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土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

蝉の鳴く季節がやってまいりました。

今回のテーマは 薬と食べ物の相互作用について です。

2016年7月

はじめに

「相互作用」という言葉は、誰しも耳にした事があると思います。その相互作用は薬同士だけではなく、薬と食べ物でも起こるという事はご存知でしょうか。今回は、薬と一緒に飲食すると薬の効果が強く出たり、弱く出たりする食べ物・飲み物をご紹介します。

抗生物質とミネラルを多く含むもの

牛乳やミネラルウォーターなどのミネラル(カルシウム、マグネシウムなど)を多く含むものと一部の抗生物質を一緒に服用すると、薬の成分がミネラルと結合してしまい、効果が弱まることがあります。最近では、ミネラルを補うサプリメントの市販も多くあり、飲み合わせには注意が必要です。

★牛乳など飲みたい場合は、基本的には薬を飲む時間と2時間以上時間を空ければ問題ありません。

当院にある薬のうちミネラルを含むものと飲み合わせの良くない抗生物質は以下の通りです。

ミネラルを含むものと飲み合わせの良くない抗生物質

ワーファリンとビタミンK

ワーファリンは血液を固まらせるビタミンKの働きを抑えて、血液を固まりにくくする薬です。よって、ワーファリン服用中にビタミンKを多く含む食品を摂取すると、ワーファリンの効果が弱められてしまいます。

当院にあるワーファリンは以下の通りです。

当院にあるワーファリン
ビタミンKが多く含まれる食品

納豆

納豆に含まれる納豆菌は少量でも腸の中で、ビタミンKを作り出しワーファリンの作用を妨げてしまいます。薬を飲んでいる間は納豆を食べないようにしましょう。

クロレラ

健康食品として市販されるクロレラにはビタミンKが多く含まれているので、薬を飲んでいる間は摂取しないようにしましょう。

青汁

緑黄色野菜が主原料となっている青汁は大量のビタミンKを含んでいるので飲まないようにしましょう。

緑黄色野菜

ビタミンKを多く含む野菜には、パセリ・しそ・明日葉・ほうれん草などがあります。通常の食生活で大量に摂取することはないので、これらについてはほとんど気にする必要はないと思われます。ただし、緑黄色野菜の一時的な大量摂取は避けるようにしましょう。

食品100g当たりのビタミンKの含有量の多いものを紹介します。

当院にあるワーファリン

★乾物でも、抹茶、わかめ、海苔、ひじきなどにもビタミンKが多く含まれているので注意しましょう。

★山芋、オクラなどは納豆と同様のネバネバ感がありますが、納豆菌は含まれておらず、ビタミンKの量も問題ありません。

★同じ大豆製品である豆腐、味噌はビタミンKの量も少なく問題ありません。

降圧薬とグレープフルーツ

降圧薬であるカルシウム拮抗薬と一緒にグレープフルーツを摂取すると、薬の作用が増強して血圧が下がりすぎ、心拍数が増える(ドキドキの回数が増える)ことがあります。また頭痛、ふらつき、顔がほてるなどの副作用が出やすくなることがあります。

カルシウム拮抗薬にもいろいろな種類があり、グレープフルーツの影響を受けやすい薬と、あまり神経質にならなくてもよい薬があります。

当院にあるカルシウム拮抗薬のうち、グレープフルーツとの飲み合わせがよくない薬の強弱は以下の通りです。

カルシウム拮抗薬のうち、グレープフルーツとの飲み合わせがよくない薬の強弱
よくある質問
  • どれくらい時間を空ければいいの?
  • グレープフルーツの影響は、一般的に摂取後24時間程度に及ぶといわれています。グレープフルーツと服用する薬が相互作用の影響を受ける時間はそれぞれの薬によって異なります。長いものでは2〜4日程度持続するものもあります。
    したがって、グレープフルーツと飲み合わせの悪い薬を服用している間はグレープフルーツの摂取は避けましょう。
  • グレープフルーツの果肉や果皮による影響は?
  • これまではグレープフルーツジュースに含まれる渋みの成分が酵素を弱くするといわれていましたが、最近ではグレープフルーツの果肉でも同じような作用が起こることがわかってきました。グレープフルーツジュースだけでなくグレープフルーツの果肉や果皮の摂取は避けましょう。
  • グレープフルーツと似た種類の食べ物でも相互作用は起こるの?
  • かんきつ類の果実も薬に影響を与えるものがあります。以下の表を参考にしてみてください。
    カルシウム拮抗薬のうち、グレープフルーツとの飲み合わせがよくない薬の強弱

降圧薬以外にもグレープフルーツと飲み合わせのよくない薬があるので以下の表を参考にしてみてください。

カルシウム拮抗薬のほか、グレープフルーツとの飲み合わせがよくない薬

薬とアルコール

アルコールは多くの薬剤と吸収・代謝などの段階で影響し、血中濃度を大きく変動させるため薬剤との併用は原則避けましょう。

中でも、特に注意が必要な薬剤を紹介します。

抗アレルギー薬

(ザイザル、セルテクトなど)

風邪薬、抗アレルギー薬に含まれるヒスタミン作用のある薬は、眠くなるものが多いです。そこにアルコールを摂取してしまうと、中性神経抑制作用が増強し、眠気・精神運動機能低下などの副作用が強く現れる可能性があります。アルコ−ルとの影響は、抗アレルギー薬の種類・系統によって異なり、新しいタイプの薬剤に対しては比較的影響が小さいとされていますが、自動車運転や機械作業などに従事することは危険です。抗アレルギー薬内服中はアルコール摂取を控えましょう。

睡眠薬

(ブロチゾラム、ゾルピデム、ハルシオン、リスミー、エバミール、ロヒプノール、ユーロジン、ルネスタ、ロゼレム、ベルソムラなど)

アルコールと同様に脳の神経の興奮を抑えるため、薬が効きすぎることがあります。アルコールとの同時服用はもちろん、体内にアルコールが残っている1〜2日間は睡眠薬の服用は止めましょう。

精神安定薬

(コンスタン、エチゾラム、リーゼ、アタラックス、セロクエル、パキシル、リスパダール、ルボックス、レクサプロ、レスリン、サインバルタなど)

アルコールと同様に脳の神経の興奮を抑えるため、効きすぎると昏睡、意識を失ってしまう危険があります。

その他、注意が必要な薬剤を紹介します。

降圧薬

アルコールには血管を拡張し、血圧を下げる働きがあります。血圧降下剤とあわせると血圧が下がりすぎ、脳貧血で立ちくらみなどを起こすことがあります。

糖尿病治療薬

糖の分解を促進して低血糖を起こすもの、分解されずに体に溜まってしまったアルコールのせいで「酔い」の症状が強く出るものなどがあります。

解熱鎮痛薬

アスピリンなどの解熱鎮痛剤は、一般的に胃への副作用が起こりやすい薬です。同様に胃のムカムカを引き起こすアルコールとの相性は良くありません。また、アセトアミノフェンという解熱鎮痛剤は、お酒と一緒に飲むと肝臓に負担をかけてしまうことがあります。

咳止め薬

咳の反射神経を抑制する薬は眠くなることがあるため、抗アレルギー薬同様に眠気が生じます。

まとめ

今回は、飲み合わせに注意する食べ物の代表的なものを紹介しました。他にも、細かい相互作用がありますので、未然に防ぐために一緒に飲んでいる薬やサプリメントや特に偏って摂っている食べ物などがあれば、医師や薬剤師に相談してください。

また、飲み合わせの影響は個人差が大きく、ご自身の体質や薬の種類によっても影響の度合いが変わってきますので、気になることがあれば相談してください。