秋とは申しながらも、残暑厳しい日が続いております。
今回のくすりの窓は 塗り薬と保湿 についてです。
2011年09月
「塗り薬を病院で処方されても、どのように塗ればいいのか分からない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、今回は塗り薬の正しい塗り方や使用量の目安、保湿剤についてです。
ただし、一般的な塗り方や目安の使用量になりますので、主治医の指示をきちんと守り、正しく使うようにしてください。
塗り薬の正しい使い方
塗る前に
塗り薬を塗る前に、まず手と患部をきれいに洗いましょう。手や患部が汚れていると菌が入り症状が悪化してしまう可能性があります。
成人用
- 手を清潔にしたら塗り薬を取ります。チューブの塗り薬は、薬の量を見ながらチューブから指の腹に少量出してください。軟膏・クリーム製剤の場合、目安として、だいたい人差し指の先から第一関節まで伸ばした量で、およそ手の面積2枚分に塗れます。ローション製剤では1円玉大でおよそ手の面積2枚分に塗れます。ただし種類により異なることがあります。チューブの塗り薬の場合、直接軟膏のチューブを患部に当てて塗るとチューブの口が汚れてしまいますので必ず指に取り出すようにしてください
- 塗り薬を患部に点在させます
- 指先ではなく、手の平を使ってやさしく丁寧に塗ります。力を入れて強くすり込むように塗ると肌を刺激するだけでなく、塗る量が不足してかえって十分な効果が得られないことがあります。体のしわに沿って塗ると、皮膚に広がりやすくなります
小児用
- 手をよく洗って清潔にしましょう
- 必要量を手の甲に取りましょう
- からだ
- 保湿剤を左右対称に点在させます。手の平をすべらせてマッサージをするように伸ばして塗りましょう
- 顔
- 顔に保湿剤を点在させます。やさしく円を描くように伸ばします。耳たぶを前に倒して、耳の後ろにも塗りましょう。頭皮は髪の毛を分けて人差し指の腹を使って丁寧に塗りましょう
- 手・足
- 指は1本ずつ。爪の周りも。手足の指は保護者の親指と人差し指で軽くつまむようにして塗ります。
指と指の間も忘れずに塗りましょう。足の甲や裏、足首のくびれも念入りに塗りましょう
軟膏・クリーム・ローション
塗り薬には軟膏・クリーム・ローション等があります。同じ成分が入っていますが、塗る場所や使用する目的に合わせて処方されます。
保湿
ドライスキン(皮脂欠乏症)ってなに?
ドライスキン(皮脂欠乏症)は、言葉の通り、皮脂の分泌が低下し、角質層に水分が低下して乾燥した状態のことです。これは、年齢による変化、栄養不足、むくみなど様々なことが原因で起こります。皮脂は毛穴から出て、肌の表面を覆い、乾燥から皮膚を守る働きがあります。この皮脂の低下は、肌本来の防御機能の低下をもたらし、外からのあらゆる刺激に敏感になります。
特にこの疾患は、湿度の低い秋から冬によく見られ、中高年の脚や腰、背中によく見られます。乾燥状態を放置しておくと、次第に痒みが出てきます。そして、掻くことによって、炎症を起こし、紅斑(赤みのある発疹)が生じます。
保湿剤の役割
健康な皮膚には角層のバリア機能があり、水分の蒸発や外からの刺激を防いでいます。しかし、皮脂、天然保湿因子、角質細胞間脂質といった物質が不足して皮膚が乾燥した状態(ドライスキン)になると、角層がはがれてすき間ができ、外からの刺激を受けやすくなります。保湿剤は、皮膚の水分が逃げないように“ふた”をしたり、皮膚に水分を与えたりする役割を持っています。そのため、保湿剤を塗る前に水や化粧水で皮膚を軽く湿らせておくと、十分な保湿効果が得られます。健康な皮膚を守るため、季節に関係なく毎日塗ってスキンケアをしましょう。
ワセリンなど保湿軟膏は皮膚の表面に膜をつくり、水分の蒸発を防ぎます。
保湿剤は皮膚が水分を吸収している入浴後に塗るのが効果的です。濡れたままの皮膚は水分の蒸発量が増すため、すばやくふき取り、入浴後は早めに保湿剤を塗るようにしましょう。
〈当院にある保湿剤の例〉
プロペト(白色ワセリン)
ヒルドイドソフト軟膏0.3%
ヒルドイドローション0.3%
保湿剤の選択
市販の保湿剤を購入する時、夏はさっぱりとした使用感の良いもの、冬は皮膚を覆う効果に優れたものが良いでしょう。ただし、尿素が入った軟膏は、引っかき傷等の傷口、亀裂(ひび割れ)部位や炎症の起こっているところに塗るとしみる事がありますので気をつけましょう。
生活上の注意
- 皮脂の喪失、かゆみの誘発を避けるため、熱い湯での入浴、長湯は避けましょう。また、洗浄力の強い洗浄剤の使用や、過度のあかすりも皮膚が乾燥します
- 石鹸は低刺激(弱酸性洗浄剤)のものを使用し、こすらず、よく泡立ててなでるように洗いましょう
- ドライスキン時は、皮膚のバリア機能が低下した状態にあるため、清潔にするように努めましょう
- 冷暖房使用の際は、直接風に当たらないよう工夫しましょう
- 偏食せず、バランスの良い食事を心がけましょう
また、足が乾燥して傷が出来たり、炎症が起こっていないか、こまめに足の裏を確認してください。傷に気付かず放置しておくと、そこから感染が起こり、壊疽してしまう可能性もあります。