朝夕の寒気が身にしみる頃となりました。
今回のテーマは インフルエンザ です。
2015年1月
はじめに
2009年の冬までは、2つのA型インフルエンザ(香港A型とソ連A型)とB型インフルエンザのあわせて3つのインフルエンザが流行していました。これらをまとめて季節性インフルエンザといいます。2009年春からはそれらに加え新型インフルエンザが流行し、世界中に広がりました。季節性インフルエンザは、主に冬場に流行していましたが、新型インフルエンザは夏場にも流行しています。
かぜとインフルエンザの違いについて
かぜとインフルエンザは症状も原因もはっきり異なります。
かぜは、のどの痛み、鼻水、咳などの症状を伴う呼吸器の急性の病気の総称で、正確には「かぜ症候群」と言います。発熱、頭痛、食欲不振などが起こることもあります。健康な人でも年に数回程度かかるといわれています。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気です。普通のかぜよりも急激に発症し、症状が重いのが特徴です。インフルエンザに感染すると、1〜3日の潜伏期間の後、38℃以上の高熱や筋肉痛などの全身症状が現れます。健康な人であれば、その症状が3〜7日間続いた後、治癒に向かいます。気管支炎や肺炎を併発しやすく、脳炎や心不全になる場合もあります。高齢の方、基礎疾患(慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、糖尿病などの代謝性疾患、腎機能障害、ステロイド内服などによる免疫機能不全)を持つ方、妊娠中の方、乳幼児がインフルエンザにかかると、気管支炎、肺炎などを併発し重症化し、最悪の場合は、死に至ることもあります。特に新型インフルエンザの場合はその危険性が増します。そのため「インフルエンザかな?」と思われる場合は、早めに医療機関を受診して、適切な治療を受けるようにしましょう。
新型インフルエンザについて
新型インフルエンザとは、今までと違ったインフルエンザウイルスによる感染症です。ほとんどの人がウイルスに免疫を持たないため、感染が拡大し世界的な大流行「パンデミック」を起こし、今までも、大きな健康被害と社会的影響をもたらしてきました。
なお、2009年春に発生した新型インフルエンザは、豚を起源とするところからブタ由来インフルエンザと呼ばれていましたが、現在では主に新型インフルエンザという言葉が使われています。しかし、いつまで新型といわれるかは分かっていません。また、別の新たなウイルスが流行する可能性も否定できません。
症状は、通常の季節性インフルエンザとほぼ同じです。ただし、季節性インフルエンザに比べて、下痢などの消化器症状が多い可能性が指摘されています。ほとんどの方が軽症で回復していますが、上記に記したような基礎疾患がある方のなかには、治療の経過や管理の状況によりインフルエンザに感染すると重症化する可能性があります。
予防策について
予防の基本は、流行前にインフルエンザワクチンを接種することです。ワクチン接種以外では、日常からの衛生習慣が大切です。
■日常生活でできる予防
日常生活ではまず、体調を整えて抵抗力をつけ、ウイルスに接触しないことが大切です。
○栄養と休養を十分に取る
体力をつけ、抵抗力を高めることで感染しにくくなります。
○人ごみを避ける
病原体であるウイルスを寄せ付けないようにしましょう。
○外出後の手洗いとうがい
手洗いは接触による感染を、うがいはのどの乾燥を防ぎます。
○適度な湿度を保つ
空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下しインフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50〜60%)を保つようにしましょう。
○マスクをする(咳エチケット)
インフルエンザは、感染している人のくしゃみや咳、つばなどの飛沫と一緒に放出されるウイルスを、のどや鼻から吸い込むことによって感染します。また、飛沫が付着したものを触ることによって、手を介して口や目、鼻の粘膜から感染するケースもあります。自ら予防することはもちろん重要ですが、それ以外の人たちもなるべく感染しないようにすること、感染しても他の人に移さないように配慮しましょう。
感染を広げないために、一人一人が「感染しない」「感染を拡げない」ことを意識して、予防策を実施しましょう。
ワクチン接種について
今年から「四価」ワクチン
今年度の季節性インフルエンザワクチンは、インフルエンザA(H1N1)亜型(インフルエンザ(H1N1)2009)と同じ亜型)、A/H3N2亜型(いわゆるA香港型)、B型(山形系統)、B型(ビクトリア系統)の4種類が含まれたワクチン(いわゆる4価ワクチン)です。
なお、これまでは3種類が含まれたワクチン(いわゆる3価ワクチン)でしたが、近年、インフルエンザB型の流行が2系統(山形系統とビクトリア系統)のウイルスが混合していることから、今年度より4種類が含まれたワクチン(いわゆる4価ワクチン)を導入しています。
接種時期
日本では、インフルエンザは例年12月〜3月頃に流行し、例年1月〜2月に流行のピークを迎えます。ワクチン接種による効果が出現するまでに2週間程度を要することから、毎年12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましいと考えられます。
抗インフルエンザ薬について
ウイルスが増えるのを防ぐ内服薬、吸入薬、注射薬があります。どの薬も、ウイルスが増えてしまった後ではあまり効果が見られないといわれており、症状が発現してから 48時間以内 に開始する必要があります。
抗インフルエンザウイルス薬には、タミフルの他にリレンザ、ラピアクタ、イナビル等の医薬品がありますが、これらの医薬品の服用後にも、急に走り出すなどの異常行動の発生が認められています。また、インフルエンザにかかった時には、医薬品を何も服用していない場合や解熱剤のアセトアミノフェンだけを服用した後でも、同様の異常行動が現れることが報告されています。インフルエンザに罹患して、自宅において療養を行う場合には、突然走り出して2階から転落するなどの事故を防止するため、医薬品の服用の有無にかかわらず、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮しましょう。
抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間は通常1〜2日間短縮され、ウイルス排出量も減少します。なお、症状が出てから2日(48時間)以降に服用を開始した場合、十分な効果は期待できません。効果的な使用のためには用法、用量、期間(服用する日数)を守りましょう。
また、インフルエンザが疑われるような症状が出た場合は、インフルエンザ脳炎発症の可能性があるため、アスピリン、ジクロフェナク、メフェナム酸といった市販で売られている解熱剤を服用してはいけません。自己判断で市販の薬を汎用しないように気をつけてください。