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土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

日に日に秋が深まり、露寒の季節となりました。

今回のテーマは 高血圧 です。

2014年11月

はじめに

日に日に寒さがましてきますが、この時期、血圧が高めの人は注意が必要です。

寒くなると、私たちの体は体温を逃がさないように血管が収縮するため、血圧が上がりやすくなります。血圧が高めの人は寒さを感じたり、冷たい水等に触れたりすると、血圧がさらに高くなり、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす恐れがあります。

高血圧とは、血管が細く狭くなり血液の流れが悪くなることで、血圧が基準値よりも高くなることです。

血圧が高いということは、血管の壁に内側からかかる圧力が通常より大きいということで、血管の壁に悪い影響を与えることになり、いろいろな疾患の引き金になります。

降圧目標

血圧の目標値は年齢や合併症によりやや異なります。

引き起こされる合併症

高血圧は症状がないにもかかわらず、放っておくと寿命を縮めることにつながることから「サイレントキラー:静かなる殺人者」と呼ばれています。血圧が高いまま放置しておくと、いろいろな臓器障害(合併症)が起こります。たとえば心臓に負担がかかると狭心症や心筋梗塞などを起こしやすくなります。脳の血管に高い圧力がかかると血管が詰まったり、破れたりして脳卒中が起こります。腎臓の細い血管に障害が起こると腎不全になります。

高血圧そのものは死亡の原因にはなりませんが、血圧が高いことによって起こるさまざまな合併症によって寿命を縮めてしまうのです。

高血圧の治療

1.生活習慣の改善

高血圧の治療を進める際には生活習慣の改善が大変重要です。高血圧は、体の中の高血圧のもと(遺伝素因)に加えて、過剰なエネルギーの摂取や肥満、塩分の多い食事、運動不足、お酒の飲み過ぎなどの環境要因が加わることによって発症します。そのため、高血圧は「生活習慣病」とも呼ばれています。そのため、高血圧を予防するためには生活習慣の改善が大切ですし、高血圧を発症した場合には、さらなる生活習慣の改善が重要になります。具体的な例として脂質の摂取を制限する事、適度な運動を行う事、適正体重を維持する事、アルコールの摂取を適量にする事などがあげられます。生活習慣を改善すれば、高血圧ではあっても、薬を軽い種類に変えていったり、用量を減らしたり出来る可能性もあります。

また、カリウム(K)は魚、牛乳、果物類、豆類、野菜類などに含まれる栄養素ですが、体内の余分な塩分(ナトリウム)を体の外へ排泄することによって血圧を下げることがわかっています。ほうれん草やバナナ、納豆、ひじきなど、積極的にカリウムを摂る食事を心がけましょう。但し、全体のカロリー摂取がオーバーにならないように気をつけ、また腎臓の悪い人はカリウムの摂りすぎに注意しましょう。

2.薬物治療

生活習慣の改善では血圧が下がらないケースや、リスクが多く最初から降圧薬で対応することが必要なケースでは、降圧薬による薬物療法が行われます。薬物療法に用いられる降圧薬には、一般的にはカルシウム(Ca)拮抗薬、アンジオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬、β遮断薬(含αβ遮断薬)の5種類があります。降圧剤を2〜3カ月服用しても、降圧目標値まで血圧が下がらない場合には、薬の種類や量を増やしたり変更したりします。

配合剤治療薬

降圧剤は上記に示した通り様々な種類がありますが、今回は配合剤を紹介したいと思います。

配合剤とは、2種類のお薬の成分を1つの薬の中に含ませた医薬品です。

配合剤にすることで、

  1. 飲む薬の数を減らすことができる
  2. 飲み忘れを防ぐことができる
  3. お薬の値段を抑える事ができる

などの利点があります。

当院にある合剤

< 降圧剤+利尿薬の合剤 >

2つの成分が一緒に作用することで、十分血圧が下がるようになります。また心臓や腎臓の負担が軽くなる効果も期待できます。

降圧剤+利尿薬の合剤

< 2種類の降圧剤の合剤 >

下に挙げる薬は、異なる2種類の降圧剤を合わせた薬です。

心臓や体の血管を広げて、血圧を下げます。また心臓の収縮を抑えて、心臓を休ませる働きもあります。

2種類の降圧剤の合剤

まとめ

高血圧は様々な合併症を引き起こす事があります。

高血圧と診断されたら、医師の指示に従うだけでなく、患者さん自身が治療に参画する意識をもつことが大切です。

栄養バランスの良い食事をとり、適度な運動をとるなど日々の生活習慣を整えましょう。また薬物治療を行い、血圧を適度に保つことによって合併症の発病を防ぐことが高血圧治療では大切です。