(2019年5月2日 一部改訂)
診察担当表
当クリニックは再診のみです。初診の患者様は土谷総合病院外科を受診下さい
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
午 前 | 川ア 9:30〜 11:00 |
三隅 9:30〜 11:00 |
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受付時間 | 8:00〜10:30 | 8:00〜10:30 | |||
午 後 | 岡本 13:00〜 14:00 |
杉野・三隅 14:00〜 16:30 |
岡本 13:00〜 16:30 |
杉野・川ア 14:00〜 16:30 |
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受付時間 | 8:00〜13:45 | 8:00〜15:45 | 8:00〜16:00 | 8:00〜15:45 |
スタッフ
杉野圭三 : 土谷総合病院副院長兼任
内分泌外科、消化器外科 / 広島大学医学部医学科 臨床教授 / 日本外科学会 指導医、専門医、認定医 / 日本消化器外科学会 指導医、専門医、認定医 / 日本がん治療認定医機構 暫定教育医 / 消化器がん外科治療認定医 / 内分泌・甲状腺外科専門医 / 日本内分泌外科学会 評議員 / 日本臨床外科学会 評議員 / 日本甲状腺外科学会評議員 / 中国四国外科学会 評議員
岡本英樹 : 広島大学附属病院第二外科非常勤医員兼任
内分泌外科、一般外科 / 日本外科学会 認定医 / 日本消化器外科学会 認定医 / 日本内分泌外科学会 評議員 / 日本甲状腺外科学会 評議員
川ア 由香里 : 外科医長
日本外科学会 専門医 / 日本甲状腺外科学会 内分泌外科専門医 / 日本旅行医学会 認定医 / 日本がん治療認定医機構 認定医 / 中国四国甲状腺外科研究会 世話人
三隅 俊博 : 外科医長
日本外科学会 専門医
特色
広島大学第二外科において故河石名誉教授、故江崎名誉教授時代から60年以上の伝統を誇る甲状腺・副甲状腺外科は、土谷総合病院をセンターとして活動することになりました。それに伴い、関連施設である中島土谷クリニックに甲状腺専門外来を設立することとなり、2002年度開設されました。広島大学及び関連病院で手術を行った2000人以上の術後フォローアップならびに経過観察中である多数の甲状腺疾患症例の精密検査を行なっています。甲状腺癌を中心とし、特に難治性進行甲状腺癌に対してQOLを損なうことなく如何に根治性を高めるかという点に重点をおいて治療しています。また副甲状腺疾患では小切開手術に取り組み短時間でQOLの高い手術を心がけています。
対象とする領域
内分泌外科(甲状腺、副甲状腺)
取り扱う病気
甲状腺癌、良性甲状腺腫瘍、甲状腺機能亢進症、副甲状腺腫瘍
診断治療方法およびその実績
内分泌外科(甲状腺外科)
1.甲状腺癌治療
1)歴史と実績
当クリニックは土谷総合病院および広島大学医学部第二外科関連施設です。土谷総合病院では甲状腺・副甲状腺疾患の手術を行っていますが、当クリニックは外来センターとして位置づけられ甲状腺疾患、副甲状腺疾患の診断と外来フォローアップを中心に最先端の診断技術で診療を行っています。甲状腺治療において 50年以上の継続した治療実績と手術手技は当クリニックおよび土谷総合病院で継承され、最適の治療法を提案することができます。土谷総合病院では平成元年から約3535例の手術を経験し、その中では悪性腫瘍が2462例を占めています。 2018年度の甲状腺・副甲状腺手術は237例でした。
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2)QOL(クオリティー オブ ライフ)の重視:
甲状腺癌の手術は早期がんで容易なものから、進行癌で難しいものまで千差万別です。甲状腺癌は自覚症状が殆どないため、進行癌の状態で発見されることも多く、食道・気管・喉頭・神経・頸動静脈など生命・生活に必要な重要臓器に浸潤した場合、これらの合併切除が患者さんの生活に与える苦痛、障害は極めて大きくなります。当科では手術の根治性を追及すると同時にこれらの重要臓器の温存・再建術に心がけています。
3)反回神経温存・反回神経再建の重要性
土谷総合病院では甲状腺癌が重要な臓器に浸潤した場合、マイクロサージェリー技術を応用し、これらの重要臓器を腫瘍から剥離し温存することを第一選択とし、良好な成績をあげています。特に発声運動を支配する反回神経への浸潤は極めて大きな問題です。反回神経麻痺が起こると声帯運動は障害され、嗄声(声のしわがれ)や誤嚥が起こり、日常生活への支障が起こります。このような場合、以前では反回神経切断を余儀なくされていましたが、ルーペ下に神経を剥離し温存することが可能となりました。
反回神経温存が不可能な場合は、切除せざるをえなくなりますが、そのような場合は可能な限り反回神経再建術を行っています。反回神経は声帯内部の発声に関与するいろいろな筋肉を支配しています。反回神経再建を行っても、これらの複雑な筋肉の協調運動を元に回復することは不可能に近いことですが、声帯の筋肉の萎縮を改善することができ、その結果、全例ではありませんが多くの場合、6ヶ月から1年前後で手術前に近いまでの音声に回復します。
