肌にふれる風も快く感じられる季節となりました。日増しに春めいてきましたね。春といってもまだ寒い日がありますので、体調をくずさないように気をつけて下さい。
今回のテーマは 花粉症 です。
2016年3月
花粉症について
花粉症は、花粉によって生じるアレルギー疾患の総称であり、主にアレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎が生じます。
花粉が鼻に入ると、直後にくしゃみ、鼻汁が生じ、少し遅れてから鼻づまりの「即時相反応」が生じます。この時の鼻の粘膜は、風邪に近い赤い色の粘膜の腫脹を起こしています。このため、初めて花粉症になった時には、検査をしなければ風邪と勘違いする場合もあります。
目に花粉が入ると、直後に目が痒くなり、涙が流れ、目が充血してきます。症状が強いときは、鼻で吸収されなかったスギの抗原成分が鼻から喉へ流れ、喉の痒み、咳を生じます。また鼻づまりによる頭痛、鼻や喉の炎症反応による微熱、だるさなどの症状に悩まされます。
家の中にいるときなど、花粉がない状態でも症状はありますが、多くは花粉の繰り返しの吸入による鼻づまりの症状が主体です。これをアレルギー反応の「遅発相反応」と呼び、アレルギー物質に反応した細胞から放出されるロイコトリエンなどの物質が神経や血管を刺激するために症状が現れます。鼻の粘膜の知覚神経が刺激されるとくしゃみが起こり、その反射で鼻汁が出ます。鼻づまりは、血管の拡張と血管からの水分の放出により鼻が腫れるために起こり、目のかゆみはヒスタミンなどが神経を刺激するために起こります。
また花粉症は、遺伝的な体質、住環境、食生活などの様々な要因が重なって起こります。
原因となる花粉の種類と飛散時期
花粉飛散の要注意日の傾向と時間帯
- 風が強く、晴れている日
- 気温が高い日
- 湿度が低く、乾燥している日
- 前日に雨が降った日
1日のうち、花粉の飛散量が多いのはお昼過ぎです。そして、飛んだ花粉が上空から落ちてくる夕方には特に注意が必要です。
日常生活での注意点
外出をするときは
マスク、めがね、帽子をかぶりましょう
花粉症用のマスクでは花粉が約1/6、花粉症用のめがねでは1/4程度に減少することが分かっています。花粉情報に注意し、花粉飛散が多いときには無駄な外出は避けるようにしてください。
花粉を部屋にもちこまない
帰宅したら髪や肌・衣服についた花粉をよく払い、うがい、手洗い、洗髪をしましょう
家にいる場合でも、花粉飛散の多いときには窓の開け閉めに注意をしましょう。外出する場合にはけばけばした花粉のつきやすいコートを着ることは避けましょう。うがいは、のどに流れた花粉を除去するのに効果があります。かぜの予防にもなりますので、うがいをしましょう。花粉が付着しやすいのは表面に出ている頭と顔です。外出から帰ってきたら洗顔して花粉を落とすと良いでしょう。洗濯物もできるだけ室内に干し、布団はよく払ってから取り込むようにしましょう。
規則正しい生活
ストレスを避け、充分な睡眠をとるようにしましょう
全く症状をなくすことは不可能ですが、少しでも症状を軽くすることができると考えられています。鼻粘膜の状態を良くするように、悪化の因子であるストレス、睡眠不足、飲みすぎなどを抑えることが必要です。
花粉症の治療薬
内服薬
- 抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン、タリオン、アレロック、ザイザル、アレジオン、クラリチンレディタブ、エバステル、ザジテン、ニポラジン、セルテクト、アゼプチンなど)
→眠気・口渇などの副作用が現れることがあります - ステロイド薬と抗ヒスタミン薬の合剤(セレスタミン)
→抗炎症作用が強く、他の薬では抑えられない重症の場合に使われます - 抗ロイコトリエン薬(オノン、キプレス)
- 化学伝達物質遊離抑制薬(アイピーディ)
- 漢方薬(小青竜湯など)
→抗ヒスタミン薬で起こりやすい眠気などの副作用がありません
外用薬(点鼻薬)
- 局所ステロイド点鼻薬(ナゾネックス点鼻薬、アラミスト点鼻薬)
→体の中に吸収されにくく、吸収されたとしてもすぐに分解されるため、ステロイドといっても全身的な副作用はほとんどありません - 抗ヒスタミン点鼻薬(ザジテン点鼻薬)
- 抗アレルギー点鼻薬(インタール点鼻薬)
- 血管収縮性点鼻薬(トラマゾリン点鼻薬)
→血管収縮薬は使いすぎると血管が薬剤に反応しなくなり逆に拡張し続けるため鼻閉がひどくなることがあり、注意が必要です。医師の指示通り使用して下さい。市販薬の点鼻薬にも含まれていますので注意して使用しましょう
外用薬(点眼薬)
- 抗ヒスタミン点眼薬(リボスチン点眼薬、パタノール点眼薬)
- 抗アレルギー点眼薬(インタール点眼薬)
- ステロイド点眼薬(フルメトロン点眼薬)
→眼圧の高い人は使用できません
治療を始める時期は?
毎年、花粉症でつらい思いをしている方は、症状が出る前や軽いうちから治療を開始する「初期療法」をおすすめします。「初期療法」とは、花粉が飛びはじめる2週間ぐらい前から抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬などの経口治療薬を投与する治療法です。
前もって薬を飲みはじめることで、症状が出る時期を遅らせ、花粉が飛ぶ最盛期の症状を軽くする効果が期待できます。
抗ヒスタミン薬は運転注意!!!!!
みなさんの中には、花粉症のお薬をのんで、眠気を感じたり、集中力の低下が起こったりしたことはありませんか?この眠気が起きる代表的なお薬に抗ヒスタミン薬があります。抗ヒスタミン薬が脳内で作用しているヒスタミンまでブロックしてしまうと、鎮静作用が働き、眠気が起こってしまいます。自分でも気づかないうちに集中力や判断力、作業効率が低下してしまうこともあります。
自動車運転に関しては、フェキソフェナジンやクラリチンには注意記載はありませんが、タリオン、エバステル、アレジオンには、「自動車の運転等危険を伴う機械の操作には注意させること」、ザイザル、アレロック、ザジテン、ニポラジン、セルテクト、エバステル、アゼプチンには「自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること」と記載があります。
「飲んだら乗るな! 乗るなら飲むな!」――この考えはお酒のみならず、脳に移行するタイプの抗ヒスタミン薬についても実行していく時代を迎えたようです。
花粉症は長く付き合う病気なので、自分に合う方法を見つけ、上手に付き合っていくようにしましょう。