大寒を迎え、いよいよ冬将軍が到来する時期となりました。
今回のくすりの窓は 禁煙 についてです。
2011年01月
禁煙外来について
タバコの値段が上がり、禁煙を始めようと思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?まずはタバコによる害について理解し、禁煙治療について知っていきましょう。
当院では火曜日の午後に禁煙外来を行っていますので、お気軽にご相談ください。
タバコの煙に含まれるニコチン
ニコチンはタバコの煙に含まれる、依存性の有害物質です。喫煙者の70%はニコチン依存症であるといわれています。ニコチンは体の毛細血管を収縮させる働きを持っています。心拍数の増加・血圧上昇などがおこったり、血液の流れを悪くし動脈硬化を促進させることから、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患にかかりやすくなります。ニコチンへの依存の理由は以下のとおりです。
- 脳には、ニコチンが結合すると快感が生じる受容体(α4β2ニコチン受容体)があります
- タバコを吸うと、ニコチンが肺から血中に入り、すぐに脳に達する
- ニコチンがα4β2ニコチン受容体に結合すると、快感を生じさせる物質(ドパミン)が放出される
- ドパミンが放出されると快感が生じます。さらに、もう一度タバコを吸いたくなる
- 2〜4を繰り返すうちに現れる、イライラなどの禁断症状を避けるため、喫煙をやめられなくなる
タバコの煙に含まれる有害物質
タバコの煙には4000種類以上の化学物質と250種類以上の毒物もしくは発がん性物質が含まれます。その一部を下表に示しています。タバコの煙はタバコ自体を透過して喫煙者が吸い込む主流煙と、タバコの点火部から立ち上る副流煙に分かれます。有害成分の量は副流煙の方が多く、喫煙者の周囲の人が煙を吸い込んでしまう受動喫煙が問題視されるようになったのはこのためです。
化学物質 | これらを含むものの例 |
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アセトン |
ペンキ除去剤 |
ブタン |
ライター用燃料 |
ヒ素 |
アリ殺虫剤 |
カドミウム |
カーバッテリー |
一酸化炭素 |
排気ガス |
トルエン |
工業溶剤 |
喫煙によりリスクが高まる病気
肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)などはよく知られていますが、咽頭がんや食道がん、すい臓がんや腎臓がん、子宮頸がんなども喫煙によりリスクが高まる病気のひとつです。また脳卒中や心筋梗塞なども喫煙によりリスクが高まるといわれています。妊婦さんが喫煙すると子供に影響を与え、低出生体重や乳幼児突然死症候群をおこす場合もあります。
タバコを吸う人と吸わない人ではどれくらい病気を起こす割合が異なるのでしょうか?
- 糖尿病の患者さんがタバコを吸っていると、心筋梗塞のリスクが吸わない患者さんの2.6倍
- タバコを吸っている人は脳卒中死亡のリスクが吸わない人の2.8倍
- 胃潰瘍のリスクは吸わない人の3.4倍
そのほかにも、タバコを吸っていると皮膚のハリがなくなってきて、目じり・口周りなどのしわが増えます。このような喫煙者に特有の顔を「スモーカーズ・フェイス」といい、シワにくわえ、歯や歯茎の着色、口臭、白髪、頭髪の脱毛なども伴います。
受動喫煙の影響
最近、夫の喫煙本数が多いほど、タバコを吸わない日本女性の肺がんリスクが高いことがわかりました。タバコから立ち上る煙を周りの人が吸うことを受動喫煙といいます。タバコから立ち上る煙の中にも有害物質がたくさん含まれており、周りにいる人の肺がんや脳卒中、心筋梗塞などの発病リスクを高めてしまい、タバコを吸わない人の健康を損なってしまいます。
禁煙治療
2006年から一定の要件を満たしていれば健康保険等を使って禁煙治療をうけられるようになりました。健康保険を使った禁煙治療では12週間で5回の診察を受けます。
禁煙治療の薬
現在、禁煙治療をおこなうための薬には飲み薬と貼り薬があります。まずは値段を比較してみましょう。
治療にかかる期間が12週間ですので、タバコ(1箱410円のもの)を1日1箱12週間吸う場合と、内服薬のお薬で治療を行う場合(診療費込み)、貼り薬で治療を行う場合(診療費込み)で値段を比較しています。ただし、病院で治療を行うときの目安の値段になっていますので、多少異なる場合があります。
タバコを1日1箱吸う場合 | 34,440円 |
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飲み薬(チャンピックス)を使用する場合 | 19,050円 |
貼り薬(ニコチネルTTS)を使用する場合 | 12,800円 |
飲み薬
・チャンピックス
飲み薬は、イライラなどのニコチン切れ症状を軽くするほか、タバコをおいしいと感じにくくします。飲み薬の場合、肌が弱い人でも使用でき、ニコチンを含まないことがメリットです。1日1回の服用から開始し、飲み始めの1週間で徐々に量を増やし、1日2回食後に飲みます。飲み始めの1週間はタバコをすいながら服用し、8日目には禁煙を開始します。通常、服用期間は12週間ですが、それぞれの症状に合わせ服用期間が延長することもありますので、医師の指示通り服用するようにして下さい。
貼り薬
・ニコチネルTTS
貼り薬は禁煙中、タバコの代わりにニコチンを補充することで、イライラなどのニコチン切れの症状を軽くします。1日1回お腹、背中、上腕などのいずれかに貼付します。貼り薬は1日1回貼るだけなので、簡単で、周りの人から見えることもほとんどないことがメリットです。貼付する際は、皮膚のかぶれを防ぐため、毎回貼る場所をかえてください。通常、貼付期間は8週間ですが、それぞれの症状に合わせて貼付期間が延長することもありますので、医師の指示通り使用するようにして下さい。
その他にも市販されている貼り薬やガムなどもあります。
- ニコチネルパッチ
- ニコレットパッチ
- ニコレットガム
- シガノンCQパッチ など
自己判断で薬を飲むのをやめたり、貼るのをやめたりせず、最後まできちんと薬を服用するようにしましょう。禁煙治療は一度失敗すると1年間保険診療で禁煙治療を受けることが出来なくなりますので、十分に注意してください。