これまでに反回神経に浸潤した進行甲状腺癌症例を297例経験しています。この中で、神経剥離温存術を129例(43.4%)、反回神経再建術を142例(47.8%)に行うことができ、合計で90%の症例で反回神経機能を温存することが可能でした。術後評価可能であった一期的反回神経再建術では91%に音声の回復が認められています。
4)気管、喉頭、食道、動静脈の温存
神経への配慮と同様に気管、喉頭、食道、血管を温存することも重要です。進行癌の中には温存不可能な場合もありますが、甲状腺癌の多くの場合は温存可能です。手術で可能な限り腫瘍を切除し、再発が予測される部位を焼灼するなどの処置で再発を予防または遅らせることも可能です。音声を失う喉頭全摘は可能な限り避ける方針です。
5)集学的治療と術後フォローアップの大切さ:
甲状腺癌は生物学的に悪性度の低い癌ですが、再発・転移が起こることも稀ではないため、術後は各種画像診断や超音波ガイド下穿刺吸引細胞診などの最新診断プログラムで対応し、早期発見・早期切除で甲状腺癌の芽をつぶし、好成績をあげています。また、悪性度の高い未分化癌や低分化癌、難治性再発癌の治療にも積極的に取り組み、大学病院や他の診療科の協力も得て放射線内照射・外照射や分子標的薬を中心とした化学療法などの集学的治療を行っています。
2.甲状腺良性疾患
1)良性腫瘍
甲状腺に腫瘍性病変が見つかっても、多くの場合は良性の腺腫様甲状腺腫や濾胞状腺腫です。以前は、甲状腺に「しこり」が見つかるとすぐに手術を勧められる時期もありましたが、現在では超音波検査や穿刺吸引細胞診で腫瘍の診断を行い、経過観察可能な腫瘍かどうかの鑑別を行い、不要な手術を避けるように配慮しています。 しかし、中には手術を考えなければいけない腫瘍もあります。それは以下のようなものです。
- 濾胞状腫瘍は癌の鑑別が極めて困難です。画像診断や諸検査で悪性の可能性がある場合や腫瘍が大きい場合は手術を考慮する必要があります
- 腺腫様甲状腺腫は原則として経過観察または甲状腺刺激ホルモン抑制療法を行うことにしていますが、腫瘍が大きくなる場合は手術も考慮する必要があります。
- 縦隔内へ発育・進展する腫瘍は良性と考えられても手術を考慮する必要があります。
2)甲状腺機能亢進症(バセドー病)
甲状腺機能亢進症の中でもバセドー病に対する治療は現在大きく変遷しつつあります。バセドー病治療の原則は薬物治療です。発症から1−2年は自然寛解する可能性もあり、できる限り薬物治療で経過をみることにしています。 薬物治療でコントロール困難な場合などは放射性同位元素(アイソトープ)による治療が欧米では第一原則です。日本では従来、若年女性には行われていませんでしたが、最近では適応と考えられ徐々に増加してきました。 手術治療を選択される場合は、外来で手術方法、合併症・問題点などについて説明を行った上で手術を行っています。
副甲状腺疾患
1.副甲状腺腫瘍
ここの病気は稀な疾患で腎不全に伴う二次性副甲状腺機能亢進症と腫瘍による原発性副甲状腺機能亢進症があります。当科では原発性副甲状腺機能亢進症に対する手術を取り扱っています。治療を行わず放置すると高カルシウム血症による腎・尿路系結石、骨粗鬆症、循環器合併症、消化性潰瘍、膵炎など全身の重篤な合併症を引き起こす危険があります。手術により切除するのが最も良い治療法で、これまでに198例の手術を経験しています。当科では最新の画像診断技術を取り入れ、総合的に腫瘍の局在を診断し、小切開による摘出手術を行っています。
小切開法による副甲状腺手術のメリット
従来の副甲状腺手術は甲状腺両葉の上下に存在する4腺を確認する拡大手術でしたが、近年では病的に腫大した1腺のみを摘出する低侵襲手術に変わりつつあります。経験がないと反回神経損傷の危険性があり病巣を見つけるのが難しい手術です。これまで121例の経験があり、切開創も平均2.7cmと小さく患者さんに対する手術侵襲は極めて小さく、美容上の利点もある優れた方法と考えています。局所麻酔を選択されれば、1泊入院で翌日退院可能です。
トピックス
1.昔切れた反回神経は再建できるのか?
従来、昔に切断された反回神経を再建することは不可能と考えられていました。しかし、土谷総合病院では以前の手術で反回神経を切断された症例に神経再建術を行うことに成功しました。一期的反回神経再建術に比較すると極めて困難な術式ですが、これまで27例に異時性神経再建術を行いました。この中で評価可能な症例での発声改善は57%に認められています。
2.甲状腺・副甲状腺手術への美容上の配慮
頸部手術の場合、手術創が気になるのは老若男女を問わず当然のことであり、少しでも創部が目立たなくなるよう配慮しています。具体的には、皮膚の皺に沿った皮膚切開、最小限度の大きさで行う、形成外科の手技の応用を心がけています。特に、形成外科の手技を応用し真皮縫合を吸収性縫合糸で2重に行っています。若年者やケロイド体質の方は、瘢痕が成長しやすいものですが、それを極力防止するように努めています。
以上、熟練専門スタッフが、最新の診療技術を提供できる外来クリニックであると自負しています