毎日、暑い日が続きますね。だからといって、クーラーの入った部屋でゴロゴロして、冷たいものばかり食べていたら、ベルトの穴がひとつ増えてしまうかもしれませんよ。
今回のテーマは、メタボリックシンドロームです。
2006年7月
メタボリックシンドロームとは
「メタボリックシンドローム」という言葉を聞いたことがありますか?時々ニュースなどで耳にすることはありますが、あまり聞きなれない言葉ですね。
比較的新しい概念ですが、最近、生活習慣病、とくに動脈硬化との関連で注目されています。
動脈硬化の危険因子といえばコレステロールが有名ですが、最近の研究では、肥満(特に内臓のまわりに付着した脂肪)がさまざまな生活習慣病を引き起こし、より動脈硬化になりやすいことがわかってきました。そのキーワードとなるのがメタボリックシンドロームです。
内臓脂肪蓄積により、さまざまな病気が引き起こされた状態をメタボリックシンドロームとよび、注目されています。具体的には、腹部肥満(内臓脂肪の蓄積)に加えて、高血圧・高脂血症・高血糖のうち2つ以上が重なった状態を指します。
これらの4つの危険因子は、いずれも同じような生活習慣がもとになって起こりやすいため、1人の人が複数持っていることが多いのです。
実際に、動脈硬化が進行して心臓病を起こした人では、これら4つの危険因子を併せ持っているケースが圧倒的に多くなっています。
あなたもメタボリックシンドロームではありませんか?
肥満のタイプ
体のどの部分に脂肪がつくかによって、肥満は2つのタイプに分かれます。 下腹部、腰のまわり、太もも、おしりのまわりの皮下に脂肪が蓄積するタイプを「皮下脂肪型肥満」、内臓のまわりに脂肪が蓄積するタイプを「内臓脂肪型肥満」とよびます。体形からそれぞれ「洋ナシ型肥満」「リンゴ型肥満」ともよばれています。
どちらかというと「洋ナシ型」は女性に多く、「リンゴ型」は男性に多い肥満と言われています。内臓周りに脂肪が蓄積される「リンゴ型肥満」の方は、メタボリックシンドロームになりやすいので注意が必要です。 また、おなかの脂肪をつまんでみてしっかりとつまめる場合は皮下脂肪で、つまみにくい場合は内臓脂肪の可能性大です。
内臓脂肪と皮下脂肪では、エネルギーの使われ方も違います。
エネルギーの備蓄を預金に例えると、内臓脂肪は日々の生活のための普通預金、皮下脂肪はいざというときに備える定期預金や積立預金といえます。つまり、内臓脂肪は比較的容易にたまるものの、容易に燃焼することができるので、日々の食事や運動を心がければ減らすことは十分に可能です。
メタボリックシンドロームの診断基準
メタボリックシンドロームの診断基準では、内臓脂肪の蓄積が必須条件と位置づけられ、他の高血圧・高脂血症・高血糖の3つの項目のうち2つ以上を満たしている場合に「メタボリックシンドローム」と診断します。
具体的には、内臓脂肪の蓄積はウエスト径で判定し、男性85cm以上、女性90cm以上を基準値としています。女性のほうがウエストの基準値が大きいのは、皮下脂肪が多いからです。
ウエスト径の正しい測り方はへそまわりを測ることです。腰の一番細いところやベルトの位置ではないので、気をつけて下さい。
どうしてこのような基準が必要なのか?
高血圧、高脂血症、糖尿病が、動脈硬化の原因として重要なことは明らかとされていますが、実は、病気とまではいかない程度、「ちょっと血圧が高い」とか、「コレステロールは正常だけどHDLコレステロールが低め」とか、「糖尿病の気がある」というような人たちも、動脈硬化を起こしやすいことがわかってきたのです。そのような人たちの場合、病気として重大に考えていないことが多く、知らず知らずのうちに動脈硬化を進めてしまっている場合があります。そのようなことを予防するため、注意を喚起する目的でメタボリックシンドロームが提唱されたものです。高血圧、高脂血症、糖尿病にはあてはまらなくても、メタボリックシンドロームと診断されたら、動脈硬化が進みやすいですよという注意信号だと思ってください。海外ではすでにいくつかの診断基準があったのですが、内蔵脂肪を測定する必要があるなど簡便なものではなく、その点、今回の日本の基準は、大変簡便で、分かりやすい基準になっています。
原因
メタボリックシンドロームを引き起こす最大の要因は、「インスリン抵抗性」という状態が私たちの体の中で、起こることだといわれています。インスリン抵抗性とは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが、うまく働かなくなってしまう状態のことをいいます。
まず、肥満になると、脂肪組織や筋組織における糖の取り込み能力が低下してしまいます。このため、糖を代謝するときに必要なインスリンがうまく働かなくなってしまうのです。
さらに、肥満は筋肉や肝臓でのグリコーゲン合成酵素の活性も低下させます。結果的に、血糖値が高くなり、ますますインスリンの働きが阻害されてしまいます。インスリンがうまく機能しないと、糖尿病や高血圧、高脂血症の危険が高まります。
つまりメタボリックシンドロームの可能性が高まるというわけです。
メタボリックシンドロームの危険性
日本の企業労働者12万人を対象とした調査では、軽症であっても「肥満」、「高血圧」、「高脂血症」、「高血糖」の危険因子を2つ持つ人はまったく持たない人に比べ、心臓病の発症リスクが10倍近くに、3〜4つ併せ持つ人ではなんと31倍にもなることがわかりました。
また、メタボリックシンドロームの人は糖尿病を発症するリスクは通常の7〜9倍。心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクは約3倍と言われています。
40〜74歳の男性では2人に1人、女性で5人に1人が該当者と予備軍だったとの報告があります。またこの年代でメタボリックシンドロームを強く疑われる人は全国に940万人、予備軍は1,020万人で合わせて1,960万人にもなると言われています。かなりの人数であることがわかりますね。
健康診断で腹囲測定が必須に!
厚生労働省が2008年度から40歳以上の人の健康診断に腹囲(へそ回り)の測定を義務づけることを決めたことはご存知でしょうか?
これは「メタボリックシンドローム」の考え方を導入したのが特徴で、これまで実施していなかった腹囲(へそ回り)の測定が必須となっています。
健診で治療が必要と判定されなくても、生活習慣病の発症「危険度」を3つのレベルに分類し、受診者のレベルに応じて生活習慣指導などきめ細かく対応する仕組みを取り入れるというものです。
これまでは身長と体重の関係で計算するBMIなどの指標が参考に使われてきたため、身長が高ければ体重が重くても問題視されなかった人もいます。しかし、腹囲測定が導入されると、身長に拘わらず腹囲が基準以上に大きい場合、指導の対象となる可能性があるわけです。
あなたは大丈夫ですか?
メタボリックシンドロームになってしまったら?
では、メタボリックシンドロームと診断されたら、どうしたらいいのでしょうか?
まず、病態の中心はインスリン抵抗性ですから、それを改善するため、食事療法、運動療法が必要です。
食事では栄養バランスのとれた食事をきちんととることが大切です。総カロリーを減らし、脂肪、特に動物性脂肪を減らし、塩分を減らしましょう。そして、緑黄色野菜を多くとり、食物繊維、カルシウムを多くとるようにしましょう。
運動は一日20〜30分のウォーキングなどの有酸素運動を行いましょう。それらは、インスリン抵抗性を改善し、高血圧や糖尿病の発症を予防する効果があります。
体重と一緒に腹囲も時々測って、効果を確認しましょう。体重より早く効果を実感できると思います。