いま求められている医療の最高レベルを目指すとともに、明日の医療のあり方 に機能しよう/医療法人あかね会

あかね会TOP > 土谷総合病院 > 薬剤部 > くすりの窓

土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

秋とは申しながらも、残暑厳しい日が続いております。

今回のテーマは ヘルペス です。

2010年09月

ヘルペスとは

ヘルペスとはヘルペスウイルスというウイルスが皮膚や粘膜に感染して、水ぶくれができる病気のことです。ヘルペスウイルスは、一度感染すると人間の神経細胞の中に隠れ潜んでしまいます。したがって、一度感染すると症状が治った後も人の細胞の中にじっと隠れて、普段は症状が出てこないのが特徴です。ところが、風邪や疲れなどで体の抵抗力が落ちると、突然出てきて暴れだしてしまいます。

ヘルペスウイルスにはいくつかの種類があり、それにより引き起こされる病気も異なります。以下に代表的なヘルペスの疾患について説明します。

代表的なヘルペスの疾患

帯状疱疹

帯状疱疹はヘルペスウイルスの一種で水ぼうそうと同じウイルスによって起こる病気です。

症状

身体の左右どちらか一方に、チクチクするような痛みが起こることから始まります。しばらくすると、皮膚にブツブツと赤い発疹ができ、小さな水ぶくれが広がってきます。ウイルスは神経を伝わって広がるため、発疹や水ぶくれも神経に沿って帯状にあらわれます。特に胸から背中、おなかなどに良く見られます。そのほかにも顔や頭、手、足にも見られますが、一度に二箇所以上の部位にできることはほとんどありません。やがて水ぶくれは、かさぶたとなって治ります。

通常痛みが起こり始めてからかさぶたが治るまで、約3週間〜1ヶ月間かかりますが、この間、帯状疱疹は強い痛みを伴うことが多いです。痛みは、はじめさすような鋭い痛みですが、次第に服がすれるようなわずかな刺激でもピリピリと痛みを感じるようになることもあります。ほとんどは皮膚症状がなくなると痛みもなくなりますが、ときにはしつこい痛みが残ることもあります。

単純ヘルペスとは

単純ヘルペスは単純ヘルペスウイルスの感染で起こる病気です。このウイルスには1型及び2型の2種類があり、1型は口唇や顔面などの上半身に、2型は性器やお尻のまわりなどの下半身に主に発症します。以前はほとんどの人が、乳幼児期に周囲の人々との接触により1型に感染して抗体を持っていましたが、衛生状態の改善や核家族化などの影響で、現在では20〜30代でも半数ぐらいの人しか抗体を持っていません。乳幼児期の初めての感染では、症状が現れることはまれですが、大人の初めての感染では、症状が重くなることがあります。

単純ヘルペスによる主な疾患

単純ヘルペスは身体のいろいろなところに発症しますが、口唇を中心に顔面、眼のまわりや、指、おしり、性器などの皮膚や粘膜に症状が現れます。単純ヘルペスウイルスによる主な疾患として口唇ヘルペスや性器ヘルペス、角膜ヘルペスなどがあげられます。

1.口唇ヘルペス

人にみられる単純ヘルペスの典型例は口唇ヘルペスで、くちびるのまわりに小さな水ぶくれ(水疱)が見られます。ほとんどが再発例で、カゼを引いたときに鼻の下や口唇にできる水疱は口唇ヘルペスと考えられます。発症時には、症状が現れる前にピリピリ、チクチク、ムズムズなどの違和感があります。その後、赤くはれて水疱ができます。水疱が破れ、かさぶたができて治るまでに約1〜2週間かかります。

2.性器ヘルペス

性器ヘルペスは性交渉による感染がほとんどで、初めての感染では外陰部に赤いブツブツができ、小さな水ぶくれが多数できます。その後、水ぶくれが破れて潰瘍になり、高熱が出て歩けないほど痛くなることもあります。治るまでに2〜3週間かかり、再発を繰り返すこともあります。再発時の症状は、初めての感染に比べ軽くすむことが多いです。

