新緑のきれいな季節になりました。
気温もぐんぐんあがって夏の気配が感じられる今日このごろです。
今回のテーマは たばこの害 です。
2015年5月
はじめに
平成20年4月より、当院は敷地内全面禁煙となりました。
また、未成年者喫煙防止対策として、「taspo(タスポ)」がなければ自動販売機でたばこを買えなくなるなど、規制が増えてきています。
たばこの煙について
たばこの煙からは、現在分かっているだけでも4000種以上の化学物質が発見されています。そのうち、有害であると確認されている物質は200種を超え、発がん性物質は60種近くあります。
たばこの煙はたばこを透過して喫煙者が吸い込む主流煙と、たばこの点火部から立ち昇る副流煙に分かれます。有害成分の量は副流煙の方が多く、喫煙者の周囲の人が煙を吸い込んでしまう受動喫煙が問題視されるようになったのはこのためです。
ニコチン
血管が収縮してしまう!
ニコチンは体の毛細血管を収縮させる働きを持っています。心拍数の増加・血圧上昇などがおこったり、血液の流れを悪くし動脈硬化を促進させることから、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患にかかりやすくなります。
その毒性は青酸並み!
初めてたばこを吸うと頭がくらくらしたりせきこんだりします。ひどいときは気分が悪くなったり、鼓動が早くなって冷や汗をかいたりします。これはニコチンの急性中毒症状です。
強度の依存性!
ニコチンには麻薬にも劣らない依存性があり、ニコチンの作用が体内から切れてくるとまた欲しくなって、ずっとたばこがやめられないというサイクルが起こります。依存性の高さは、ヘロイン並と言われています。
■各使用者の中で依存症になる人の割合
ニコチン > ヘロイン > コカイン > アルコール > カフェイン
タール
発がん物質が含まれています!
フィルターに茶色く付着するいわゆるヤニのようなべっとりしたものの総称をタールといいます。タールには、発がん性物質の代表として有名なベンツピレンを筆頭に、数十種類近くの発がん性物質が含まれています。タールを少量ずつ、毎日ウサギの耳に塗りつづけると、やがてその部位の皮膚にがんが発生していくことが実験によって証明されています。同様に1本のたばこに含まれるタールの量はごくわずかでも、それが長年月にわたって蓄積されていくことによって、ついにはヒトも発がんに至るのです。
一酸化炭素
酸素の運搬に障害!
よく火事のニュースで一酸化炭素中毒になって死亡ということを聞かれると思います。その一酸化炭素と全く同じものがたばこから発生します。一酸化炭素は赤血球に含まれるヘモグロビンと結合しやすい性質(酸素の200倍)を持っているため、この物質が増えると酸素が充分に運ばれなくなってしまい、心臓への負担や、脳の働きの低下の原因になってしまいます。
たばこはあらゆる病気のリスクファクター
煙の害というと、多くの人たちは肺がんを連想します。確かに喫煙は肺がんの重要なリスクファクターですが、他の多くのがんのリスクも高めているだけでなく、がん以外の、体のあらゆる部位の疾患にも影響しています。
世界保健機関(WHO)などによる試算では、世界中で年間約300万人が、たばこが原因で死亡しており、現在の喫煙傾向が続くと、20〜30年後にはそれが年間約1000万人になると予測されています。
日本でたばこが原因とされる死亡数は、2000(平成12)年には114,200人(男性90,000人、女性24,200人)に達しています。20年で約2倍に増加したことになり、この傾向はさらに続くことが予想されています。
ニコチンの致死量は?
急性ニコチン中毒の発生原因として、日常最もよく見られるのが、乳幼児による誤飲です。1本のたばこは15〜20mgのニコチンを含有しています。乳幼児の致死量は10〜20mgですから、たばこ1本分のニコチンをまるまる摂取すると極めて危険です。
実際には、たばこを飲み込んでもニコチンの催吐作用によって、たばこを吐き出してしまうので、重症となることはまれともいわれています。それでも危険であることは明らかです。大人の中毒量は1〜4mg、致死量は30〜60mgとされていますが、たばこ1本の喫煙では平均で3〜4mg吸収します。
危険!「吸わされる」たばこ
たばこの煙には主流煙と副流煙の2種類があります。受動喫煙について、聞いたことがありますか?
