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土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

蝉の鳴く季節がやってまいりました。

今回のくすりの窓は ワクチン についてです。

2012年07月

ワクチンとは?

身体が病気になりづらくなる手段です。人間は、怖い病気から体を守る仕組みが備わっています。この仕組みを『免疫』と呼び、体内で『免疫物質』が作られます。

この免疫物質を『抗体(こうたい)』と呼び、抗体を作らせる病原体などを『抗原(こうげん)』と呼んでいます。

ワクチンは抗原の一種であり、人工的に体の中で免疫物質、つまり抗体を作らせるものと言い換えることができます。

免疫には生まれながらについている『自然免疫』と、生まれて育っていく間に得られる『獲得免疫』に大別されます。ワクチンを接種する主な目的は獲得免疫の強化にあります。

その守備範囲は限定されるため、それぞれの感染症を予防するためには感染症ごとにワクチンが必要となります。しかし、極めて弱い副作用であっても、すべてのワクチンにはリスクがつきまといます。

ワクチンを打つことで得られるメリットと起こるかもしれない副作用などのリスクを比較して、どちらが大きいかで判断することです。

ワクチンの種類

ワクチンは

  1. 生ワクチン
  2. 不活化ワクチン
  3. トキソイド

に分けられます。

1.生ワクチン

生ワクチンとは、生きた細菌やウイルスの毒性を弱めたもので、これを接種することによってその病気にかかった場合と同じような抵抗力(免疫)ができるものです。それぞれのワクチンの性質に応じて、発熱や発疹の軽い症状がでることがあります。十分な抵抗力(免疫)ができるのに約1ヶ月が必要と言われています。

2.不活化ワクチン

不活化ワクチンは、細菌やウイルスを殺し抵抗力(免疫)を作るのに必要な成分を取り出して毒性を無くしています。

この場合、体内で細菌やウイルスは増殖しないので、何回か接種することにより抵抗力(免疫)ができます。しかし、しばらくすると少しづつ、抵抗力(免疫)が減ってしまいますので、長期に抵抗力(免疫)を保つためには、それぞれのワクチンの性質に応じて一定の間隔で追加接種が必要です。

3.トキソイド

トキソイドは細菌の出す毒素を取り出し、無毒化したものいいます。

抗原は保持したまま無毒化するので、このトキソイドを体内に注射すると、毒素を中和する抗体ができる(つまり、毒素をなくす)ので、毒素を出す疾患に対する予防として使用されます。不活化ワクチンの一種であるとされることもあります。

表:ワクチンの種類

生ワクチン ウイルス ポリオ、MR(風しん、麻しん)、麻しん、風しん、おたふくかぜ、水痘、黄熱
細菌 BCG
不活化ワクチン ウイルス 日本脳炎インフルエンザ、狂犬病、B型肝炎、A型肝炎、子宮頚癌、ロタウイルス
細菌 DPT、コレラ、肺炎球菌b型インフルエンザ(Hib)
トキソイド 毒素 ジフテリア破傷風DT

※下線は当院にあるワクチンです

※別の種類のワクチンを連続で接種する場合は、生ワクチンは接種して27日以上、不活化ワクチン、トキソイドは接種して6日以上間隔を開けて接種します(例外もあります)

※ワクチンは注射がほとんどですが、飲み薬のワクチンもあります

定期接種と任意接種

ワクチンは『予防接種法』という、医師から処方される医薬品として規制されるだけでなく、別の法律でも規制されています。通常の健康保険証を提示して無料もしくは窓口負担として一部を支払うのではなく、予防接種は保険医療外の自由診療として扱われます。

定期接種

予防接種法によって定められたワクチンです。法律上“無料”とする規定はないですが、ほとんどの自治体で無料で接種しています。定期接種は一類と二類に分けられます。

  • 一類ワクチンは努力義務接種(国は国民の健康を守るために必要な予防接種を示して勧めるので国民は理解して受ける努力をしてくださいという意味)であり、対象者は定められた期間内に予防接種を受けるように努力をしなければなりません
  • 二類ワクチンは65歳以上または60歳以上65歳未満で基礎疾患を持つ高齢者が対象で、接種するよう努力する義務は課せられていません。定期接種も定められた期間から外れると任意接種になります。何か重大な副作用で健康被害が起きたときに補償が厚くなります。健康被害救済制度の適応もあります
任意接種

予防接種法によって定められたワクチンではなく、希望者に接種されるワクチンで有料となります。しかし、一部では自治体によって補助金がでることがあります。 副作用による重大な健康被害が起きたとき、通常の医薬品の副作用救済制度が適応され、補償が定期接種に比べると薄くなります。医薬品副作用被害救済制度(PMDA)の適応があります。

その他に緊急に流行を予防するために、予防接種の必要があると厚生労働大臣が認めた場合は、都道府県知事が臨時に接種対象者と接種期間を指定して実施する 『臨時接種』があります。

これは2009年の新型インフルエンザの大流行にも適応されています。

表:定期接種と任意接種

定期接種 一類 ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、結核(BCG)
二類 インフルエンザ(対象年齢規定)
任意接種 おたふくかぜ、水痘、B型肝炎、A型肝炎、肺炎球菌感染症、b型インフルエンザ菌(Hib)感染症、ワイル病、秋やみ、子宮頚癌、その他定期接種で対象年齢の枠外に行うもの
海外渡航前に必要な予防接種 黄熱、破傷風、狂犬病、日本脳炎、B型肝炎、A型肝炎

個別接種と集団接種

個別接種

接種を受ける人が、各医療機関に出向き個別に予防接種を行う方法です。

麻しん・風しん・DPT・日本脳炎をはじめ多くのワクチン接種がこの形態に移行しつつあります。

集団接種

日時・場所を定め、接種会場に接種を受ける方法です。接種会場は医療機関ではなく、保健センターや学校などで行い、個別接種同様、必ず医師が予診表の確認と診察を行い、接種できるか判断します。現在、ポリオ・BCGがこの形態で実施している地域が多いです。

ワクチンの利点

  1. 治療しにくい感染症から、免疫が未熟な乳幼児や弱っている高齢者を守る
  2. ワクチンを接種することで、周りの人への感染を減少させる、または無くす
  3. 抗生物質が効かない耐性菌が増えて、治療より予防が一番の効果があることがわかっている
  4. 予防に要する費用は、一般に治療に要する費用よりも少なくてすむ

ワクチンの副作用

ワクチンの副作用は『ワクチンを接種することで、免役力をつける以外の反応がでる』ことをいい、正式には『副反応』と呼ばれています。 副反応には軽い副反応と重篤な副反応があります。

軽い副反応は接種した部位の発赤、腫れ、痛みなどです。弱いとはいえ、菌やウイルスなどの異物を接種するので、むしろ起きて当然の反応です。まれに、けいれん、じんましん、嘔吐、頭痛、出血などが起こることもあります。

人によっては接種後数日〜数週間後に副反応があらわれることがあります。おかしいな、と思った場合は医師に相談するようにしましょう。

ワクチンはたとえ副作用があっても接種すべきなのは、副作用より相手の病気の方が重大だからです。それだけワクチンで防げる病気は重大な病気でもあります。

かかりつけの医師によく相談して予防接種することが大切となります。

土谷総合病院薬剤部