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土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

朝夕日毎に涼しくなり、秋の気配が色濃くなって参りました。

今回のテーマは 不眠症 〜予防と適切な治療〜 です。

2014年9月

はじめに

人をはじめとする動物はなぜ眠るのでしょうか。1日のうち数時間を費やす「眠り」は無駄なことのように思われもしますが、そんなことはありません。脳と身体の疲労回復、特に大脳を休ませ修復するためには、睡眠というメンテナンスが必要不可欠なのです。

記憶の整理や定着、 ストレスの除去、 ホルモンの分泌、 成長ホルモンによる身体の修復や成長、 免疫機能の維持、 判断や情動など大脳の司る高次脳機能の休息

私たちが眠っている間、脳と身体では以上のようなことが行われています。

ノンレム睡眠とレム睡眠

眠りには、ノンレム睡眠、レム睡眠の2種類があるのはよく知られています。しかし、名前を知ってはいてもその内容を把握されている人は少ないのではないでしょうか。

★ノンレム睡眠★

深い寝息で眠っている状態です。睡眠の約8割がこのノンレム睡眠だと言われています。この時脳は活動を低下させ、休息しています。大脳の活動度が低いほど眠りが深いとされ、熟睡状態、つまり深いノンレム睡眠の状態のときは多少の物音で目が覚めることはそうありません。脈拍、血圧、呼吸は安定していて、生長ホルモンの分泌や免疫増強作用などが身体の中で働いています。また、最近の研究では、深いノンレム睡眠が記憶の強化に重要な役割を果たしていると言われています。多少睡眠時間が短くても、深いノンレム睡眠がとれていれば脳は効率良く回復してくれます。深いノンレム睡眠がとれることは、睡眠の質が良いとも言えるわけです。

★レム睡眠★

人は浅く早い呼吸をしていて眼球が活発に動いています。レム(REM)とは、Rapid Eye Movement の頭文字を取ったものです。睡眠中枢の働きで筋肉の緊張がゆるみ全身の力は抜けているけれど、脳は活発に動いていて、交感神経は緊張状態にあります。レム睡眠は、脳の記憶情報処理にも関わっていて、それが夢にもつながっていると考えられており、不可思議な夢を見るのはレム睡眠時だと言われます。大人の場合、睡眠時間の2割強がレム睡眠に費やされています。一方で、生まれたばかりの赤ちゃんの場合、睡眠時間のうち5割をレム睡眠が占め、成長と共にこの割合は減少しています。このため、レム睡眠は、脳の発達にも重要な役割を果たしているのではないかとも考えられています。

脳をクールダウンさせるためのノンレム睡眠、活性化させるためのレム睡眠。このとおり、どちらも脳の活動に必要な役割を果たしているのです。

不眠症とは

寝付きが悪い、眠りを維持出来ない、朝早くに目が覚める、眠りが浅く十分に眠った感じがしない、などの症状が続き、睡眠時間の不足から日中の眠気や注意力の散漫、疲労、倦怠感など、種々の体調不良が起こる状態をいいます。

日本人の約5人に1人が、このような不眠の症状で悩んでいるとされています。不眠症は小児期や青年期にはまれですが、20〜30歳代に始まり加齢と共に増加し、中年、老年と急激に増加していきます。また、男性よりも女性に多いといわれています。

不眠症は大きく4つのパターンに分けられます。自分がどのタイプの不眠症であるのかを把握しておくことは、対策や治療にあたりとても重要です。以下のうち、あなたに当てはまる症状はありますか?

★こんな不眠も…

現代の日本では、休む間もなく動く24時間社会の中でシフトワーカー(交代勤務)や夜間勤務が増加し、その割合は2007年に27%と10年前の1.4培になっています。昼夜逆転し夜型の生活に慣れてしまうと、睡眠ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」の分泌が低下してしまいます。こうしたメラトニンの分泌低下、体内時計の乱れによってもたらされる「現代型不眠」が増えつつあります。

不眠症の原因

眠れない原因には、以下のようなものがあります。

  • 環境要因
    時差のある場所、枕が変わる、天候や気温、騒音や明るさなど周囲の影響を受ける
  • 身体要因
    年齢、身体の痛みやかゆみ、頻尿など
  • 心の要因
    悩みやイライラ、不安、緊張、その他ストレス
  • 生活習慣要因
    アルコール・カフェイン・ニコチンの摂取、内服している薬の副作用、運動不足など

ドライアイによる目以外の症状

一般的なドライアイは、それ自体失明につながるような重篤な病気ではありません。そのため軽く思われてしまいがちですが、悪化させると慢性の頭痛や肩こり、全身の倦怠感、果てはそれらから生じるうつ症状に至るケース(※VDT症候群)もあります。

※VDTとはVisual Display Terminalの略で、これを長時間使用したことによる心身トラブルの症状をいいます。パソコンを使って仕事をする人の60〜80%に何らかの疲労症状がみられ、その状況は作業時間の長さに比例して増加します。首や肩のコリ、痺れ、イライラ感や不眠といった抑うつ状態が生じるなど、精神面にも影響を与えます。

不眠症の治療法

不眠症の治療目的は、質的にも量的にも十分な睡眠を確保することにあります。睡眠薬を飲むというイメージがあるとおり、適切な薬物療法が行われます。

睡眠薬は薬の作用時間によって超短時間型、短時間型、中間型、長時間型の4種類に分類されています。

睡眠薬ごとの作用時間 超短時間型、短時間型、中間型、長時間型

★メラトニン受容体作動薬(入眠困難改善型):ロゼレム錠8mg

《特徴》

超短時間型・短時間型:
働きが短いので寝始めのときに有効、3〜4時間ほどで効果は和らぎます。比較的スッキリとした寝覚めであることが多いです。

中間型・長時間型:
効果が長めなので、短時間型を使って朝方早くに目が覚めてしまう人などは、こちらに変更する場合もあります。睡眠時間が短いと起きるのが辛い、起きてもボーッとしてしまうからという理由で服用することもあります。

睡眠薬について

睡眠薬は現在では睡眠導入剤とも呼ばれます。依存してしまったらやめられなくなる、大量に飲むと死んでしまう、という恐ろしいイメージを抱かれている人が多いのではないでしょうか。以前使われていたバルビタール系薬剤ではそのようなこともありました。ところが、現在の不眠症治療で使われる睡眠薬はベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤。ベンゾジアゼピン系薬剤には、興奮をしずめ緊張や不安を和らげる働きがあります。薬を急にやめたあとの禁断症状、依存性もバルビツール系薬剤ほど強くはありません。生命維持装置である脳幹には作用しないため、安全です。間違った飲み方をしなければ安心して服用出来るのです。

睡眠薬服用の際の注意点
  • 用法、用量をきっちり守って正しく服用しましょう
  • アルコールと一緒に睡眠薬を飲むことは絶対にやめましょう
  • 夜間、トイレに行く時には明かりをつけるなど、転倒に注意しましょう
  • 車の運転や危険な作業は避けましょう
主な副作用
  • 日中まで眠気が続く
  • 吐き気がしたり、下痢をしたりする
  • めまい、ふらつきが現れる
  • 寝る前の出来事を覚えていない

このような症状が出た場合は医師、薬剤師に相談してください。