花火の音が聞こえる季節となりました。
今回のくすりの窓は OD錠(口腔内崩壊錠) についてです。
2011年07月
製剤について
物は、そのまま身体に投与することはきわめて少なく、ほとんどは「添加剤」を加えて、その薬にあった形にされています。
添加剤を加えて適した効果や形にすることや、その薬のことを「製剤」といいます。例えば、噛み砕いて服用するチュアブル錠や少量の水で服用するD錠、長く効く徐放性製剤、舌の下に入れて使う舌下錠などがあります。
今回はさまざまな製剤の中でも、OD錠(口腔内崩壊錠)についてお話します。
OD錠(口腔内崩壊錠)とは
最近、薬の名前の末尾にOD錠と書かれた薬を見かけたり、テレビコマーシャルで口腔内崩壊錠といった言葉を耳にすることはありませんか?
OD(Orally Disintegration)錠とは、「口腔内崩壊錠」の略語です。口の中に入れるとすぐに唾液で解ける製剤で、服用する際に水や噛み砕いて飲む必要がありません。
OD錠は速やかに溶ける特性からすぐに効くと誤解されるケースも少なくありませんが、OD錠でなくても同じ薬ならば薬が効くまでの時間は変わりません。 例えば、ノルバスク錠5mgとノルバスクOD錠5mgは、薬の吸収場所や効果に違いはありません。
OD錠には様々なタイプがあり、その製造技術によって口腔内で溶けるスピードや、強度などが異なります。
OD錠と錠剤の違い
OD錠は普通の錠剤と比べて見た目が多少変わっており、大きさが大きくなっている場合がありますが、どちらも、同じ効果のある薬です。
例えばプレタール錠100mgとプレタールOD錠100mgでは、OD錠の方が直径1mm大きくなっています。
当院のOD錠
当院で採用されているOD錠です。
- ノルバスクOD錠 2.5mg/5mg
- プレタールOD 50mg/100mg
- タケプロンOD錠 15/30
- ベイスンOD錠 0.2
- アレロックOD錠 5
- エバステルOD錠10mg
OD錠の長所
- 水がなくても服用できる
- 場所を選ばずに飲める
- 飲み込むことが難かしい人でも服用しやすい
- 服薬しやすい味付けの薬が多い
- 水分制限している人に使いやすい
OD錠は水がなくても服用できるため、手元に水がない場合や、他人に薬を服用していることを知られたくない時も服用できます。
前述した通り、OD錠であってもOD錠でなくても、同じ薬ならば作用時間は変わりません。したがって、OD錠は飲み込みが難しい患者さんでも水なしで楽に服用できる錠剤です。
例えば介護者が薬を管理して服用させる場合がありますが、その際患者さんが飲み込むまでに時間がかかったり、薬を吐き出して服薬を拒否する時に介護者の負担軽減にもつながることがあります。
また、OD錠は水にすぐ溶けるため、経管栄養チューブが入っている患者さんが服薬する場合、薬を溶かす作業が短時間で済みます。
OD錠は他に錠剤と比べ、甘い味付けをされている薬が多く、薬を服用する時の苦味などの苦痛が軽減される効果もあります。
他にも、水なしで服用できることによって水分の摂取量を制限している患者さんも、水分量を気にする必要がありません。
このように服薬しやすいだけでなく、飲み込みが困難な患者さんでも服用できるよう工夫もなされています。
OD錠の短所
- 一包化できない薬がある
- 味を不快に思う場合がある
- 複数服用する場合のOD錠の有用性の低下
- 錠剤の大きさが苦になる場合がある
- OD錠になっている薬が少ない
OD錠は崩壊しやすいという特性の反面、普通の錠剤と比べ壊れやすいため吸湿しやすく、同じ飲み方の薬を同じ袋の中に入れる「一包化」をしにくいという問題があります。
その他に味の問題があります。OD錠は薬そのものの苦味を隠し、後味が良くなる加工を施してありますが、逆に甘味が強すぎると感じる場合や、他の薬と一緒に服用する場合に味が混じってしまい、不快な味と感じることがあるかもしれません。
また、OD錠を製造している薬の種類が少なく全ての薬にOD錠が存在するわけではないので、薬を複数服用する場合OD錠の利点が隠れてしまいます。むしろOD錠にすることにより錠剤の大きさが大きくなり、服薬することが苦になることがあります。
まだまだOD錠の長所を活かしきれていないのが現状です。
OD錠の注意点
水なしで服用できるOD錠ですが、寝たままの状態では水なしで服用させないことになっています。特に寝たきりの患者さんには注意が必要です。
OD錠のみで服用する機会より、OD錠以外の薬と同時に服用することも多いでしょう。OD錠のみでない限り、服用する時は水で服用しましょう。
口で溶けるといっても、口で吸収されるとは限らないので溶けた後は吐き出さないように気をつけましょう。
OD錠の他に、D錠とよばれる薬の形もあります。D錠とは、「速崩錠」とよばれ、水なしで飲めるOD錠と違い、D錠は少量の水で服用することになっています。
用法、用量を守って正しく服用しましょう。
薬局窓口にある「OD錠の飲み方について」もご覧下さい