受動喫煙は、自分の意思とは無関係に、他人のたばこの煙(副流煙)を吸わされることをいいます。
ここで注目したいのが、副流煙の方が主流煙よりはるかに有害だということです。たばこを吸う人は、フィルターを通して吸うことと、たばこの燃焼温度の関係で有害物質は少なくなりますが、たばこを吸わない人は、喫煙者本人以上に有害な煙を吸ってしまいます。
最近、たばこを吸わない日本人女性に関するこのようなデータが発表されました。
●夫が1日20本以上喫煙するときの妻の肺がん死亡率
(夫が非喫煙者である場合を1.0とする)
→約2倍
●家庭内にたばこを吸う人がいる子供の気管支喘息の発症率
(吸わない家庭を1.0とする)
→約3倍
この肺がんリスクは、夫の喫煙本数が多いほど高まっていました。
さらに肺がんのみならず、脳卒中、慢性閉塞性肺疾患や肺気腫などの既にある呼吸器疾患の悪化、喘息の誘発と悪化、動脈の損傷・脆弱化・血栓、心筋梗塞、狭心症など、また、妻が妊娠していた場合、低出生体重児または妊娠期間に比して小さい胎児、早産などを招く恐れもあります。
また空気清浄機は、たばこの匂いは除去しても、たばこから発生する全ての有害物質を除去できるわけではありません。
薬とたばこの関係
薬の効果が、飲食物やアルコール等で影響を受けるということは、誰でも一度は耳にした事があると思います。 一方、薬は喫煙によっても影響を受けるということをご存じですか?
薬が体に入ると、肝臓で酵素により代謝(薬の形を少し変えて、腎臓から排泄されるようにすること)されて、体からなくなっていきます。たばこの煙に含まれる成分が体内に入ると、肝臓のある種の酵素を活発にさせます。
そのため、この酵素によって代謝される薬物は、本来よりも速やかに分解され、無効化されてしまいます。つまり、たばこを吸わない人よりも薬の効果が弱くなってしまいます。
喘息の薬(気管支拡張剤)であるテオフィリンの場合、喫煙者は非喫煙者の1.5倍の量を服用しないと同じだけの効果が得られないと言われています。そこでもし突然禁煙すると、本来ならばそんなに多くの薬がいらない状態なのに、薬を多く飲んだままになるので、テオフィリンによる中毒症状が現れることがあります。
そうならないために、薬の減量などの処置が必要になる場合があるので、持病をお持ちで、何らかの薬を服用されている方が禁煙する際には、必ず医師にお伝えください。
また、このたばこと薬の相互作用については、1日20本以上喫煙する人に頻繁に起こる傾向があると言われています。しかも、この相互作用は先ほど述べた受動喫煙でも起こるというデータがあります。
それでもあなたはたばこを吸いますか?
以上の事からおわかりのようにたばこは「百害あって一利なし」ですね。でも意思が弱いと禁煙は無理だと思っている人も多いのではないでしょうか?
禁煙できないのは意思が弱いからではありません。ニコチンには依存性があり、たばこをやめられない人はニコチン中毒にかかっています。ニコチン中毒の辛さは生半可なものではありません。ニコチンの禁断症状を和らげ、禁煙の手助けをする禁煙補助剤というものがあるので利用してみてはいかがでしょうか。
禁煙補助剤
禁煙を助ける禁煙ガムと禁煙パッチ
依存度の強い喫煙から抜け出すために注目を浴びている禁煙方法が、ニコチン代替療法です。主なものが禁煙ガムと禁煙パッチです。禁煙にチャレンジしてみた人はご存知でしょうが、禁煙でつらいのは ニコチンの攻撃による離脱症状 と、 生活習慣化した精神的依存から抜け出すことです。禁煙補助剤はいずれもニコチンを含有しており,噛んだり貼ったりしますとニコチンが体内に入ってきますので、たばこを吸わなくても離脱症状を自覚することが少なくなるというわけです。
当院にある禁煙補助剤
あなたも禁煙に挑戦しよう!
教えます! 禁煙のコツ
- 禁煙開始日を決める(長期休暇の前や仕事の忙しくない時期がお勧め)
- 軽い気持ちで休煙から始めてみる
- やめたい理由をはっきりと
- 禁煙の決意をみんなに公表しよう
- キッパリとやめよう
- 誘惑の多い場所は避けよう
- 吸いたくなったら気をそらそう
- 3日、1週間、1ヶ月節目節目に家族でお祝いをしよう