
- 風通しを良くして湿気を防止しましょう
- 布団を天日干しし布団の掃除機がけをおこないましょう
- エアコンのフィルターはこまめに水洗いしましょう
- 薄手のカーテンを良く洗って使用しましょう
- ペットはなるべく飼わず、観葉植物・ぬいぐるみ等もおかないようにしましょう
- 家具の隙間やフローリングは掃除機をしっかりかけましょう
- 手洗いうがいをしっかりしましょう
当院で主に使用する喘息の管理・治療
喘息の管理・治療の目標は、健常人と変わらない日常生活が送れるようにすることです。喘息の治療薬には長期管理のために継続使用する「長期管理薬」と、発作治療のために短期的に使用する「発作治療薬」の2種類に大別されます。同じ薬でも両方に位置づけられる場合もあります。
長期管理薬
- 炎症を抑える薬(副腎皮質ステロイド薬)
- 〈吸入薬〉フルタイド50μgエアゾール
- 〈経口薬〉デカドロン錠0.5mg、プレドニン錠5mg、プレドニゾロン錠1mg
- 気管支を広げる薬
- 〈貼付薬〉ホクナリンテープ1mg、2mg
- 〈経口薬〉メプチン錠50μg、スピロペント錠10μg
- 気管支を広げ、気道の炎症を抑制する薬
- 〈経口薬〉オノンカプセル112.5mg、キプレス錠10mg
- 長時間作用する気管支を広げる薬(テオフィリン徐放製剤)
- 〈経口薬〉テオロング錠100mg、200mg
その他にも抗アレルギー薬を用いる場合もあります。当院で気管支喘息に用いる抗アレルギー薬は以下のようなものがあります。
ケタスカプセル10mg、リザベンカプセル100mg、アゼプチン錠1mg、アレジオン錠20mg、ニポラジン錠3mg、アイピーディカプセル100mg
発作治療薬
短時間作用性の気管支を広げる薬
〈吸入薬〉メプチンエアー10μg
フルタイドエアゾールやメプチンエアーなどの吸入薬を使用した後はうがいをしましょう。
急性喘息発作には、気管支を広げる薬に加えて経口ステロイド薬を短期間投与します。経口ステロイド薬の短期投与で早期に治療することは、喘息症状の悪化を予防します。
気管支喘息の長期管理、発作治療のくすりは患者さんそれぞれの症状に合わせて主治医の先生が処方されていますので、主治医の先生の指示通り正しく服用するようにしてください。