日に日に秋が深まり、露寒の季節となりました。
今回のくすりの窓は 緑内障 についてとりあげます
2011年11月
緑内障って?
緑内障は、何らかの原因で視神経が障害され視野(見える範囲)が狭くなる病気で、眼圧の上昇がその病因の一つと言われています。緑内障は、厚生労働省研究班の調査によると、我が国における失明原因の第1位を占めており、日本の社会において大きな問題として考えられています。
房水と眼圧
目の中には血液のかわりとなって栄養などを運ぶ、房水とよばれる液体が流れています。房水は毛様体でつくられシュレム管から排出されます。目の形状は、この房水の圧力によって保たれていて、これを眼圧とよびます。眼圧は時間や季節によって多少変動しますが、ほぼ一定の値を保っています。
正常の眼圧は10〜21mmHgと言われていますが、眼圧は季節や、一日の中でも変動し、季節、年齢、性別、血圧などによって変化するため、この範囲の眼圧だからといって緑内障にならないとは言い切れません。
眼圧が上昇すると(眼球が硬くなると)、視神経が障害されやすくなり、緑内障になる可能性が高くなることが知られています。
したがって、自分の眼圧がどれくらいであるのかを知っておくことは、とても大事です。
緑内障の症状
緑内障の自覚症状としては見えない場所が出現する、あるいは見える範囲が狭くなるなどが挙げられます。
日常生活では、両眼で見えており、病気の進行は緩やかなので、自覚症状はほとんどなく、知らないうちに病気が進行していることが多くあります。緑内障に対して、最も重要なことは早期発見・早期治療です。一度障害された視神経をもとにもどす方法はなく、病気の進行をくい止めることが目標となります。したがって出来るだけ早期に緑内障を発見し、治療を開始することが大切です。
緑内障の種類
緑内障にはいくつかの種類があります。眼圧が高くなる原因によって主に、他の病気が原因とならない原発緑内障(開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障)、他の病気が原因となる続発緑内障、及び先天緑内障の3つに分けられます。
原発緑内障
原発開放隅角緑内障(げんぱつかいほうぐうかくりょくないしょう)
房水の出口のシュレム管の入り口である線維柱帯が徐々に目詰まりし、眼圧が上昇します。ゆっくりと病気が進行していく慢性の病気です。
正常眼圧緑内障
眼圧が正常範囲(10〜21mmHg)にも関わらず緑内障になります。これを正常眼圧緑内障と呼び、開放隅角緑内障に分類されます。近年行われた全国的な調査の結果から、緑内障の約6割が正常眼圧緑内障ということがわかりました。
原発閉塞隅角緑内障(げんぱつへいそくぐうりょくかくないしょう)
隅角が狭くなりついには閉じてしまうために、房水の流出が障害され眼圧が上昇する緑内障です。
続発緑内障
外傷、角膜の病気、網膜剥離、目の炎症など、他の目の疾患による眼圧上昇や、ステロイドホルモン剤などの薬剤による眼圧上昇によっておこる緑内障です。
先天緑内障
生まれつき隅角が未発達であることからおこる緑内障です。
緑内障の治療
緑内障の治療は病気の進行をくい止めるため、眼圧を低くコントロールすることが最も有効とされています。正常眼圧緑内障でさえも、眼圧をさらに下げることで病気の進行を遅らせることができる可能性があります。ただし、ひとたび障害されてしまった視神経は、残念ながら回復することはありません。
しかし、早期に緑内障を発見し、まだ視神経の障害が軽いうちに治療を開始することができれば、失明に至る危険性はぐっと少なくなります。
治療法としては薬物療法、レーザー治療や手術が一般的です。すべての緑内障に対して同じ治療効果があるのではなく、緑内障のタイプやそれぞれの人に適した治療方針を決定していくことがとても重要です。
薬物治療
眼圧を下げる目的で大きく
- 房水の産生を抑制する薬
- 房水の排泄を促進する薬
の2つがあります。緑内障の薬物治療は、まず点眼薬からはじめ、最初は1種類の薬で様子をみながら、途中で変更したり、また2〜3種類を併用することもあります。点眼薬だけでは効果が不十分な場合、内服薬を併用することもあリます。
当院で使用される点眼薬
●房水の排泄を促進する薬
- キサラタン点眼液0.005%(1日1回)
1日1回の点眼で効果が持続します。長く使用していると、虹彩の色素沈着、まつげが多くなることがあります
●房水の産生を抑制する薬
- チモプトール点眼液0.5%(1日2回)
- ハイパジールコーワ点眼液0.25%(1日2回)
喘息のある人は使用できません。刺激感、充血、かゆみ、かすみ目などみられることがあります。ときに、目にゴロゴロ感や乾燥感を生じ、角膜に傷ができることもあります - トルソプト点眼液1%(1日3回)
- エイゾプト懸濁性点眼液1%(1日2〜3回)
刺激感、充血、かゆみ、かすみ目などがみられることはあります。機械類の操作や自動車の運転には注意してください
●房水の産生抑制、排泄促進
- ピバレフリン点眼液0.1%(1日1〜2回)
瞳が開くため、一時的に物がかすんだり、まぶしく見えることがあります
気をつけること
- できるだけ仰向けの状態で1滴点眼するようにします。このとき、目頭を指で押さえておくと鼻や口に薬が回らず苦い思いをしなくて済みますし、全身性の副作用の予防にもなります
- 治療のための薬は、回数・量を守って使用しましょう
- 点眼薬や内服薬により副作用が現れることがあります。目に異常を感じたり、全身に何か変わった症状が出たときは、すぐに医師に相談しましょう
- ほとんどの緑内障は自覚症状がなく、病気の進行に気づかないことが多いので、定期的に眼科を受診しましょう