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土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

新緑のきれいな季節になりました。

気温もぐんぐんあがって夏の気配が感じられる今日このごろです。

今回のテーマは 脱水対策 です。

2016年5月

いまから始める、夏の脱水対策!

蒸し暑い日本の夏は、過度の発汗による脱水の危険と隣り合わせです。なかでも体力の弱い高齢者や幼児を抱えるご家庭では、いっそうの注意が必要です。

今回は、脱水のリスクを回避するためのポイントをご紹介いたします。

脱水の症状とは?

身体の血圧低下・脳血流減少により、立ちくらみ・めまいがするといった症状が出ます。さらに脱水状態がすすんだ場合、筋肉痛、筋肉硬直(こむら返り)が起こることがあります。これらは血液の塩分濃度低下が原因となって起こります。

「かくれ脱水」の段階で気づきましょう

みなさんは「かくれ脱水」という言葉を聞いたことがありますか?

脱水症は進行するまで、これといった症状が出にくいのが特徴です。脱水症になりかけているのに、本人や周囲がそれに気がつかないため、有効な対策が取れていない状態を「かくれ脱水」と呼びます。

それでは、どんな時に「かくれ脱水」になりやすいか、見てみましょう。

脱水症は、炎天下の野外で激しい運動や労働をしたときだけに起こるものではありません。「かくれ脱水」はいつでもどこでも起こります。なかでも注意したいのは、"屋内" "運転中" "夜間" という3つのシチュエーションです。

1.屋内

脱水症の多くは実は屋内で起こります。マンションのように気密性の高い集合住宅では、風通しが悪くなり、かいた汗が蒸発しにくく、体温が下がりにくいため熱中症のリスクが上がるのです。

2.運転中

運転中に熱中症になることもあります。運転に限らず、熱中症には「物事に“熱中”しすぎるとリスクが上がる」という側面があります。物事に熱中しすぎると水分補給が疎かになりやすいからです。さらに運転中はトイレに行く回数を減らすために水分を制限しがち。窓を閉め切ると風通しが悪くなって汗が蒸発しにくいため、体温も上がりやすくなります。

3.夜間

夜間も熱中症の危険度が高まります。ことに暑い季節のコンクリート製の住宅では、昼間にコンクリートにこもった熱が夜間に放熱されるため、気温が上がりやすくなります。それなのに「夜トイレに起きたくないから」と水分摂取を控えると、発汗が増えて脱水症になりやすいのです。

気づきにくい高齢者の脱水

  • もともと、体の水分量が少なくなっている
  • のどの渇きを感じにくく、食欲が減退し水分摂取が減る
  • 腎臓の機能が低下し水分や塩分の調節機能が低下している
  • 持病によっては、脱水状態との区別がつきにくいため、水分補給を怠ってしまう
もともと水分の少ない高齢者

高齢者は、体内の水分量が少ないため、普段より多く汗をかくだけでも脱水症の原因となります。水分の摂取量が少ないと、食欲不振から食事量も減少してしまい、さらに脱水状態を進行させてしまいます。周囲の方は、常に高齢者のコンディションを気づかうことが大切です。

高齢者の脱水を見逃さないために

高齢者の脱水を見逃さないために下記をチェックしましょう。

生活環境(室内)

□設定温度が28度以上

□風通しが悪い

□直射日光があたる

生活態度

□1日中長袖・厚着が多い

□水分摂取量が少ない

□食欲低下が著しい

症状

□痰が絡んだ咳を繰り返す

□脇の下に汗をかかない

□ハンカチーフサインがみられる

※ハンカチーフサイン・・・手の甲の皮膚をつまみ上げて脱水状態をチェックする方法です。正常な状態ならすぐに戻りますが、脱水を起こしていると、ハンカチをつまみ上げて離したようにしばらく戻りません

脱水症の予防・治療

日常の予防的な水分補給では吸収が十分でないため、脱水症の治療には水分と塩分が速やかに補給できるよう設計された経口補水療法(Oral Rehydration Therapy:ORT)、あるいは点滴が用いられます。

経口補水療法では、ナトリウム(塩分)とブドウ糖(糖分)を含む経口補水液を摂取します。塩分は体内に水分を保持させ、糖分は小腸でのナトリウムと水分の吸収を促進させるため、経口補水療法で水分・塩分・糖分を同時に摂取することは、迅速な水分補給において大切です。

脱水症に対する水分補給は、その目的に応じて適切に選択することが大切です。脱水症の改善・治療目的には、水分吸収速度が非常に早い経口補水液が有効です。一方、脱水症になる前の予防目的であれば、経口補水液と同じく塩分や糖分を含むスポーツドリンクがよいでしょう。スポーツドリンクは経口補水に比べナトリウムが少なめでブドウ糖が多めなので、水分の吸収にやや時間を要しますが、最終的には十分量を吸収することができるため予防には有効です。

薬と脱水

薬でも脱水症の引き金となりうるものがあります。

脱水状態での薬の服用は血中濃度の急激な上昇など副作用の発現を誘発してしまい、危険を伴うことがありますので、ひどい場合は必ず医師の診断を受けることをお勧めします。

脱水症の引き金となりうる薬

災害時にも脱水に注意!!

災害時の避難場所でも脱水のリスクは高まります。その理由として、

  • 体育館など避難場所・仮設住宅では、室温管理が充分にできない
  • 断水などによる水分摂取不足。備蓄のミネラルウォーターだけでは電解質を補えない
  • 衛生環境が悪いため、感染症(インフルエンザ・ノロウイルスなど)にかかりやすい
  • 心理的ストレス・慣れない集団生活のため、食事や水分補給を控えがちになる

などがあげられます。

また、ボランティアとして被災地へ行かれる方も、簡素な食事や不充分な水分摂取の中で作業を行ない、大量の汗をかくと、自然とカラダは脱水状態になりやすくなります。十分に気をつけましょう。