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土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

暑さ寒さも彼岸まで、桜の花が待ち遠しい毎日です。

今回のくすりの窓は 漢方薬 についてです。

2011年03月

生薬と漢方薬

薬として効果が発見されている、自然界の植物の茎や根、動物、貝殻、鉱物などを使いやすいように簡単に乾燥や粉砕を行ったものを生薬といいます。 医師が漢方的な診察で体力の強弱、体質などを判断し、数種類の生薬を組み合わせて処方した薬を漢方薬といいます。

現代の漢方治療は、長い歴史の中で、大勢の医師、薬剤師たちの努力とさまざまな経験、そして医学的理論を基礎に確立したものです。古代中国では、かぜや下痢、痛みなどの急性症状に対し、薬草を煎じて服用していました。中国から伝えられた医学を基に、日本独自に発達したものが漢方です。ほとんどの漢方は、2種類以上の生薬をまぜて使用されています。現在日本では生薬そのものを煎じて服用することは少なくなり、主に生薬を組み合わせ抽出したエキスを加工した顆粒が用いられています。

西洋医学と東洋医学

西洋医学は主にヨーロッパで発達した、東洋医学は中国などのアジアで発達した医療で、理論、治療形体が大きく異なります。

西洋医学は、身体の異常の原因を排除しようとする考え方です。検査値などから病気の原因をつきとめ、薬物治療、時には外科手術を行い、原因を取り除きます。現代医療の中心的存在と言えるでしょう。

それに対し東洋医学は、「人間の体も自然の一部」、つまり人も自然もすべて連動していると考えます。病気ではなく、病人を診る東洋医学では一部分だけを調べるのではなく、原因や症状、体質など、全身の状態を総合的にとらえて治療を行います。

西洋医学は「悪いところを切る」が根底に存在し、東洋医学は「内側から治す」ことを主体に考えていきます。

西洋医学は即効性があることを高く評価されていました。しかし慢性疾患や生活習慣病、ストレスなどが複雑に絡み合う現代では、どこか一部分を治せば解決できる疾患ばかりではありません。体質や生活習慣なども含めて全体のバランスを見直し整えていく治療も大切になってきています。

漢方薬と西洋薬の併用は、それぞれの長所を生かし治療を行えるのでよく用いられています。

西洋医学と、東洋医学、どちらも現代の医療には欠かせない存在です。

漢方薬の特徴

人間の身体には、生まれ持った体質と、生活や環境の変化による体質とがあります。漢方治療は体質見極め、個人個人にあった治癒をしていきます。

人はそれぞれ体質が異なるので、他の人が同じ症状を訴えていても、必ずしも療法や処方などが同じになるとは限りません。その人その人に合わせた対応が必要となります。自分がある漢方薬を飲んで調子がいいと言って、同じ様な症状の人に同じ漢方薬をすすめて飲ませたとしても、その人が必ずしも良くなるとはいえず、変わらないまたは逆に悪化してしまうこともあります。

そのため、身体全体から診断を行うため同じ症状でも処方される薬が違う、違う症状でも処方が同じ、ということが、当たり前のように行われます。 一部の効果だけを見て漢方薬を選択しないようにすることが大切です。

また、漢方薬の中でも即効性の高いものもありますし、長く服用することによって効果が現れる薬もあります。

代表的な漢方薬

葛根湯

構成成分

カッコン、マオウ、タイソウ、ケイヒ、シャクヤク、カンゾウ、ショウキョウ

風邪および肩こりの漢方薬として最もよく知られている処方です。比較的体力のある人に適応し、風邪の初期症状として発熱・悪寒・頭痛などのある時に服用します。また、風邪にかかわらず首筋から背中の筋肉の凝りが感じられる場合にも広く用いられます。発汗して解熱する作用を持つ麻黄を含んでいるため、自然発汗のない状態で適用されます。

葛根(カッコン)

マメ科クズの周皮を除いた根。解熱・鎮痙を目的に用いられます。根を粉にした葛粉は食用で、吉野葛が特に有名です。クズは落葉つる性で紫紅色の花を咲かせます。

麻黄(マオウ)

マオウ科シナマオウの地上茎。鎮咳、発汗、解熱などの効能があります。シナマオウは裸子植物に属し、細長い円柱状の茎の節には小さな葉がついています。夏に黄緑色の小さな花を咲かせます。

大棗(タイソウ)

