日に日に暑さが増してきました。水分、栄養をしっかり摂って体調管理に気を付けましょう。
今回のテーマは ドライアイ(乾き目) についてです。
2014年7月
ドライアイとは_~涙の役割~
嬉しいとき、悲しいとき、感動したとき、痛いとき、自然に湧き出てくる涙。感情を表したり、目の表面を潤してくれたり。それだけではありません。実は貴重な成分を含み、すばらしい働きをしてくれているのです。例えば、
目の乾燥防止 / 目の殺菌 / 洗浄 / 角膜などへの酸素、栄養供給 など。
また、無色透明の涙は実は血液と同じような成分で、以下の成分を含んでいます。
- ナトリウム、カリウム、塩素(電解質)
- ビタミンA、ビタミンC(ビタミン)
- ブドウ糖(栄養成分、エネルギーのもと)
- アルブミン(たんぱく質の主要成分)
- ラクトフェリン、IgA(抗菌作用、免疫成分)
- EGF(細胞成長因子)
涙の減少や成分の変化によって、結膜や角膜などの目の表面がいわゆる「肌荒れ」のような状態になり、様々な症状が現れる状態を ドライアイ といいます。ドライアイは大きく2つに分類することができます。1つは、涙の分泌量が減ってしまう『涙液減少型』、もう1つは、涙が分泌されていても目に留まらずすぐに乾いてしまう『蒸発亢進型』です。長時間のパソコン作業やコンタクトレンズの装着、エアコンによる乾燥などにより、近年では蒸発亢進型のものが増加傾向にあります。
■もしかしてドライアイ?自己診断!
下の12項目のうち5個以上にチェックが付いたら、ドライアイの可能性を疑ってみましょう。
□ 目が疲れやすい
□ 目が痛い
□ 目やにが出る
□ 10秒間目を開けていられない
□ 目がゴロゴロする
□ ものがかすんで見える
□ 目が重たい感じがする
□ 目がかゆい
□ 目が乾いた感じがする
□ 光をみるとまぶしい
□ 目に不快感がある
□ 目が充血する
ドライアイの原因
ドライアイの原因は涙の異常です。内科的疾患から起きるもの、角膜移植など目の手術に伴うもの、服用している薬の副作用でも起こり得ますが、一般的なドライアイは環境によるものが大きいと考えられています。
- まばたきの減少:パソコンや携帯電話、テレビなどを凝視するとまばたきの回数が減ります。まばたきの回数が減ると涙の分泌を促す涙腺の刺激が少なくなり、その結果涙の量が減ってしまいます
- 空気の乾燥:オフィスや家庭では冷暖房によって温度が快適に保たれています。しかし、湿度は乾燥しています。そのため目の表面の涙も蒸発しやすくなります
- ストレス:涙の分泌は副交感神経(リラックスした状態)に支配されており、交感神経(緊張した状態)が優位に働く状態では減少するメカニズムがあります。現代人の抱えるさまざまなストレスにより涙の分泌が抑制されているのです。涙の油分が少なくなり、蒸発しやすくなることもあります
- 生活の乱れ:夜は昼間に比べ涙の分泌量が減ります。この時間帯にパソコン仕事、テレビやゲームで目を酷使する夜型の生活ではドライアイを誘発してしまいます。他にも食生活、運動不足などライフスタイルの関係性も指摘されています
ドライアイになりやすい人って?
