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土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

年も改まりましたが、いよいよ本格的な冬となり日ごとに寒さが増して参ります。暖かくして乗り切りましょう!

今回のテーマは ノロウイルス についてです。

2014年1月

ノロウイルスとは?

ノロウイルスは乳幼児から高齢者に至るまで、広い年齢層で急性胃腸炎を引き起こすウイルスです。11月から3月と、主に冬季に多発するためこの時期特有のものだと思われがちですが、年間を通して患者はみられています。

ノロウイルスの特徴

下痢だけではなく、嘔吐が多いのが特徴です。嘔吐の場合、適切に処理、消毒をしなければウイルスが床に残ります。乾燥しホコリと共に空気中へウイルスが舞い上がり感染が広がることもあります。

ノロウイルスはエンベロープ(宿主細胞の膜)を持っていません。一般的に思い付くアルコール消毒、高温での過熱に対する抵抗性が非常に強いです。乾燥、酸にも強く、水中でも長時間生きていられるなんて、非常に厄介なウイルスですよね。こういった強さから感染力があり、集団感染を引き起こしてしまうのです。

★一度かかっても油断は禁物★

ノロウイルスには多数の遺伝子型が存在します。そのため、同じ人が複数の違った型のウイルスに感染することがあります。腸の粘膜での局所的な感染なので、免疫の持続時間も短いです。よって再感染を起こすことも十分に有り得ます。

どうやって感染するの?

ノロウイルスの感染は、ほとんどが経口(口から体内に入ることによる感染)です。

  • ウイルスに汚染された貝類(特に二枚貝)を生、あるいは十分に加熱調理をせずに食べた場合
  • 感染者のウイルスが大量に含まれる便、嘔吐物などから直接、もしくは二次的に感染する場合
  • ウイルスに汚染された井戸水、消毒の不十分な水かを摂取する場合
  • 調理などを行う取り扱い管理者が感染しており、その者を介して汚染された食物を食べた場合

潜伏期間と症状

感染から発症までの時間は24〜48時間です。

主に現れる症状として、 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛 です。発熱も見られますが37〜38度台と、高熱はあまり出ません。

症状は通常1〜2日間ほど続き、治癒へと向かいます。後遺症が残ることもありません。 ただし、高齢者や乳幼児、成人でも体調不良であったりした場合、免疫力の低下した状態では長引くこともあります。激しい嘔吐や下痢による脱水症状はとても危険です。

また、感染しても発症しない場合や、軽い風邪のような症状で済むこともあります。

カキとノロウイルスとの関連性

ロウイルスといえば「カキ」、そう思っている人も少なくはないはず。

では、なぜカキからノロウイルス感染が起こるのでしょうか?カキがノロウイルスを持っているから?違います。人がカキを汚染しているのです。

ノロウイルスに感染した人の糞便、嘔吐物が下水処理場へ流れる

下水処理場で完全に除去しきれなかった少量のウイルスが河川、海水を汚染する

カキはプランクトンを餌にしており、同時に汚染された海水をも吸収するため、カキの内臓内でウイルスが蓄積・濃縮される

汚染されたカキを生、加熱不十分な状態で食べる

こういったサイクルの繰り返しで感染が起こるのです。

カキを食べる時に気を付けること

冷凍してもウイルスは死にません。むしろ、温度が低ければ、より長時間生存出来るのです。

■生カキ以外なら大丈夫?

カキの中心温度が85度になった状態から1分間加熱することで、ノノロウイルスの活動は不活化すると言われています。

カ酢ガキは、お酢を使っているので殺菌作用があるように思われがちですが、生で食べるのは避けた方が無難です。フライは中まで火が通りにくいので、十分に加熱しましょう。180度前後の油で4分以上揚げることで、食中毒の発現率はかなり軽減すると言われています。

カキ以外の貝なら食べてもいいの?

先ほどの説明のとおり、カキはプランクトンを取り込む際に大量の海水を吸引することで、その体内(内臓、中腸腺)にウイルスを蓄積させます。アサリ、ハマグリ、赤貝などの二枚貝も同様にプランクトンを餌としているので、これら二枚貝もノロウイルスに汚染されている可能性があります。

しかしサザエやアワビなどの巻貝、一枚貝は、海藻を餌としているため、海水を大量に吸引することがなく、ノロウイルスの汚染は極めて少ないといえます。これらの貝を食した時の感染の危険性はないとは言えませんが、食中毒はほとんど起きていません。

治療法は?

ノロウイルスには有効な抗ウイルス剤はなく、通常、対症療法が行われます。特に、免疫力の低い乳幼児や高齢者は脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないよう、水分と栄養の補給を十分に行ってください。脱水症状がひどい場合には水分の損失を防ぐため、病院で輸液などを点滴し治療する必要があります。

下痢がひどいからと、安易に強い下痢止めを服用してはいけません。無理に下痢を止めるとウイルスが腸管内へ長く留まり、病気の回復を遅らせることがあります。

ノロウイルスを予防しよう!

  • 食事の前やトイレの後などには、せっけんを使いしっかりと手を洗いましょう
  • タオルなどの共有は出来るだけ避けましょう
  • 下痢や嘔吐などの症状がある方は、食品を直接取り扱う作業をしないようにしましょう
  • 食品はしっかりと加熱しましょう
  • 便や嘔吐物の処理をする時は素手では触らず、必ずビニール手袋を着用しましょう。汚物の消毒には、市販の塩素系消毒剤(漂白剤)を希釈したものを使用してください