いま求められている医療の最高レベルを目指すとともに、明日の医療のあり方 に機能しよう/医療法人あかね会

あかね会TOP > 土谷総合病院 > 薬剤部 > くすりの窓

土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

年も改まりましたが、いよいよ本格的な冬となり日ごとに寒さが増して参ります。暖かくして乗り切りましょう!

今回のテーマは 口腔ケア です。

2016年1月

はじめに

口はきちんとした手入れをすればその努力の分だけ効果が現れます。いつもの歯磨きに少しだけ工夫をしてみましょう。 丁寧に、あせらず、口腔ケアを続けていくことが 口をきれいにする何よりの近道です。 今回は歯周病、舌苔、口内炎について紹介します。

歯周病とは

歯の根の部分は歯槽骨(しそうこつ)というあごの骨の中に埋まっています。そして、そのあごの骨を覆って守っているのが歯肉(しにく=歯ぐき)です。つまり、あごの骨や歯肉によって歯は支えられているのです。歯周病とは、歯を支えている歯肉や骨におこる病気で、歯肉炎と歯周炎(歯槽膿漏)があります。

歯周病にかかってしまうと

生活習慣病の一種であるこの歯周病こそ、歯を失う最大の原因です。歯周病菌は、誤嚥性肺炎の原因菌の一つと言われています。また、歯周病は国民病とも言われ、免疫力が低下する40歳以上の日本人のうち80%の方がかかっていると言われています。

歯を失うことや歯周病は、口だけではなく、全身の健康にも関わる問題です。残存歯数(口の中に残っている自分の歯の数)や歯周病の有無が、誤嚥性肺炎だけではなく認知症、心臓病、糖尿病など様々な疾患の予防にまでつながることが最近の研究でわかってきました。

全身の健康を維持し、歯周病を未然に防ぐためにも、口腔内を清潔に保ち、定期的な検診を受けることはとても重要です。

歯周病と全身疾患

歯周病の発症や病状は、歯周病菌による持続的な感染と、患者さんが本来持っている体を守る仕組みの生体防御(免疫反応)とのバランスによって決まります。

つまり、歯周病菌の攻撃力を上回る"生体防御力"が備わっておれば、歯周病にかかったり、病状が進んだりすることはありません。しかし、細菌の病原性が強いか、細菌数が多いか、もしくは患者さんの"生体防御力"が落ちている場合、歯周病を発症したり、その病状が悪化したりします。

ですから、歯周病菌に対する"生体防御力"や歯周組織の抵抗性が弱くなるような病気を持つ患者さんは、歯周病に要注意です。要注意の病気には、糖尿病、白血病、骨粗鬆症やエイズなどがあります。

歯周病が全身の健康に与える影響

歯周ポケット内に潰瘍ができれば、細菌がここから体内に侵入しやすくなります。さらに、歯周病は慢性の炎症疾患ですので、炎症が起こった歯周組織では、さまざまな炎症関連物質や炎症を強めるように働くたんぱく質が継続して作られるようになります。その影響が、歯周ポケットから血管を通じ全身にも波及すると、全身に何らかの影響を与えることになります。

実際に、歯周病は糖尿病だけでなく、細菌性心内膜炎、その他の循環器病、誤嚥(ごえん)性肺炎、早産・低体重児出産、敗血症、糸球体腎炎、関節炎、掌蹠(しょうせき)膿疱症(のうほうしょう)(手のひら、足の裏に膿をもつ発疹ができる皮膚病)などの原因の一つとなったり、その病状を悪化させたりする危険因子として報告されています。

舌苔とは?

舌苔とは、舌につく汚れのことで、細菌、だ液の成分、口に残った食べかすの集合体です。口腔内がだ液で潤っていて、よく動く舌は、食べ物や歯、上あごなどとの適度な摩擦により、その表面である粘膜が新陳代謝を繰り返すようにできています。

舌が白くなる原因として、舌カンジダ症があります。カンジダという真菌の一種が増殖します。主な原因は抗菌薬投与による口腔内菌交代現象・抗アレルギー薬や免疫抑制薬・抗ガン薬・ステロイドの投薬、過労などの体力低下です。

当院の舌カンジダ症治療薬

当院の舌カンジダ症治療薬

ファンギゾンシロップは内服のほか、うがいで用いられることもあります。できるだけ長く口内に含み嚥下、又はうがいします。

口内炎の原因

  • 疲労や免疫力の低下が原因と考えられる「アフタ性口内炎」
    一般的にもっとも多くみられるのが「アフタ性口内炎(潰瘍性口内炎)」です。原因は、ストレスや疲れによる免疫力の低下、睡眠不足、栄養不足などが考えられています。
    アフタ性口内炎にかかると、赤く縁取られた2〜10mm程度の丸くて白い潰瘍が発生します。普通は10日〜2週間ほどで自然に消滅してあとは残りません。若い人に多くできる傾向があります。
  • ウイルスや細菌の増殖が原因の「ウイルス性口内炎」
    単純ヘルペスウイルスの感染が原因の「ヘルペス性口内炎(口唇へルペス)」や、カビ(真菌)の一種であるカンジダ菌の増殖が原因の「カンジダ性口内炎」などがあります。口の粘膜に多くの小水疱が形成され、破れてびらんを生じることがあり、発熱や強い痛みを伴うことがあります。
  • 物理的刺激によって起こる「カタル性口内炎」
    「カタル性口内炎」は、入れ歯や矯正器具が接触したり、ほおの内側をかんでしまったりしたときの細菌の繁殖、熱湯や薬品の刺激などが原因で起こる口内炎です。

当院の口内炎治療薬

口内炎に使用されるくすりには、殺菌成分・消毒成分・抗炎症成分などが含まれています。上手に活用してつらい口内炎を早くなおしましょう。

当院の口内炎治療薬

まとめ

これらの口腔ケアは、高齢者にとって多くのメリットがあります。口腔ケアを行うことで、歯科疾患予防から健康の維持や増進を行い、生活改善から食べることの意欲が湧き、最終的に生きることの意欲も増してくるのです。

自分の寿命より歯の寿命が長ければきっといい人生が送れるはずです。

ご自分なりの管理をよく行って、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けて予防に努めることをお勧めします。

最後に、 8020運動 をご存知ですか?1989年(平成元年)より厚生省と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われています。そのため、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動が始まりました。楽しく充実した食生活を送り続けるためには、健康な歯を保つことが大切です。ぜひ「8020」を目指してください。