クロウメモドキ科ナツメの果実を乾燥したもの。滋養強壮の作用があります。ナツメは高さ10mほどの落葉小高木で、初夏に黄緑色の小さな花を咲かせます。和名は初夏に芽が出ることに由来します。

桂皮(ケイヒ

クスノキ科トンキンニッケイの樹皮を乾燥したもの。スパイスのシナモンとしてもよく知られ、健胃・発汗作用があります。

芍薬(シャクヤク)

ボタン科シャクヤクの根。血に作用する薬とされ、鎮痛・鎮痙作用があります。

甘草(カンゾウ)

マメ科カンゾウ属植物の根・ストロン。健胃、鎮痛などの目的で、また甘味料としても広く用いられます。

生姜(ショウキョウ)

ショウガ科ショウガの根茎を乾燥させたもの(乾生姜)。胃の調子を整える作用があります。ショウガは熱帯アジア原産の多年草です。温帯地域の露地栽培では花を咲かせることはできません。

芍薬甘草湯

構成成分

カンゾウ、シャクヤク

胆石症または腎臓・膀胱結石のけいれん痛や胃けいれんなどの急激な筋肉のけいれん痛などに用いられます。

補中益気湯

構成成分

ニンジン、ビャクジュツ、オウギ、トウキ、タイソウ、サイコ、カンゾウ、ショウキョウ、ショウマ、チンピ

体質虚弱、体力の低下した人で、倦怠感、食欲不振、動悸などの症状がみられる場合の病後の体力増強、胃下垂、虚弱体質、貧血症、多汗症、勃起障害、夏やせ、食欲不振、寝汗などに用いられます。

小青竜湯

構成成分

ハンゲ、カンキョウ、カンゾウ、ケイヒ、ゴミシ、サイシン、シャクヤク、マオウ

気管支炎、気管支喘息、薄い水様性のたんを伴うせき、鼻水、鼻炎、アレルギー性鼻炎などに用いられます。

防風通聖散

構成成分

トウキ、シャクヤク、センキュウ、サンシン、レンギョ、ハッカ、ショウキョウ、ケイガイ、ボウフウ、マオウ、ダイオウ、ビャクジュツ、キキョウ、オウゴン、カンゾウ、セッコウ

体力の充実した脂肪ぶとりの人で、便秘の症状がみられる場合の高血圧の症状、肥満症、動脈硬化、腎臓病、むくみ、便秘などに用いられます。

麻黄湯

構成成分

マオウ、キョウニン、ケイヒ、カンゾウ

体力が充実して風邪の引き始めで、寒気がして発熱、頭痛があり、咳が出て体のふしぶしが痛く汗が出ていない人の、鼻かぜ、気管支炎、鼻詰まり。

受動喫煙の影響

最近、夫の喫煙本数が多いほど、タバコを吸わない日本女性の肺がんリスクが高いことがわかりました。タバコから立ち上る煙を周りの人が吸うことを受動喫煙といいます。タバコから立ち上る煙の中にも有害物質がたくさん含まれており、周りにいる人の肺がんや脳卒中、心筋梗塞などの発病リスクを高めてしまい、タバコを吸わない人の健康を損なってしまいます。

漢方薬の副作用

「漢方薬は副作用がない」と聞いたことはありませんか?

漢方薬は、比較的副作用の少ない薬ですが、全く無いとはいえません。体質に合わない薬を飲めば、胃腸障害などが起きる事もありますし、天然物のソバや牛乳にアレルギーがある人がいるように、体質によっては異変が起こる人もいます。

漢方薬の主な副作用として、食欲がなくなる、熱やじんましんが出る、むくみ、動悸、不眠、血圧上昇などがありますが、ごくまれに間質性肺炎などの重篤な副作用もありますので、おかしいなと思ったら、すぐに医師や薬剤師に相談してください。

また、漢方薬には多くの種類がありますが、自分で判断して複数の漢方薬を組み合わせてはいけません。

ひとつの漢方薬の中にはさまざまな成分が混ざって入っています。ですから、自己判断で服用してしまうと、場合によっては成分が重複してしまって定量を超えてしまうことや相反する成分同士が組み合わさって好ましくない副作用を起こしてしまうことがあります。

最近では、メディアなどから漢方薬の情報を得ることが多いと思いますが、使用する前に医師や薬剤師に相談し、自分にあっている薬を服用することが大切です。

薬局窓口にある「漢方の飲み方について」もご覧下さい。