3.ヘルペス性歯肉口内炎

子供の場合、年齢によって単純ヘルペスのできるところが異なりますが、0〜2歳で単純ヘルペスウイルスに初めて感染するとヘルペス性歯肉口内炎として発症することがあります。ヘルペス性歯肉口内炎は、口の中の粘膜や歯肉、口のまわりの皮膚粘膜に発赤、水ぶくれ(水疱)、びらん、潰瘍ができ、よだれが多くなったり、口臭がひどくなったりします。その他に、頸部リンパ節の腫れ、38〜40℃の発熱、だるさなど重い症状を伴います。年齢とともにヘルペス性歯肉口内炎は減り、7歳以上では、再発型の口唇(こうしん)ヘルペスが多くなります。

4.カポジ水痘様発疹症

カポジ水痘様発疹症は0〜5歳に多く、種々の皮膚疾患、特にアトピー性皮膚炎に単純ヘルペスウイルスが感染して起こります。最近は大人のアトピー性皮膚炎が増え、大人のカポジ水痘様発疹症もしばしばみられるようになってきました。

アトピー性皮膚炎では、皮膚の抵抗力が弱いため、傷ついた皮膚からウイルスが侵入して発症します。顔面や上半身など、アトピー性皮膚炎の起こりやすいところに多くみられ、皮膚が赤く腫れ、水ぶくれ(水疱)ができ、やがてかさぶたができます。発熱やリンパ節が腫れることもあります。特に初めての感染(初感染)では重症化することがあります。また、顔面にできたカポジ水痘様発疹症は、眼に及ぶと角膜ヘルペスになることもあるため、注意が必要です。3週間ほどで治りますが、大人ではくり返して起こることもあります。

ヘルペスウイルスの感染と日常生活上での注意

帯状疱疹は水ぼうそうにかかったことのない人にはうつることがありますが、通常帯状疱疹が人にうつることはほとんどありません。

しかし、単純ヘルペスは症状があるときは、単純ヘルペスウイルスを大量に排出しています。単純ヘルペスウイルスは感染力が強く、直接的な接触のほかに、ウイルスがついたタオルや食器などを介して感染することがあります。したがって、家族内、特に親子や夫婦間で感染することが多い病気です。人との接触に注意をする必要があります。

具体的には、口唇(こうしん)ヘルペスの大人が赤ちゃんにキスをして感染し、赤ちゃんがヘルペス性歯肉口内炎(ヘルペスせいしにくせいこうないえん)になることもあります。同様に自分自身の患部に触れた手で他の部位に触れたために、感染が広がる場合もあります。患部に触れた後、きちんと手洗いをしなければ、3時間は感染の可能性があります。また、アトピー性皮膚炎の人は、皮膚の抵抗力が弱いため感染がひどくなりやすいので注意が必要です。

注意事項

  1. タオルや食器の共用は避けましょう
  2. 自分自身の患部に触れた手でむやみにあちこち触らないようにしましょう
  3. 手洗いを十分に行うなど、手を清潔にするようにしましょう
  4. なるべく安静に過ごし、十分な栄養と睡眠をとりましょう
  5. 水ぶくれは破らないようにしましょう

ヘルペスの治療

ウイルスの増殖を防ぎ、皮膚症状や痛みを抑える抗ウイルス薬を使用します。

抗ウイルス薬には、飲み薬や塗り薬、点滴などがあります。できるだけ早期から抗ウイルス薬を使うことによって、症状の悪化を防ぎ、皮膚や神経のダメージを軽くすることが期待できます。

ヘルペスの治療薬

当院にあるヘルペスの治療薬は以下のようなものがあります。

外用薬
  • アラセナ-A軟膏
    • 帯状疱疹と単純疱疹のどちらにも使用します。1日1〜4回程度塗布します
  • ゾビラックス眼軟膏3%
    • 単純ヘルペスウイルスによる角膜炎に使用します。1日5回塗布します
  • スタデルムクリーム5%
    • 帯状疱疹に使用します。1日1〜2回塗布します
内服薬
  • ゾビラックス錠200
    • 1回1錠、1日5回の投与が基本です。帯状疱疹には、単純疱疹では1回4錠服用します
  • バルトレックス錠500、バルトレックス顆粒50%
    • 帯状疱疹へは1回1000mgを1日3回、単純疱疹へは1回500mg1日2回の投与になります
  • リリカカプセル75mg
    • 帯状疱疹後の神経痛に用います。効果がでるまで1週間くらいかかります。1回1〜4カプセル1日2回服用します

内服薬は症状や部位などによって投与量や投与期間が変化したり、腎機能や年齢により用法用量の調整がされることがあります。自己判断せず、必ず医師の指示に従って服用するようにして下さい。