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土谷総合病院

脂肪肝は放っておいていいの?

■ある日、人間ドックを受診したBさん(40歳代働き盛りの男性)とA先生の会話

A先生 「前回の腹部超音波検査では何か異常がありましたか?」

Bさん 「ありませんでした。」

A先生 「うん?でも今日は脂肪肝がありますね。」

Bさん 「ああ、それは前も言われました。でも脂肪肝は病気じゃないでしょ?」

・・・このような会話をした経験はありませんか?

脂肪肝ってなあに?

肝臓の細胞の中に脂肪が溜まっている状態で、超音波検査で診断できます。

どうして脂肪肝になるの?

主要な原因は、@肥満、A糖尿病、Bアルコ−ルです。

また、その一方で、以外な原因として急激なダイエットによる栄養障害で脂肪肝を引き起こすこともあります。

脂肪肝と非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)はどう違うの?

以前はアルコールによる脂肪性肝疾患が多かったのですが、現在ではアルコールを摂取しないのにアルコール性肝障害に似た肝障害が起こることがわかり、これを非アルコール性脂肪性肝疾患 nonalcoholic fatty liver disease(NAFLD:ナッフルド)と呼んでいます。

NAFLDの原因としては、今や誰でもご存知のメタボリックシンドロームのリスクファクターである肥満、糖尿病、高脂血症が指摘されています。

このNAFLDの中で、進行しないのが単純性脂肪肝で、肝硬変や肝細胞癌に進行するのがNASH(ナッシュ:nonalcoholic steatohepatitis)です。

非アルコール性脂肪肝炎:NASH(ナッシュ:nonalcoholic steatohepatitis)

NASHの予後はまだ不明な点が多いですが、これまでの報告をまとめると肝硬変への進行は、5〜10年で5〜20%と考えられています。さらにNASHからの発癌の報告もあります。

発症機序:

脂肪肝がまず起きて、肝臓に何らかのストレスが加わって脂肪性肝炎、さらに進んだ肝障害へと進んでいくという2段階説が支持されています。

治療:

減量が有効ですが、急激な減量はかえってNASHを悪化させる可能性があり、月に2kgを越えない程度の減量が適切。ウルソデオキシコール酸、ビタミンE、糖尿病合併例では糖尿病薬、高脂血症合併例では高脂血症治療薬が有用であると報告されていますが、確立した治療法はまだ見つかっていません。発症機序からは、脂肪肝の段階で食事や運動で生活習慣を改善し、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧を是正することが重要です。

■CさんとA先生の会話(診察室にて)

Cさんは70歳代の女性。9年前に肝機能障害を認めるため、血液検査、腹部超音波検査を受けました。「脂肪肝」と診断され食生活の改善をするよう指導されましたが、悪い病気はなかったと安心、脂肪肝といわれたことも忘れていました。ところが最近胃の調子が悪く久しぶりに受診。胃カメラをのんだら食道静脈瘤を指摘され、血液検査と腹部エコー、CT検査を受けました。

A先生 「肝臓の数値は正常ですが、肝硬変になっていますね。肝炎ウイルスには感染していないし、9年前にあった脂肪肝が進行して肝硬変になった可能性が高いですね。」

Cさん 「えー? 私肝臓が悪いって言われたことないですよ。お酒も全然飲まないし、何で・・・」

A先生 「うん?でも今日は脂肪肝がありますね。」

・・・Cさんは単純性脂肪肝ではなく、NASHであったと考えられます。

■Dさんの場合

Dさんは、60歳代の男性。長年糖尿病、高血圧症、高脂血症でかかりつけ医に通院していました。身長160cm、体重67kg、BMI26.2(BMI25以上が肥満)。飲酒はビールを350ml程度で大酒家ではありませんでした。軽度の肝機能障害があり、腹部超音波検査をしたところ、肝臓に10cmの腫瘍が見つかりました。Dさんにとっては青天の霹靂!早速手術をし、NASHに発生した肝癌と診断されました。Dさんはこれまで減量に全く無関心でしたが、手術後は生活習慣を見直し減量に成功(BMI 24.2)、糖尿病、高脂血症も改善し、元気に過ごされています。

矢印

「脂肪肝」は今まで良性疾患として無視されることも多かったのですが、CさんやDさんのように進行性の場合もあります。「脂肪肝」といわれたら、食事や運動療法の指導と定期的検査を受けられることをお勧めします。