日に日に秋が深まり、露寒の季節となりました。
今回のくすりの窓は 吸入薬 についてです。
2012年11月
吸入薬って?
傷や皮膚の病気には塗り薬、目の病気には目薬を使用するように、肺や気管支の病気には吸入薬が最も効果的で副作用の少ない治療法とされています。吸入薬は気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、インフルエンザなどで使用されます。
飲み薬や注射薬と異なり気管支に直接届くため、ごく少ない量(吸入ステロイド薬では、経口ステロイド薬の1/100〜1/1000の用量)で効果を得るように作られています。 また、全身に吸収される量が少ないため、副作用も少ないと考えられています。
しかし吸入される薬剤の肺への到達量によって治療効果が大きく左右されるため、吸入手技が不適切であると、十分な効果が期待できません。
吸入薬の種類と使い方
吸入薬を使用する際に重要となってくるのが吸入薬の使い方です。飲み薬のように口に入れて飲み込めばOK、というわけにはいきません。上手に吸入できているかどうかで薬の効き目も変わってしまいます。吸入の方法も薬によってそれぞれ異なりますが、大きく分けて 粉を自分で吸い込むドライパウダー型と、ガスで噴霧するエアゾール型に分類されます。
ドライパウダー式
専用の器具にセットされた粉末状の薬を自分で吸入します。吸入するときに、呼吸の吸いこむタイミングに合わせて噴霧する必要がないので簡単ですが、ある程度の吸いこむ力が必要です。子供や呼吸機能が低下している場合使用がむずかしく、口内に薬が残りやすいという欠点があります。
■当院にあるドライパウダー型の吸入器
- シムビコートタービュヘイラー60吸入
- イナビル吸入粉末剤20mg
■ドライパウダー型の吸入方法
- 薬の準備をします(各吸入薬の操作方法に従って行ってください)
- 息を吐いてから吸入器をくわえ、 速く深く 息を吸い込んでください
- 吸入器を口から離し、口を閉じて軽く息を止めてください(5秒程度、無理をしないようにしてください)
- 十分に薬を吸入するため、2.3.を1〜2回繰り返します
- 1回2吸入など複数回吸入する場合は1〜4を繰り返してください
- 薬を片付け、 吸入ステロイドの場合はうがい をしてください
※吸入口には息を吹き込まないでください。薬が飛散して十分な薬が吸えないことがあります
エアゾール型
吸入するときに、ボンベを押して噴霧するタイミングと、吸い込むタイミングに合わせる必要があるので、ある程度のコツが必要です。しかし、スペーサー(吸入補助器)を使用すると、タイミングを合わせる必要がないので、乳幼児のお子さんでも吸入することができるようになります。
■当院にあるエアゾール型の吸入薬
- フルタイド50μgエアゾール120吸入用(ステロイド剤)
- テルシガンエロゾル100μg(抗コリン剤)
- メプチンエアー10μg吸入100回(β刺激剤)
■エアゾール型の吸入方法
- 薬をしっかり振ります
- 息を吐き、吸入器を口にくわえて息をゆっくり深く吸い込みながらボンベの底を1回押してください。(吸入器をくわえず、口から少し離して同様に吸入してもかまいません)
- 吸入器を口から離し、口を閉じて軽く息を止めてください(5秒程度、無理をしないようにしてください)
- 1回2吸入など複数回吸入する場合は2.3.を繰り返してください
- 薬を片付け、 うがい をしてください
よくある質問
何種類も使うときの順番は?
β刺激剤→抗コリン剤→ステロイド剤の順番で吸入して下さい。
これは、即効性であるβ刺激剤を先に吸入し気道を拡張させた後に他剤を吸入することにより、より多くの薬剤が末梢までゆきわたるからです。
スペーサー(吸入補助器)とはどんなもの?
吸入器の噴霧口と口の間にセットして使います。一度スペーサーの空間の中に薬剤を噴霧して、これを吸い込みます。
ご希望の方は医師、薬剤師にご相談ください。
使用上の注意
- 吸入可能回数を過ぎての噴霧には、薬は十分に含まれなくなります。使用終了日を計算しておくなど、回数を守って使用してください
- 吸入の効率や副作用の軽減のためにも吸入補助器の使用をお勧めします
- エアゾール剤はきちんと立てた状態で使用しましょう。横になって使用することにより、薬の向きも横向きになってしまいます。
- 吸入ステロイド薬、エアゾール剤を使用した後はうがいをしましょう
吸入薬は口、のどを通って気管支へ届くため、口腔内やのどにも薬が付着します。吸入薬は種類によって口腔カンジダ(カビ)、嗄声(声がれ)や、手のふるえなどの全身性の副作用が起こることがあります。うがいを行い、薬を口腔内から取り除くことによって予防できる副作用もあるのでしっかりうがいを行ってください。うがいができない場合は水などを飲むことでも予防できます。
うがいをしっかり行っていても、嗄声がおこることがあります。嗄声が起きた場合は医師に相談してください。他の吸入薬に変更することで出なくなる場合もあります - 吸入器によって使用方法が異なる場合があります。説明書をよく読み、説明書にしたがって使用してください
医師の指示を守り、自分の判断で薬をやめないようにしましょう。