いま求められている医療の最高レベルを目指すとともに、明日の医療のあり方 に機能しよう/医療法人あかね会

あかね会TOP > 土谷総合病院 > 薬剤部 > くすりの窓

土谷総合病院

土谷総合病院 薬剤部 くすりの窓

朝夕日毎に涼しくなり、秋の気配が色濃くなって参りました。

今回のテーマは 痛風・高尿酸血症 です。

2016年7月

痛風とは

痛風は「風が吹いただけでも痛い」と言われるように、耐え難いほどの激痛を伴う発作が起きる病気です。

痛風が痛い男性

この痛風発作の痛みには、尿酸と白血球が関係しています。尿酸は、細胞の核を構成するプリン体という物質が、人の体内で代謝される事によって作り出されます。通常、一定量以上の尿酸は尿や便と一緒に排泄されますが、尿酸が増えすぎると、余った尿酸は徐々に結晶化し、関節の膜部分に沈着していきますが、突然はがれ落ちてしまう事があります。そこに免疫機能の一つである白血球がこの尿酸結晶を異物とみなし、排除するために攻撃しに来るのです。その結果、関節に炎症が起き、激しい痛みが発生し、痛風発作になります。

痛風と季節

痛風発作は、季節によって発作が起きやすい原因が異なります。


  • 異動等の新しい環境によるストレス、歓迎会・お花見などのお酒の席などが原因になる事がありますが、春は比較的に痛風発作が起きにくい時期と言えます

  • 特に7月頃から痛風発作が起きやすくなってきます。この原因は、暑さのために沢山汗をかくので、体内の水分が汗と共に失われ、尿量が減少してしまう事で、体外に出る尿酸の量が減ってしまいます。その結果、血中の尿酸の濃度が高くなってしまい、尿酸による結晶が出来やすくなるため、痛風発作が起こりやすくなってしまいます

  • 初秋は、夏場に劣らないくらい暑いため、夏と同じ理由で痛風発作が起こりやすいです。また食欲の秋のため、尿酸値を上げてしまう食べ物を多く摂取してしまう事も原因の一つです

  • 寒さによる血行不良が一番の原因ですが、さらに、尿酸は気温が低くなると結晶化しやすいため、痛風発作が起こりやすくなります。また、年末年始の暴飲暴食は痛風の大敵です

合併症

血中の尿酸値が7.0mg/dL以上の状態を高尿酸血症と言います。高尿酸血症を治療しないで放っておくと、痛風だけではなく他の病気も発症してしまいます。それは、尿路結石や腎障害です。尿酸の結晶は、関節だけではなく腎臓にも沈着しやすいため、尿酸の結晶の沈着によって腎臓の機能を低下させる腎障害になる可能性があるのです。また、膀胱や尿道に尿酸の結晶が出来ると尿路結石になります。

さらに怖いことに、糖尿病や高血圧症、脂質異常症などを合併すると動脈硬化が起こりやすくなり、心筋梗塞や狭心症を招くことさえあるのです。

ちなみに、関節以外の関節の周囲や軟骨、皮下組織などに出来た尿酸結晶のコブを、痛風結節といいます。触っても痛みはないため、気がつかないうちに大きくなってしまうこともあります。

プリン体を多く含む食べ物(100g中に含有される量)

また、調理方法を工夫するだけでも痛風対策に有効です。生活習慣病や糖尿病にも有効ですので、出来るものから取り入れてみてください。

  • 揚げ物の衣を薄くする
  • 葉物のビタミンCは熱に弱いので、火を通す時は素早く
  • プリン体の多い食材を扱うときは、下処理で茹でる
  • 焼肉よりもしゃぶしゃぶにする
  • 鍋料理や煮物の煮汁にはプリン体が染み出ているので使わない

アルコールは痛風発作の引き金

アルコールは肝臓に働きかけ、尿酸の生成を促します。またアルコールを代謝する過程で、腎臓が尿酸を排泄しようとする働きを弱めてしまいます。そのため飲酒は体内の尿酸値を一気に上げます。飲み過ぎた翌日に痛風発作が起こりやすいのには、こうした理由があるのです。

ビール

プリン体が多いのは、ビール!と認識されている人も多いと思います。確かにビールには日本酒の約5倍、ワインの約15倍のプリン体が含まれており、痛風発作のリスクが断トツ高いのは言うまでもありません。

しかし、どんなにプリン体が少ないアルコールであっても、体内に入ると代謝過程によって尿酸値を高めてしまいます。痛風対策にはもちろん禁酒が理想的ですが、禁酒によってストレスが溜まるのも避けたいところです。どうしても飲むという場合は適量を心がけましょう。

痛風・高尿酸血症治療薬

痛風・高尿酸血症の原因である尿酸を体内から減らすお薬や、痛風発作の緩解や予防するためのお薬があります。以下には当院で採用しているお薬を紹介します。

尿酸値を下げる薬

尿酸値を下げる薬

体内で作られる尿酸の量を減らす働きがあります。体内の尿酸値が急に下がる事により、内服初期に痛風発作の一時的な増強がみられる事がありますが、鎮痛薬や痛風発作予防薬で対応することも出来ますので、自己判断で中止せずに主治医に相談してください。

尿をアルカリ性にする薬

尿をアルカリ性にする薬

尿をアルカリ性にして腎臓、尿管、膀胱、尿道などに尿酸結石が出来るのを防ぐ作用があります。

痛風発作の前兆期に飲む薬

痛風発作の前兆期に飲む薬

痛風の発作を和らげたり、予防したりする作用があります。痛風発作の予感があった時に服用すると効果的です。

その他にも、症状に応じて鎮痛薬が処方されることがあります。

生活を見直しましょう

痛風患者の多くが肥満だと言われています。つまり、肥満を防止する事は痛風防止にもつながりやすいと言えます。食生活の乱れから肥満傾向になっていたり、お酒を飲みすぎたりして、尿酸値の急な上昇を招くような生活を送っていると、いつ痛風を発症しても不思議ではありません。

ジョギングをする人たち

痛風防止には、呼吸をゆっくりしながら長く続けられる有酸素運動がおすすめです。息を切らさずに長く続けられるウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、ゆっくりしたスピードの水泳などです。

息が切れるような激しい運動やウェイトトレーニングのような無酸素運動は、急激に尿酸値を上昇させてしまうため注意しましょう。

毎年健康診断を受けましょう

皆さんは健康診断を毎年受けていらっしゃいますか。

血清尿酸値は、健康診断や人間ドックなどで測定することが出来ます。尿酸値が7.0mg/dLを超えている方は、放っておくと大変なことになるかもしれません。

尿酸値が7.0mg/dLというのは、これより濃くなると尿酸が溶けきれなくなるという限界の値なのです。実際には、血液中の尿酸の溶解には体内の様々な物質がかかわっているので、7.0mg/dLを超えたらすぐに結晶として体内に沈着するわけではありませんが、いつ結晶が出来てもおかしくない状況ですので、早めに医師に相談しましょう。