現代の社会では、パソコンのモニターやテレビ、携帯電話など、何らかのディスプレイを見ないで過ごすことはまずないと言っていいでしょう。デジタルワークの欠かせない働き盛りの世代では、日常的に目を酷使このように目を使うことでせざるを得ない状況にもあるでしょう。このような生活によって視力の低下が進み、コンタクトレンズを装着している人も年々増えている傾向が見られます。
以下に当てはまる項目の多い人は、ドライアイかもしれません。
- パソコンワークの多い人
- コンタクトレンズユーザー
- 比較的若い年齢層
- 夜更かししがちな人
- 食生活が不規則な人
- 冷暖房などによる乾燥した空間で過ごす時間の長い人
ドライアイの治療
症状を感じたら、眼科で検査を受けましょう。涙の量や安定性、角膜、結膜の状態をみます。治療法には以下のようなものがあります。
- 点眼薬
症状が軽い場合は、潤いを持たせる点眼薬で緩和させることができます - 涙腺プラグ
涙の出口である涙腺に、栓(涙腺プラグ)をして、涙の生理的な排出を人為的に遮断する治療です。出口を塞ぐことにより涙が溜まりやすくなります - 悪化要因の除去
長時間のパソコン作業や運転では、瞬きの回数が減るのでドライアイの症状を悪化させます。また、涙の状態を悪くさせる内服薬、コンタクトレンズの装用を減らし控えることも一つの手です - その他
目を温めることは目の疲れを取るのに有効だといわれています。涙の蒸発を防ぐ保護メガネ、保湿を図るための加湿器なども積極的に使用しましょう
ドライアイの治療に使われる代表的な点眼液は、涙に近い成分をもつ『人工涙液』、ヒアルロン酸を含む『角結膜上皮障害治療薬』です。ヒアルロン酸には粘性があり、水分を保つ効果があります。人工涙液のように水分を補給するだけでなく、涙や点眼液を目の表面に長く保てるため、角膜の傷の修復、治療にもつながるのです。
※当院採用医薬品※
人工涙液:
マイティア点眼液
角結膜上皮障害治療薬:
ヒアレイン点眼液0.1% , ヒアレインミニ点眼液0.1%
点眼薬は通常5分程で吸収・排出されてしまうので、なるべくこまめに点眼しましょう
ドライアイによる目以外の症状
一般的なドライアイは、それ自体失明につながるような重篤な病気ではありません。そのため軽く思われてしまいがちですが、悪化させると慢性の頭痛や肩こり、全身の倦怠感、果てはそれらから生じるうつ症状に至るケース(※VDT症候群)もあります。
※VDTとはVisual Display Terminalの略で、これを長時間使用したことによる心身トラブルの症状をいいます。パソコンを使って仕事をする人の60~80%に何らかの疲労症状がみられ、その状況は作業時間の長さに比例して増加します。首や肩のコリ、痺れ、イライラ感や不眠といった抑うつ状態が生じるなど、精神面にも影響を与えます。
ドライアイの予防
- パソコン作業などで画面に向かう時は、まばたきを意識的に増やします。長時間のデスクワークに携わる人は一定の時間で切り上げ、別の作業をするなどして休憩を交えるようにしましょう。1時間に10~15分の休憩が理想的です。蒸しタオルで瞼を温めたり、遠くの景色をぼんやりと眺めたりしましょう
- 画面に照明や窓の光が映り込むと画面が見づらくなり、凝視(まばたきをせずにじっと見つめること)が起きます。文字が小さくても同様です。見やすい画面で作業しましょう
- 空調の風が顔にあたると、目はすぐ乾いてしまいますので、仕事環境にも配慮しましょう。室内が乾燥している場合は加湿器を置くなど、適度な湿度に注意しましょう
- 目が疲れたら、蒸しタオルをまぶたの上にのせて5分ほど休憩しましょう。腕を伸ばす、首を回すなどのストレッチで同じ姿勢を避けましょう。肩こりにも有効です
- 午後や夕方になると目の調子が悪くなる、という人はドライアイの可能性が大です。ドライアイに詳しい眼科で検査を受け、早期の対処で悪化させないようにしましょう
- コンタクトレンズを使用していて、目がゴロゴロする、充血する、などの症状が出る場合は、ドライアイの可能性が大です。そのような状態でコンタクトレ ンズを使い続けることはさらに病状を悪化させることになります。コンタクトレンズの使用は中止する、または違和感が出ない程度の短時間使用にして、メガネと併用しましょう
- 防腐剤の入っていない人工涙液タイプの目薬を使う
- 保水性の高いレンズを選ぶ
- 消毒力が高く、親水成分を含むもレンズ用消毒剤を選ぶ
- 市販の点眼薬や洗浄液の乱用は、かえって症状を悪化せることがあります。点眼薬に含まれる防腐剤や刺激物の副作用で、貴重な自分の涙が洗い流されてしまうのです。眼科で適切な指導と治療を受け、自分の涙を増やすように心がけましょう
★コンタクトレンズ使用における注意点★
ドライアイは、VDT症候群の他、アレルギーなどを併発する場合も多く見られます。ドライアイだと思っていたら違う病気であった、という場合もあります。目の疲れ、気になる症状が現れたときは、自己の判断に頼らず眼科を受診しましょう。